「つま先ムーンウォーク」 が120万回超再生の50代主婦を直撃「職場の通路も常にムーンウォーク移動」

ハイレベルなロボットダンスが話題 ※画像は「中高年型」こと屋代まどかさんのTikTok『@madoka_yashiro』より

TikTokで目下人気を集めているアカウントがある。アカウント名は『中高年型』。ダンス動画を中心に動画投稿を行なっているのは50代の主婦だ。

同アカウントは今年2月から、ロボットダンスやムーンウォーク、アニメーションダンスなどを踊る姿を収めた動画の投稿をスタート。すると、驚異の体幹で太股の付け根から大きく足を動かす動作、さらにダンス中に浮かべる独特の無表情が話題を呼び、これまでに合計10万近くの”いいね”を獲得。つま先立ちで披露するムーンウォークは120万回再生を超えるなど話題沸騰。コメント欄には《すげぇ、、どうなってんだこれ》《動きも表情もすごい!!かっこいいです》などと称賛の声が多数寄せられているのだ。

プロフィールには「子育て終了後dance始めてみました」とある『中高年型』さん。プロフィールを見る限り、ズブの素人からダンスを始めたようにもとれる。そんな『中高年型』さんとは何者なのか。その正体に迫るべく、弊サイトは直接話をうかがった。

まず、TikTokで大注目を集める『中高年型』さんの本名は屋代まどかさん。現在52歳で2人の娘の母である。今年、次女の大学受験が終わったばかりだそうだ。

本人によると、ダンス経験は「20代の頃、1年ぐらい“ポップ”(ストリートダンスの派生ジャンル)をかじったことがあるぐらい」とのこと。かつてスポーツクラブではピラティスを教えていた経験もあるそうだが、継続してダンスを練習するようになったキッカケは、長女の大学受験が終わり、かつコロナ禍で時間ができた2021年頃のことだったという。

「やるならとことんやりたいタイプなので、(ダンスをやりたい気持ちはあっても)これまで子育てとの両立はなかなか難しかったんですよね。

コロナ禍、独学でロボットダンスにチャレンジしていた頃に、『第1回ロボットダンスバトル』(21年10月)にエントリーしたら、ダンス技術よりも“ロボットになりきっている”ことを評価していただけて、ベスト4まで進んだんです。このイベントで評価していただいたことが、毎日練習するキッカケになりました」(屋代さん)

これを機にきちんとダンスを習おうと考えた屋代さんだが、年齢ならではの悩みに直面する。

「あらためてきちんと習おうと思ったとき、若い人に混ざって練習するのは恥ずかしくて……。ダンスの通信講座に申し込みました。ダンス動画を自分で撮影して送ると、採点してくれるんです」(前同)

申し込んだのは、『はむつんサーブアニメーションダンススクール』。ISSA(45)率いるDAPUMPメンバーがMCも務めた伝説のダンス番組『スーパーチャンプル』(日本テレビ系)などにも出演し、日本最大のストリートダンスのコンテスト大会『JAPAN DANCE DELIGHT』05年度全国大会準優勝、また日本人で初めて、世界的な歌手・マドンナ(65)のPVにも出演、ツアーに帯同するなど、そうそうたる実績を持つ、りきっちょ(48)が講師を務めるスクールだ。

■練習方法は「職場の通路でムーンウォーク」 “つま先立ち”のこだわりは

通信講座に申し込み、50代目前で本格的にダンスの世界へと足を踏み入れた屋代さん。ふだんは介護予防指導員として、介護施設にて椅子体操や口腔体操を指導しているという。「凝り性」なのは自覚しているそうだ。

「全力でやらないと気が済まない性格で、家の洗面所では鏡を見ながら毎日ロボットダンスの腕の練習、お皿を洗うときも片足立ちでバランスをとりながら。職場の通路も常にムーンウォークで移動して……。

