自転車ヘルメット努力義務1年 青森県での浸透、道半ば 「恥ずかしい」「冬使わずお金もったいない」

蓬田村から提供されたヘルメットを着けて自転車通学する蓬田中の生徒=10日

 昨年4月に施行された改正道交法で自転車利用者のヘルメット着用が全年齢で努力義務となって1年が経過した。青森県の着用率は昨年7月の警察庁調査で2.5%(全国平均13.5%)と全国ワースト2位。現在も、街中を見るとヘルメットを着けている人はわずかで浸透は道半ばだ。県内で最近発生した自転車事故による死者の大半がヘルメットをかぶっておらず、県警は「命を守るために着用を」と呼びかける。

 4月下旬、記者が青森市内の3地点で着用状況を調べたところ、計400人のうち着用していたのは18人。ヘルメット非着用の利用者からは「周りがかぶっていないから恥ずかしい」(17歳男性)、「冬は使わないので買うのはお金がもったいない」(65歳女性)との声が聞かれた。

 県警交通企画課によると、2019~23年の自転車事故の死者24人中22人がヘルメットを着けておらず、このうち9人は頭部に受けた傷が致命傷となり死亡した。同課は「着けていれば命が助かった可能性がある」とみる。

 頭を守る重要性は日本自動車連盟(JAF)の実験でも証明されている。自転車同士が時速20キロで出合い頭で衝突した際、ヘルメットを着用していない場合は着用時と比べ、頭部にかかる衝撃は約17倍。子どもが乗った自転車が止まった状態で転倒した場合、ヘルメット非着用時の頭への衝撃は3倍だった。

 こうした状況を受け、県警は通学で自転車を利用する機会が多い若年層をターゲットにした広報活動に力を入れている。プロバスケットボール・青森ワッツの選手らを起用し、インスタグラムやX(旧ツイッター)にヘルメット着用の重要性を訴える動画を投稿。弘前市の地元アイドルグループ・りんご娘によるチラシ配布も行い、若者にアピールしている。中学、高校の入学説明会などの場に警察官が赴き、着用を呼びかける活動も始めた。

 県警交通企画課の高橋晶子交通企画官は、着用率が全国最高の59.9%だった愛媛県や40%台の群馬県を例に挙げ「他県では中高生への呼びかけにより、若い世代の着用率が向上し、徐々に全世代に波及している。浸透には時間がかかるが、粘り強く取り組みたい」と話している。

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自転車ヘルメットの努力義務化 2023年4月施行の改正道交法で、自転車利用者のヘルメット着用が全年齢の努力義務となった。かぶらなくても罰則はない。これまでは13歳未満の子どもに着用させる努力義務が保護者にあった。

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