東海の障害者施設 指定停止へ 茨城県、入所者虐待と判断

茨城県庁=水戸市笠原町

茨城県東海村の障害者支援施設で、施設長や職員が入所者に暴行するなど虐待行為が繰り返されたとして、県は同施設を3カ月間の指定停止処分とする方針を固めた。複数の関係者への取材で10日、分かった。5月中に施設側に通知される見通し。障害者総合支援法に基づく処分で指定取り消しに次いで重く、実質的な事業停止に相当する。県が障害者支援施設に行うのは初めて。

関係者によると、同施設には重度の知的障害者ら約50人が入所。県は2017~21年の間に、施設長や職員による複数回の暴力行為があったほか、入所者の預かり金詐取や職員の食事代を負担させるなど経済的虐待が行われていたと判断した。20年に施設長らの虐待行為に関する通報があり、調査を進めていた。

県は、これらの行為を同法が定める「著しく不当な行為」「人格尊重義務違反」に当たるとみている。

処分期間中は、施設運営に必要な市町村からの給付費が受け取れなくなる。県は通知から実際の処分まで一定期間を設け、入所者や保護者との面談を踏まえて転所先を調整する。

施設側は処分に向けた聴聞手続き後の23年4月、県に処分しないよう求めて水戸地裁に提訴。訴状によると、施設側は一部の暴行を巡り、事実がないことや正当防衛を主張。預かり金を詐取したとされる職員については、本人と合意の上で退職日を設定し、それまで自宅待機とするなど、法人として適切に対応したとしている。

元厚労省虐待防止専門官で、日本社会事業大専門職大学院教授の曽根直樹氏は今回の処分方針について「珍しく、非常に重い」と指摘。「仮に入所者を(別施設に)移せても、職員の給与は支払い続けなければならない」として、処分後は施設運営が難しくなるとの見方を示した。

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