SEVENTEEN、パク・ソジュンともコラボ「ポップアップストア出店増加」の背景 ブランド&商業施設側の狙いとは

表参道で開設されたロッテ『ガーナチョコレート』発売60周年記念のポップアップストア ※撮影/編集部

ファッションビルを全国で展開する『PARCO』。時代の流行を作ってきたこの施設にも近年、アジアを席捲する“Kカルチャー”(韓国文化)の波が押し寄せようとしている。韓国の主要百貨店チェーン『現代百貨店』とPARCOが、若者であるZ世代やミレニアル世代へと向けた商品を5月10日から協力して発売していくことを発表したのだ。

女性誌編集者が話す。

「日本でも大谷翔平選手(29)がドイツのファッションブランド『ヒューゴ・ボス』の広告塔を務めていますが、同じように、韓国でも人気俳優やスポーツ選手がファッションブランドの広告塔を務めています。

有名どころだと、大ヒットを記録したドラマ『梨泰院クラス』(2020年)の主人公を演じたことで知られる俳優パク・ソジュン(35)ですね。パク・ソジュンは『NOICE』というカジュアルファッションブランドでアンバサダーを務めているのですが、同ブランドのポップアップストア(期間限定店舗)が、渋谷PARCOにて期間限定で開設されるそう。本人の来日イベントも予定されているんですよ」

韓国の13人組男性アイドルグループ・SEVENTEENが23年11月に来日した際にも、ライブ公演と連動する形で、大阪、愛知、福岡にポップアップストアがオープン。ロッテ『ガーナチョコレート』の発売60周年記念を祝うスイーツショップも24年4月23日~5月12日の間で期間限定で、表参道に開店している。

期間限定で開設されるリアル店舗――。”ポップアップストア”にまつわるニュースを目にする機会がここのところ増えたと感じている方も少なくないのではなかろうか。

なぜ、近年ポップアップストアの出店が目立つのか。780品以上の商品開発に携わった経験を持ち『Live News α』(フジテレビ系)などテレビ番組にも出演する流通ジャーナリストの渡辺広明氏は、弊サイトの取材に「時代性に合致している」と話す。

「ネット通販の市場は拡大しましたが、実際に商品を見られないというのはやはり消費者としても不満が残る。そんななかで、自分の目で見て商品を確かめることができるというのは大きな魅力だと思います。

また、ネット上には真贋の怪しい情報もあふれていますが、クチコミの影響力は強い。SNSを通して良い評判も悪い評判も広がるので、実物に触れたという人、店舗まで足を運んだという人のクチコミは信頼されやすいという面があるでしょう」(渡辺氏)

さらに、期間限定での出店となるポップアップストアには日本人に強く訴えかける要素があるそうだ。

「やはり日本人は“限定”に弱い。期間が限定されているのはもちろん、“そこでしか買えない”“そこでしか見られない”となると、実際に足を運ばないと体験できないわけです。つまり、ポップアップストアは一種のコト消費(体験にお金を使う消費行動)でもある。だからこそ余計にSNSなどで“ポップアップストアに行った“という情報が拡散されるわけですよ」(前同)

出店する店側としては、どのようなメリットがあるのだろうか。

「ポップアップは常設の店を出すよりは安くつきますが、一方で良い立地に出さないと集客や広告宣伝の面で効果がない。そうなると当然コストがかかります。なので、利益というよりも、ブランドの広告宣伝を目的としているところがほとんどでしょう。

ネット通販が主軸の店は顧客とのリアルな接点を求めているところも多いのではないでしょうか。来店者の属性がはっきり見えることで、店にとってはマーケティングにもなります。顧客から感想を直接聞くことができるのは担当者にとってモチベーションアップにもつながるでしょうね」(同)

■マルイもポップアップ出店を加速化で競争激化か

ポップアップストア事業に乗り出そうという商業施設は、何もPARCOに限らない。商業施設『マルイ』を運営する丸井グループは、マルイへのリアル店舗の出店相談から契約までをオンラインで行なえる出店サービス『OMEMIE(おめみえ)』を22年にスタート。24年3月には「ポップアップイベント出店がはじめての方におすすめ」と題した資料をオンライン上で公開するなど、マルイへのポップアップ出店を加速化させようとしている印象がある。

「マルイは比較的立地の良い場所にあるので、ビジネスとしては合っていますね。ただ、マルイとしてもそこで稼ぐというよりは、新規顧客をつかむためという考えでしょう」(前出の渡辺氏)

だが、マルイやPARCOを筆頭に百貨店の催事場からコンセプトカフェに至るまで、“ひとつのハコの中でいろんな店が展開される”という業態はますます増える一方。「難しい立ち位置の商業施設も少なくないのでは」と、渡辺氏は指摘する。

「究極的に言えば、売り上げというのは客数×客単価でしかないわけですが、人口が減少の一途をたどるなかで商業施設側も客数を増やすというのは至難の業。だから、今、求められているのは“施設へと来るファンをつくる・増やす”ということ。そのためには、やはり多くのファンを抱えるポップアップストアの商業施設への出店というような顧客との接点作りは重要になってくると思います」(前同)

コロナ渦が明け、一時的に減少したポップアップストアは再び増加の傾向にある。このままいけば“ポップアップストア戦争”も勃発しそうだが、はたして――。

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