最近の円安を十分注視、政府・日銀は引き続き密接に連携=岸田首相

Kentaro Sugiyama

[東京 10日 ロイター] - 岸田文雄首相は10日の経済財政諮問会議で、最近の円安を十分注視するとした上で、政府と日銀が引き続き緊密に連携していく考えを示した。金融政策や物価などマクロ経済運営を議論したこの日の会議で、民間議員は物価が過度に上昇することに懸念を示し、日銀に適切な政策運営を求めた。

民間議員は会議に提出した資料で、1─3月期のマイナス成長見込みや急激な円安など日本経済は新たな局面に向けた「正念場」にあるとの認識を示した。まずは1%を安定的に上回る実質成長の確実な達成に向けて企業の投資促進などの経済対策を適切に進めるべきとした。

大幅な円安や資源高が生じた場合は、物価に大きな影響を与える可能性があり、その動向を注視することが重要だと指摘。「物価の番人」とも呼ばれる日銀が適切な金融政策運営を進めるよう期待を示した。

会議に出席した岸田首相は日本経済について、約30年ぶりの高水準となった力強い賃上げや、史上最高水準の設備投資など前向きな動きが続いているとした上で、「最近の円安の動きを十分注視しており、政府・日銀は引き続き密接に連携をしていく」と述べた。

日銀の植田和男総裁は7日、岸田首相と会談後、記者団に対し為替についても議論したと明らかにした。総裁は「最近の円安について、日本銀行の政策運営上、十分注視をしていくということを確認した」と述べ、円安に対する問題意識を示した。

<潜在成長率引き上げへ3つの課題克服を>

民間議員は、日本が今後、潜在成長率を引き上げていくためには、1)賃金・所得の拡大、2)価格転嫁、3)エッセンシャルワーカーを中心とする人手不足対応──の3つの課題を克服することが重要だと指摘。それぞれの課題に対する政策も提言した。

日本経済研究センターがまとめる民間エコノミストの経済予測「ESPフォーキャスト」の4月調査によると、1─3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比年率でマイナス0.54%が見込まれている。

足元では、ドル/円が155円近辺の歴史的な円安水準で推移しており、輸入物価上昇を起点としたコスト上昇圧力の高まりが個人の消費マインドや企業の設備投資意欲に与える影響も懸念されている。

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