磯焼け問題に迫るドキュメンタリー映画「ここにいる、生きている。~消えゆく海藻の森に導かれて~」が完成 逗子市・葉山町

『ここにいる、生きている。』の一場面

逗子在住の映画監督・長谷川友美さん(42)が磯焼け問題の実情に迫ったドキュメンタリー映画『ここにいる、生きている。〜消えゆく海藻の森に導かれて〜』が完成し、4月29日、逗子海岸映画祭の企画の一環で、ダイジェスト版の上映会が行われた。長谷川さんは「自然や環境の大切さを意識するきっかけになれば」と期待する。

長谷川さんはコロナ下で逗子に移住してきた頃、あるイベントで、「地球温暖化が原因で日本の沿岸部の海藻がなくなってきている」という研究者の話を聞いた。目の前に広がる海で起きている問題について初めて知り、自分と同じように知らない人も多いはずだと思い、「映画にする価値がある」と取材を開始した。

「知らないことだらけで勉強をしながら、好奇心の赴くままに」全国を取材してまわり、撮りためた映像は200時間以上におよぶという。

地元の逗子では「磯焼け対策」としてのボランティアが行うウニの駆除活動を撮影。サーファーへの取材では、「5、6年前まではホンダワラ(海藻の一種)もたくさん生えていたが、今は全くない。磯が死んでいる」といった話を聞いた。他にも北海道のコンブ生産地、そのコンブを使用する大阪の和食店など取材は多岐にわたる。

映画は長谷川さんの「目の前に困っている人がいることを知ってしまった今、何もなかったかのように無視することはもうできない」というナレーションで締めくくられる。

作品の時間は120分。現在上映会場を探しているところで、逗子ではCINEMAAMIGO(新宿)が年内の上映を予定している。

同作品のプロデュースを手掛ける株式会社No.0の大野裕子さんは「公式ウェブサイトやX(旧ツイッター)もあります。お一人でも多くの方に知っていただきたいので拡散お願いします」と呼びかけた。

海の事、自分事に

上映後、葉山在住のフリーダイバー・武藤由紀さんと、国立環境研究所気候変動適応センター研究員の熊谷直喜さんによるトークセッションも行われた。

熊谷さんは日本の海の変化・温暖化について言及。2017年秋ごろからみられる黒潮の蛇行が水温の上昇に大きく影響し、熱帯化している。そして熱帯の方からくる魚による食害も見過ごせないことを語った。

武藤さんは10年ほど前から葉山の海に潜るようになり、この間の海藻の変化について写真を示しながら解説した。14年の海中を撮影した写真には魚類の生育の場にもなるカジメが森のように茂っており、16年も同様だった。しかし、熊谷さんが指摘した黒潮の蛇行が始まった17年になると目に見えて減り、岩肌が見えるまでになった。そして21年にはのっぺらぼうになり、まったく見当たらくなった。

こうした状況に対して武藤さんは、ウニの駆除やカジメの種付け、サザエの稚貝をまくなどの藻場保全活動を地域で協力して始めていることを報告。そのうえで「多くの人が海の中の事を知って、遠い世界の事ではなく、『自分の一部である海』を感じてもらって、何が起こっているのか、何をしたらいいのか、自分事として動いてほしい。楽しみながら海のためになることを一緒にやっていきましょう」と訴えた。

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