タイトル奪還に手応えを感じるザック・バランスキー…「アルバルカーズが作り出す雰囲気は居心地がいいんです」

「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023-24」(以下CS)が5月10日からスタートする。組み合わせの妙と言えるだろうか。CSのトーナメントの左側のブロックにはB1を制したことがある4チームが居並んだ。ちなみに反対の右側には優勝経験がないだけでなく、ファイナルに出場したことがない4チームが顔をそろえたのことで、新たなチャンピオンチームが誕生する可能性を秘めていると言える。

CSの初戦、クォーターファイナルで東地区2位で三地区間1位のアルバルク東京は西地区2位三地区間2位の琉球ゴールデンキングスと対戦することになった。2018年、19年のファイナルを制し、唯一連覇を達成しているA東京だが、昨年優勝の琉球とは対象的に最後の優勝から一番時間が経っているチームでもある。

事実、現在所属する選手の中で2度の優勝を経験しているのはザック・バランスキーのみ。それだけに時間の経過を感じざるを得ないが、今シーズン、キャプテンを務めるザックに現在のチーム状況、さらにCSへの意気込みを聞いた。

シーズンの終盤、セバスチャン・サイズがベンチから外れ、ライアン・ロシターもコートに立たない試合があるなど、宇都宮ブレックスとの優勝争いの負けられない状況の中、厳しいチーム状況を突きつけられた。しかし、それをカバーしたのが平岩玄。平岩はリバウンドやブロックショットで存在をアピールし、チームに勢いをもたらした。

それについてザックは、「僕的には何も驚きはありませんでした」と即答。続いて「普段から練習でやれるというのはわかっていましたし、巡ってきたチャンスで結果をしっかり残すのは、これまで彼がしてきたことが間違いではなかったことを証明していますよね」と笑顔で答えてくれた。

「これから何をしなければいけないのか、みんなわかっていると思います。群馬さんとの第1戦に敗れてしまいましたが、『これではCSに勝てないよね』と誰というわけでもなく口にしました。あの負けで地区優勝の可能性はほぼなくなりましたが、逆に気が引き締まるというか。いいチームの雰囲気でCSに臨めると思っています」

そんなザックが悔やんだのが、地区優勝を果たせなかったこと。優勝していればクォーターファイナルだけでなく、セミファイナルも勝ち上がれば自動的にホームで試合ができたからだ。仮に宇都宮ブレックスが勝ち上がると、セミファイナルはアウェーでの試合となる。

4月28日のホーム最終戦は、クラブ主観試合最多入場数記録を更新する10513名が国立代々木競技場第一体育館に詰めかけた。アルバルカーズが作り出すアリーナの雰囲気について、「皆さんのエナジーや盛り上がりが素直にうれしいんです」と語り、続けて感謝の言葉を続けた。

「いいシュートが決まったり、いいプレーがでたときに“わあっ”て盛り上がる瞬間、もちろん静かではないのですが、皆さんの声が逆に聞こえるというか、落ち着くんですよね。海の中の静寂に似て、居心地がいいんです。だからずっとこの中でプレーしたかったというか。本当に支えてもらっているなと思いますし、これ以上のない幸せを感じます」

A東京がリーグ連覇を達成したとき、CSが行われる5月になるとギアを1段上げて戦っていたイメージが強い。今シーズンもそれに近い雰囲気があるとザックは手応えを感じている。

「練習の中でミスが出れば、それをやり過ごすのではなく、どうしてそれが起きたのかを細かく確認するようになってきました。日に日にまとまってきているというか、シーズンを通してチームの成長を感じます。連覇のときのような雰囲気になっていますし、いよいよCSが始まるなという感じです」

ここ数シーズン、シーズンの終盤に故障者が出てベストメンバーで臨めない状況が続いていた。しかし、今シーズンは、大きな脱落もなく、ほぼベストメンバーでシーズンを戦い抜いた。もちろんCSとなれば対戦相手にとって負けられない試合の連続となり、思いどおりにプレーができないこともあるだろう。

ザックはチームの成長をひしひしと感じつつ決戦に向かう。もちろんアルバルカーズの声援がチームを後押しするはずだ。

チーム一丸になってタイトル奪還に挑む戦いが始まる [写真]=アルバルク東京

文=入江美紀雄

© 株式会社シーソーゲーム