「母ちゃんが災害関連死かどうかもわからない」 能登半島地震の被災地で進まぬ犠牲者の把握

石川県が発表している能登半島地震による犠牲者の数は、8日時点で245人です。県がホームページで公表している資料では、このうち15人は「災害関連死」と記載されていますが、「震災後に災害による負傷の悪化または身体的負担による疾病のため死亡したと思われる死者数(市町が判断したものを計上)」という但し書きがされています。

災害関連死と書かれてはいるものの実際にはいまだに審査が始まっておらず、県内で認定された人はいません。避難中に妻を亡くした男性は10日に月命日を迎え、審査が進まない現状にもどかしさを訴えています。

中竜夫さん「母ちゃんこれ、買うてきたよ」

中竜夫さん(71)は、妻・紀子さんを亡くし、10日4回目の月命日を迎えました。

紀子さんが好きだったチョコレートとバナナを毎月仏前に供えます。

中竜夫さん「あっという間に4か月経ったて。いままで母ちゃんしとった仕事全部自分でせんなんがや。洗濯から飯から。すぐやて」

輪島市滝又町は、地震による道路の寸断で孤立し、中さん夫婦は近くのおよそ15人の住民とともに農機具を保管する小屋での避難生活を余儀なくされました。

紀子さんの様子に変化があったのは、ヘリコプターによる救出活動が行われた1月11日の前日でした。

中竜夫さん「普通にしとってんて。普通に生活して昼飯食べてこの家にトイレに来た。休んでたら急に悪くなって」

消防への救急要請もむなしく、紀子さんは1時間後に息を引き取りました。

2月、竜夫さんは輪島市に災害関連死で亡くなった人に支給される災害弔慰金を申請しました。しかし、紀子さんの認定に関わる審査会の日程について連絡はないといいます。しかも、現時点で公表されている市や町が判断した災害関連死の人の中に紀子さんが入っているかはわからないということです。

中竜夫さん「はやくしてほしいわけよ、結果を出してほしい。もし(地震が)なかったらあそこに避難しなくてちゃんと家におって正月できたはず。地震のおかげで避難していてああいう病気になった」

2016年4月の熊本地震では、発災から2か月が経たないうちに、熊本市による審査会が開かれていて、能登半島地震では大きな遅れをとっています。

災害関連死に伴う災害弔慰金の申請は、9日時点で輪島市で50人、能登町で16人、七尾市で14人、志賀町で10人、珠洲市と穴水町は非公表としていて、少なくとも90人以上が申請しています。

被害があまりにも大きく市や町などのマンパワー不足がいまだ続く中、災害関連死の集計すらできていない被災地での課題が浮き彫りになっています。

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