「きわめて悪質なネグレクト」 ペット販売業者に執行猶予付き判決【長野・松本市】

業者の飼育施設

獣医師の資格がないのに犬に麻酔をせず手術したなどとして、動物愛護法違反などの罪に問われた男の裁判で、地裁松本支部は執行猶予付きの有罪判決を言い渡しました。

事件が明らかになったのは2021年のことでした。2つのおりで飼育されていた犬は合わせて900匹以上。劣悪な環境の中で飼われていた犬は半分以上が衰弱していたそうです。動物愛護法の殺傷や虐待の罪に問われていたのは、犬の販売業を営んでいた男(63)です。起訴状などによりますと、松本市内2カ所の飼育施設で452匹の犬を衰弱させ、虐待したほか、獣医師免許がないのに犬5匹に麻酔をせずに帝王切開をして傷つけたとされています。
検察は、「残虐で悪質」などと、懲役1年と罰金10万円を求刑。一方、被告側は、「鎮静・鎮痛剤を投与して帝王切開した」などと「殺傷」については無罪を主張した上で、虐待などについては罪を認め、執行猶予つきの判決を求めていました。
きょうの裁判で永井健一裁判長は「飼育環境は劣悪できわめて悪質なネグレクト。しかし、曲がりなりにも子犬を摘出するための帝王切開であり、その目的自体は不当とは言えない」などと述べました。そのうえで懲役1年・罰金10万円、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。被告の弁護人は、「本人は判決を重く受け止めている。控訴するかは被告と相談する」としています。

刑事告発した動物愛護団体の理事長を務める杉本彩さん。初公判からすべての裁判を傍聴、執行猶予付きの判決に悔しさをにじませました。

■杉本彩さん
「たったこれだけの判決。しかも執行猶予が付く。到底納得いかないです。世の中の動物虐待は許さないという意識がものすごく高まったと感じています。だから余計に司法との感覚の開きをものすごく強く感じました」

警察庁によりますと、去年、全国で動物を虐待したとする動物愛護法違反の疑いで摘発した事件は過去最多となる181件でした。2014年からの10年でおよそ4倍に増えています。

■杉本彩さん
「今後もっと重い厳罰化を目指して運動していくことも視野に入れなければいけないと感じている」

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