【スポルディング×月バスWEB 2024 Vol.2】市船橋、新たなユニフォームと共に新たな伝統の構築を──

新監督にOB星野氏が就任。“シンプルに強い市船”の復活を

千葉県の名門・船橋市立船橋高校男子バスケットボール部は今、変革期の最中にある。

昨年はインターハイとウインターカップ共に不出場と苦しい1年を過ごした中で、新監督に同校OBで、かつて千葉ジェッツふなばしでも活躍した元プロ選手・星野拓海コーチが就任。星野コーチは現役引退後に教師となり、男子部のコーチになる以前は市船橋女子部のコーチを務めていた。本格的に男子部を指導し始めたのは昨年のインターハイ予選からで、監督を引き継いだのはウインターカップ予選が終わり、新チームに切り替わるタイミングからだ。

星野コーチは監督就任にあたって、2つのテーマを掲げた。それが、「周囲に感動を与えられるチームであること」と「“シンプルに強い市船”を復活させること」だ。

「私がアシスタントでベンチに座っていたときに思ったのが、以前ならもっと“シンプルに強い市船”だったなということ。今はいろいろな技術が向上しているからこそ、何だかスマートにやり過ぎてしまっているというか。泥臭くないなと男子部に戻ってきたときに思ったんです。シンプルだけど強い市船だったからこそ、私の代も勝つことができていたと思います。今はそれよりも技術が先行してしまっている。時代は繰り返すと私は思っていて、今はシンプルな強さにフォーカスしているチームが少ない気がしています。当たり前のことをどれだけ一生懸命やれるか、それによって感動を与えられるチームになれるかというところ追求しながら、でもプレーではガツっとぶつかって泥臭くリバウンドを取るような、『やっぱり市船は強いな』と思われるチームにしたいですね」

市船橋の監督に就任した同校OBの星野拓海コーチ

スマートなプレーをする選手が増えてきた現代だからこそ、あるいは星野コーチのコンセプトは時代に逆行しているかもしれない。だが、バスケットボールはフィジカルコンタクトの多い競技ゆえ、どんな時代でも勝負どころではいかに球際への執念を見せられるか、フィジカルにプレーできるかなどが勝敗を左右する。日本に限らず、それは歴史が証明していることだ。

もちろん、原点に立ち返るだけではなく、そこに現代バスケットの要素も取り入れる。長身選手が少ない分、5アウトでより得点の期待値が高いゴール付近の得点、もしくは3Pシュートを多く打ち、逆に期待値が低いとされるロングツーやミドルレンジジャンパーを減らす。この戦い方を確立しつつある。

特に今年度のチームはシュート力がある選手が多く、キャプテンの菊田瑛暉は「心機一転を図りながら、自分たちの持ち味である堅いディフェンスからのファストブレイクをまず狙っていきます。加えて、今年の選手はみんなシュート力があるので、外角のシュートも狙いつつ、強いドライブやゴール下での2点を積み重ねていきたいです。個性が強くて自分を持っているメンバーが多いので、練習中には言い合いになることもあるのですが、その分すごくお互いを高め合えているなと思います」とチームの強みを語る。

彼個人もハイボリュームなシューターとしての側面に加え、「今年は泥臭いことを頑張りたいです。スタッツに残るリバウンドや3Pシュートはもちろん、スタッツには残らない部分も頑張っていきたい」と、星野コーチの掲げるスタイルを体現する一人になっていく構えだ。

シュート力を生かした爆発的なオフェンス──それが今年の市船橋の最大の魅力である。

実際、とある練習試合では1Qだけで47得点を記録したこともあるそうで、1月に行われた千葉県の新人戦でも、準決勝までの全ての試合で90得点オーバーというハイスコアゲームで勝ち上がった。決勝では僅か1点差で惜敗し準優勝だったものの、その得点力には星野コーチも「ノったら止まらない」と舌を巻くほどだ。2月の関東新人では初戦でのちに優勝する日本航空に完敗したが、それでもチームコンセプト通り31本もの3Pシュートを放っており、速攻でもオープンができれば躊躇なく打ち切っている。また、白石楓の23得点を筆頭に4人が2桁得点を記録するなど、日頃のトレーニングによって選手個々が着実にレベルアップしていることも示された。

