【韓国ドラマ】Netflix『マスクガール』リアルな母親役で百想芸術大賞助演賞、ヨム・ヘランはどんな女優?まだ40代後半の演技派バイプレイヤー

女優ヨム・ヘランの出身地、麗水(全羅南道)

5月7日に授賞式が開催された韓国エンターテイメント界の最大アワード、第60回「百想芸術大賞」。

TV部門で助演男優賞を獲ったのは、Netflix『マスクガール』でオタク青年を演じたアン・ジェホンだったが、助演女優賞に輝いたのは、なんと同作で彼の母親キョンジャを演じたヨム・ヘランだった。

■Netflix『マスクガール』の母親役、ヨム・ヘランはどんな女優?

母親キョンジャのキャラクターは、『マスクガール』3話冒頭の独白ナレーションで明らかになる。

全羅道の貧しい家庭に生まれ育ったため、国家資格を持っている食いっぱぐれのなさそうな男と結婚したが、夫の浮気で3年後に離婚。家政婦や食堂の下働き、ビルの清掃、タクシー運転手などを経て市場に食堂を開業して稼ぎ、息子(アン・ジェホン)をソウルの4年制大学に入れた。

しかし、夫に裏切られたことがトラウマになっていたことを背景とする息子に対する強い執着心が、この物語の核になる大事件を生んでしまう。

キョンジャを見て身につまされた韓国の母親は少なくなかったはずだ。ヨム・ヘランは、”国民オンマ(母)" と称されるキム・ヘジャやナ・ムニ、コ・ドゥシムやユン・ヨジョンが演じるやや美化された母親像とは違う、韓国のリアルなオンマを生々しく演じていた。

『マスクガール』3話でヨム・ヘラン扮するキョンジャがお見合いした喫茶店は、ソウルの乙支路3街駅5番出入口前に実在した「乙支茶房」(1985年創業)がモデル

■『マスクガール』息子役のアンジェホンとは年の差10歳!

『マスクガール』のキョンジャというキャラクターを光らせたヨム・へランとはどんな女優なのだろう。

まず驚くのは彼女の年齢だ。1976年生まれだから、まだ48歳。『マスクガール』では10歳しか違わないアン・ジェホンの母を演じたのだから老け役も堂に入っている。生まれ故郷は全羅南道の麗水で、『マスクガール』の全羅道訛りは本物だ。

舞台演劇出身で、ドラマ『椿の花咲く頃』ではオ・ジョンセと夫婦役で恐妻の弁護士、『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』ではソン・ヘギョ扮するヒロインの復讐に協力する重要なキャラクター、『悪霊狩猟団:カウンターズ』では悪霊バスターズの1人を演じるなど、名バイプレイヤーとして存在感を放っている。

ドラマよりさかのぼって、映画デビュー作は、初の連続ドラマ『サムシクおじさん』出演で話題のソン・ガンホ主演作『殺人の追憶』(2003年)なのだが、彼女は当時20代後半なのに中学生の母親を演じていた。筋金入りの老け役である。

以降、彼女は30作以上の映画に出演しているが、下記2作は特におすすめだ。動画配信サービスなどで視聴できる。

●『ガール・コップス』(2019年)

警官役のラ・ミランとイ・ソンギョンを監督する、厳しいが人情味のある上長に扮した。二人の勤務態度に目を光らせるコミカルな表情の演技には笑ってしまった。ひっつめ髪と警官の制服も大変よく似合っていた。

●『アイ・キャン・スピーク』(2017年)

暗い過去をもつ主人公(ナ・ムニ)の心の支えとなる食料雑貨店(シュポ)の女将役。夜、シュポの縁台でナ・ムニとイ・ジェフンと三人並んでマッコリを飲みながら話すシーンは、韓国庶民の生活感を伝える名場面であり、映画『ワンドゥギ』でキム・ユンソクとパク・ヒョジュがマッコリを飲むシーンと並ぶ、シュポの名場面だ。

シュポは韓国庶民の生活感を伝える場所として映画やドラマによく登場する

『ソウルの春』のファン・ジョンミン。『ムービング』のリュ・スンリョン。『私たちのブルース』のイ・ビョンホン、チャ・スンウォン、イ・ジョンウン。『シュルプ』のキム・ヘス。『マイ・スイート・ハニー』のユ・ヘジン。『ジャスティス』のチョン・ジェヨン……当たり年と言われる1970年生まれの名俳優たち。

ヨム・ヘランはそんな彼らより6歳も若い上に、生活感のある母親役は我が国では需要があるだけに、今後の活躍が楽しみだ。

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