職場の方たちは最初驚いていましたけど、もう慣れてくれていますね。お客さんが出入りするような場所からも(ダンス姿が)丸見えですが、みなさん適応能力が高くて(笑)。周囲の理解に助けられています」(屋代さん)

SNSにダンス動画を投稿し始めたのは、「ダンス動画をスマホに保存していると、あっという間に容量がいっぱいになってしまう」という単純な理由から。しかし、投稿を続けると多数の同志からメッセージが寄せられ、一緒にダンスをする仲間もできたそうだ。それまで家や職場で一人踊っていただけだったが、一気に世界が広がったという。

こだわりは「つま先で立ち、足を高く上げて踊る」スタイルだ。

「ストリートダンスとして、外でできるダンスにこだわっていて。足の裏をすべらせるムーンウォークだと、床や靴裏がツルツルじゃないとできないけど、芝生でも石畳でもつま先ならムーンウォークができるんです。

また、つま先で立つと、股関節から脚を動かす可動域も広がり、同じムーンウォークでもスピードの緩急など微調整ができます。ただし、足を高く上げるのは、意図的にやっています。つま先ダンサーって男性が多いのですが、私が同じように踊っても何か物足りなかったんです。ならば存在感を示すべく、派手に足を上げてみようかなと思って」(前同)

■練習3年、ダンスバトルで優勝――今後の夢は

TikTokで大バズリする契機ともなった、頭の上にまで高く上げた足を振り子のように前後に振る姿は、屋代さんいわく「基礎練」とのこと。とはいえ、最初からつま先立ちで足を高く上げられたわけではないという。

「最初は片足2秒がやっとでしたね。それが悔しくて、パンプスやハイヒールを履くのをやめ、スニーカーでいつでもどこでもやるようにしました。買い物でレジに並んでいる間でも、少しでも時間があれば周りの目を気にせず、片方の足でつま先立ちをコツコツやる。毎日毎日やっていると、つま先立ちをするための筋肉が鍛えられてきて、30秒くらいキープできるようになりました。今は片足1~2分キープできます」(前出の屋代さん)

文字通り“いつでもどこでも”するのが屋代さんの練習スタイル。足を高く上げるのも同様だ。

「やっているうちに重心の置き方のコツを自分なりにだんだん分かるようになってきた感じです。1ミリずつでも、少しずつ……気がついたら頭より足が高く上がるようになって。つまずいてもおかしくない年齢からのスタートだったんですけど、最近、道でつまずくこともなくなりました(笑)」(前同)

日々の練習が実を結び、23年1月に開催された『第3回ロボットダンスバトル』では優勝。同年6月にはパフォーマンスイベント『TOKYO STEP TOGETHER』で初ショーケース(※ダンスなどの発表会)出演、特別賞を受賞した。さらに今年は次女の大学受験も無事終了し、いよいよダンスにも熱が入る。

将来の夢を聞いてみると、屋代さんは「十分すぎるぐらい仲間やイベントに恵まれていて、みなさんのおかげでダンス環境をいただいているんですけど、今後、自分もそういう場を提供できるようにはなりたいなと思います」と話す。

「年齢を重ねれば重ねるほど若者の集まるダンススタジオには通いにくくなりますので、中高年でも集まれる、交流できるようなコミュニティを作ることができたらいいですね」

と語る屋代さん。なお、『中高年型』というアカウント名については、「カッコつけてる場合じゃないので、ネタとして印象に残るよう最初から狙ってはいました」と笑う。

先日は《ダンスはやっぱり光GENJIな主婦》と題しつつ、光GENJI要素皆無のダンス動画をTikTokに投稿して、《プロフィールといい表情といいタイトルといいセンスが異端でまじで好きすぎる》などと話題を呼んでいたが、投稿するたび、確実に多くの人々の目を釘付けにする屋代さんのダンスの可能性はまだまだ始まったばかり。今後、どんな凄いダンスを見せてくれるのだろうか――。

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