【社説】政治資金改革 カネをかける活動見直せ

政治資金の改革に本気で取り組む意思が感じられない。派閥による政治資金パーティーの裏金事件を起こし、政治不信を増大させたのは自民党ではないか。

率先して改めるべきなのに、各党の議論の最後尾に加わる姿にあきれるばかりだ。公明党と大筋で合意した与党案は具体性と実効性に乏しく、改革の名に値しない。

求められているのは違法な裏金をなくし、政治資金の透明性を高める法改正だ。違法行為が認められれば、会計責任者のみならず、政治家本人も連帯責任を負う仕組みも欠かせない。

同時に政治活動を根本から見直す必要がある。政治資金改革は、カネをかけない政治活動への転換を前提とすべきだ。

■高額な飲食は必要か

「政治にはカネがかかる」

政治資金改革の議論をする際、政治家が決まって口にする言葉である。事務所費、秘書の人件費、ガソリン代、活動報告の印刷費など、政治資金はいくらあっても足りないと言わんばかりだ。

「政治とカネ」の問題が繰り返されるのは、多額の資金集めを許容してきたからではないか。

政治活動は多くの公費によって支えられている。

国会議員の歳費は月額約130万円、期末手当は年額で約640万円ある。月に100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)や月額65万円の立法事務費もあり、年間収入は4千万円を超える。秘書は3人まで公費で雇うことができる。

ポスターやはがき、自動車代など選挙運動費用の一部を公費で負担する制度もある。

1994年に成立した政党助成法に基づき、今年は総額315億3600万円の政党交付金が9政党に配分される。最も多いのは自民党の160億5300万円だ。原資は国民の税金である。

それでも政治活動の資金が足りないとして、個人で政治資金パーティーを開く政治家が多い。

日常の支出が政治活動費として妥当かどうかを点検すべきだ。例えば高価な会食が挙げられる。飲み食いの費用を政治資金で賄うことに国民は疑問を持っている。

地域のイベントに小まめに足を運び、冠婚葬祭に電報を打つことは、政策に反映するための活動というよりも選挙対策の色合いが濃い。こうした活動を求め、評価する有権者の意識も改めたい。

真に政治資金を充てるべき活動について、与野党で建設的な議論をしてもらいたい。本音では無理な資金集めをやめたい議員もいるのではないか。

とりわけ自民党は、リクルート事件を反省して1989年にまとめた政治改革大綱をいま一度、思い起こすべきだ。

国民の政治不信の中心にあるのは、政治家個々人の倫理性の欠如、多額の政治資金とその不透明さだと指摘している。

■国民の怒りを感じよ

裏金事件の実態はいまだに解明されていない。自身の責任を不問にした岸田文雄首相をはじめ、自民党は自浄作用を欠く。政治資金を透明化する論議も低調だ。

政治資金規正法改正の与党案には、パーティー券購入者の公開基準額がない。政策活動費も具体的な使途公開が担保されておらず、合意内容には曖昧さが残る。

野党が禁止を求める企業・団体献金には触れてもいない。

政党交付金は、政治家個人への企業・団体献金を禁止する代わりに導入された。だが政治家が代表を務める政党支部への献金は温存され、実質的に政治家個人の活動資金となっている。パーティー券購入は形を変えた献金として、不透明なまま存在している。

政治資金規正法の理念を改めて確認したい。政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置くことである。「政治活動の自由」を盾に曇りガラスを残してはならない。

国会の会期末まで残り1カ月半となった。与野党ともに、国民の怒りを感じながら政治改革に取り組んでほしい。小手先の改革で済ませることは許されない。

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