さらに、星野コーチは再び強豪の地位までチームを押し上げる過程で、人間性を高めることにも重きを置く。「彼らとしてはバスケットをするために市船にきているとは思います。でも、一人の高校生として一番大事な学業や挨拶、身だしなみについては結構しつこく言っています。そういう部分はまだまだ。例えば体育館の端にホコリやゴミが落ちていてもそのままにしてしまったり。私はそういうところがすごく気になっているんですね。そういうところも含めて、“千葉に市船あり”という時代にどうやったら戻せるのかが根底にあります」

現代のトレンドを取り入れた戦術に、泥臭くガッツを見せるこれまでのスタイルを融合し、星野コーチオリジナルの新たな市船橋が始動した。

スポルディングのウェアと新たなスタート

そうした内面的な変化と共に、もう一つ大きく変化したものがある。ユニフォームだ。星野コーチの就任に合わせてウェア関係をスポルディングに切り替えたことは、最も目に見えた変革である。

星野コーチは監督就任にあたって、「自分の色を出していくこと」も一つのテーマとしていた。ユニフォームの変更については「どう自分の色を出していくかを考えているときにお話をいただいて、『これしかない!』と思ったんです。ユニフォームは本当に大事で、絶対に粗末にしてはいけないものです。今は自分の名前が入って、背番号も自由番号になったので、自分の名前と自分で選んだ番号と共に3年間を過ごすわけです。だからこそ、ユニフォームはもちろん、リバーシブルなどのウェアも大切に着てもらいたい」と、その思いを口にする。

こだわったのはカラーリングだ。伝統のグリーンは継承しつつも、「緑は緑でも、明るい黄緑のような色から、深い緑までさまざまな種類がありますよね。最近は明るめの緑が多かったのですが、今回は深い緑にすることを決めました。さらに深緑の中でも数種類のカラーを提案していただき、最終的にはスポルディングさんが市船にしかない深緑「ICHIFUNA GREEN(いちふなグリーン)」を作ってくださったんです。それと、私の時代は紫色のユニフォームを着ていて、ユニフォームが徐々に移り変わる中でも、やっぱり紫というのはずっとどこかに入っていて、私も大事にしていきたい色でした。新しい緑に紫を融合させたくて、このカラーリングになりました」と星野コーチ。

近年、はやりの短いパンツの丈にもこだわりがあり、「パンツを折ってまで短くするのは見栄え的にちょっと…という思いがあったので、それなら最初から短く履けるように作っていただきました。私個人としてもすごく気に入っているポイントです」と満足げな表情を見せた。

新ユニフォームをお披露目したときには選手たちから歓喜の声が漏れたという。菊田も「初めて見たときはすごくうれしかったですし、シンプルに格好良いなと思いました。自分が選んだ背番号に、名前まで入っているのでプロや大学生みたいだな、と。着心地もすごくフィット感があって、もっとムキムキになったらピチピチに着られそうなので楽しみです(笑)。ここからは千葉県では負けないようにしていきたいです」と声を弾ませた。

ユニフォームはや組織全体の一体感を高め、菊田の「千葉県では負けないようにしていきたい」という言葉に象徴されるように、チーム全体の士気をも高めてくれる。

また、スタッフ陣のウェアや練習試合などで使うリバーシブル、ロゴマークも合わせて刷新。特にロゴマークについては「市船にはαマークが校章としてあって、今までのどの代もαマークを練習着などのいろいろなところに着けて活動してきました。そんなαマークを使ってシンボルのようなロゴを作ってほしい」とスポルディングに相談。上向きの矢印を模したサークルロゴが完成した。

ロゴマークの作成もチーム再構築の一翼を担ってくれると星野コーチは言う。「パッと見て『あ、市船だな』と分かるようなものがあるといいなと思っていました。個人的にこのデザインはすごく気に入っていて、矢印が『ここから上に行くぞ』という思いを感じますし、シンプルにすごく格好良いなと思っています。スタッフのウェアにもロゴマークを入れてもらって、今の時期であればハーフジップのものなど、周りの人があまり着ていないものにしていただきました。『市船はスタッフも格好良いものを着ているよね』と言ってもらいたいです」

シンプルな強さを追求するチームと、星野コーチと菊田の言葉を借りるならば「シンプルに格好良い」ユニフォーム。公式戦でのお披露目は、今月の関東大会予選になる予定だ。市船橋の新たな伝統が幕を開けた──。

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