308と双璧をなすプジョーの人気モデル「2008」。その秘密は、どこにあるのか?

プジョーのコンパクト クロスオーバーSUV「2008」は、日本では中核モデルの308に勝るとも劣らない人気があるという。その人気の秘密を、実際の試乗や販売データなどを基に探ってみたい。

プジョーらしさを強調した現行型2008。ディーゼルの走りも好印象

2008GT ブルーHDiは、トルクフルなディーゼルと8速AT、それにシャシの良さも相まって、ハイウエイでも市街地でも走りの良さを堪能できる。

プジョー初のコンパクト クロスオーバーSUVとして2008が登場したのは、2013年(日本発売は2014年)。初代はステーションワゴンとSUVとの中間のような、まさにクロスオーバー的なモデルだったが、 は、よりSUVらしさを強めたスタイリングとなった。しかもBEVのe-2008も同時に発売された。

そして2023年にマイナーチェンジを受けた現行モデルとなる。プジョーを象徴するライオンのかぎ爪をイメージした3本のデイタイムランプや立体的なグリルなどでエクステリアの印象は洗練され、インテリアでは10インチの大型タッチスクリーンやヒーター付きパワーシート(運転席)などを標準装備するなど、充実した内容となった。

今回、取材の足を兼ねて借り出したのは、1.5Lの直4ターボディーゼルを搭載した2008GT ブルーHDi。永年ディーゼル車を作り続けているプジョーだけあって、その出来はさすが。ディーゼル特有のサウンドは乗っていてもほとんど気にならず、1.5Lと小さめの排気量ながら1750rpmから300Nmものトルクを発生してくれるので、発進から高速域まで十分以上に加速する。

8速トルコンATとの相性も良く、またシャシもしっかりしているので、乗り味はコンパクト(Bセグメント)とは思えないほど。208や308のようにワインディングロードの走りを楽しむクルマではないが、それでも不満ないパフォーマンスを発揮してくれる。もちろん、アダプティブ クルーズコントロールをはじめとした運転支援機能も充実しており、安心&快適なドライブが楽しめる。

小径ステアリングホイールの上から見る独自の3D iコクピットのメーター類は意外と見やすく、マイナーチェンジでスイッチ式になったATセレクターも悪くない。ディスプレイオーディオも標準装備されているから、カーナビやオーディオは自分のスマートフォンとリンクさせて使うことができる。外観から想像されるよりリアシートもラゲッジスペースも十分広く、おとな4人でアウトドアレジャーに出かけても不満は出ないだろう。

今回、約470km(8割くらいが高速道路)を走行して、トリップコンピュータは20.8km/L、平均車速は38km/h、残燃料はほぼ半分で、走行可能距離は320kmと表示した。やはりロングツアラーにはディーゼル車を選びたくなるなと再認識させてくれた。

1.5Lの直4ディーゼルターボは8速トルコンATとの相性も良く、低速域からトルクフルで、燃費も良い。駆動方式はFFのみ。

半分近いユーザーがディーゼル車をチョイス

一番人気のボディカラーは、オケナイト ホワイト。約3分の1のユーザーが、このボディカラーを選択している。

JAIA(日本自動車輸入組合)によると、2023年度(2023年4月〜2024年3月)の、日本におけるプジョー車の登録台数は7116台で、ブランド別では14位(日本ブランドを除けば10位)。ステランティス ジャパンではモデル別の販売台数などは公開していないが、2024年1〜3月の販売台数では、1位が308/308SW、2位が2008、3位が208とのこと。しかも、月によっては1位と2位が逆転することもあるという。つまり、最近のプジョー車では、308シリーズと2008が人気の双璧をなしているというわけだ。

ちなみに、オーダーしてから納車までの期間は、ほとんど待たされることはないようだ。希望のグレードやボディカラー、装備などが在庫車とマッチすれば、ほぼ即納が可能らしい。コンパクトSUVを少しでも早く手に入れたいと考えるなら、2008は選択肢のひとつに入れておくと良いだろう。

2008の人気グレードと比率は、以下のとおり。

① GT ブルーHDi(ディーゼル):47.6%
② GT(ガソリン):37.2%
③ デビューエディション(ガソリン):6.6%

やはり、レジャーの足などとして長距離走行する機会の多いSUVを選ぶなら、燃費の良いディーゼルを選ぶという人が多いようだ。前述のように2008のディーゼルは走りも燃費も良いから、この選択は妥当といえるだろう。

人気のボディカラーと比率は、

① オケナイト ホワイト:33.2%
② セレニウム グレー:32.2%
③ ペルラ ネラ ブラック:18.6%

と、これは他のSUVモデルでも見られる傾向なのだが、モノトーンのボディカラーが人気を集めている。トップ3の3色だけで全体の8割以上を占めてしまう。スタイリングが派手になりがちなSUVだから、ボディカラーはおとなしめに、と思うユーザーが多いのだろうか。ヴァーティゴ ブルーやエリクサー レッドといった鮮やかなボディカラーも2008には似合うのだが。

ステアリングホイールの上からメーター類を見る独特のコクピットは、慣れると違和感はない。センターダッシュのスイッチ類も操作しやすい。

人気の秘密は、デザインの良さと適度なサイズか

試乗車のボディカラーは、セレニウム グレー。全長は4.3mあまり、全幅も1.8mを切るサイズは街中でも扱いやすい。リアまわりのランプにもLEDを多用している。

購入者の男女比率や年代別比率、平均年齢などは公開されていないが、多くのユーザーが購入時に重視したポイントとしては、以下のものが挙げられている(順不同)。

・デザイン
・SUVとしてのサイズ
・SUVとしての機能性
・燃費(とくにディーゼルエンジン)

やはり、プジョー独特の洗練されたデザインによるエクステリアと、シックでモダンなインテリアとの組み合わせはもちろんだが、街中でも扱いやすいBセグメントのSUVながら人や荷物を十分に積むことができ、そしてディーゼルエンジンなら燃費も良い。といった理由で2008を選ぶ人が多いようだ。ちなみに、2008ユーザーの新規購入者比率は63.3%。約3分の2のユーザーは、初めての輸入車として2008を選んでいることになる。

軽自動車からラグジュアリーブランドまで、世界的なSUVブームはまだまだ終わりそうにない。2008の属するBセグメントのSUVも、日本車から輸入車まで百花繚乱。そんな中で、独特のデザインに高い機動性や使い勝手、そしてディーゼル車だけでなく、1.2LガソリンターボやバッテリーEVもラインナップするのが2008のアドバンテージ。コンパクトSUVを検討しているなら、プジョー 2008は要注目の1台といえるだろう。(文:篠原 政明/写真:村西 一海、ほか)

シート地はアルカンターラとテップレザーのコンビ。フロントシートはヒーター内蔵で運転席は電動アジャストを標準装備。

●全長×全幅×全高:4305×1770×1580mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1320kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1498cc
●最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:軽油・41L
●WLTCモード燃費:20.8km/L
●タイヤサイズ:215/60R17
●車両価格(税込):445万4000円

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