キャンプバブルに浮かれすぎた?「スノーピーク」が99%減益で非上場化も…再編は波高し(小林佳樹)

スノーピーク本社(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュースの核心】

キャンプバブルを追い風に急成長したキャンプ用品大手のスノーピーク(本社・新潟県三条市)が上場廃止に追い込まれた。4月13日に米投資ファンドのベインキャピタルと実施したMBO(経営陣が参加する買収)が成立。6月に予定する臨時株主総会を経て、早ければ7月にも上場廃止となる。非上場化後はベインが55%、創業家が45%を保有する株主となる見通しで、山井太社長が引き続き経営にあたる。

非上場化の引き金となったのは急激な業績悪化だ。スノーピークは、2012年12月期から22年12月期の10年間で、売上高の年平均成長率は24%、営業利益成長率は61%の高い伸びを記録した。特に新型コロナ感染拡大が本格化した20年12月期からは、キャンプブームに火がつき、21年12月期の売上高は対前年同期比53%増、営業利益は2.5倍となるなど、成長が加速した。

しかし、ブームが沈静化した23年に業績が急激に悪化。事業拡大に伴う販管費や店舗の減損損失などが響き、23年12月期の連結純利益は前期比99.9%減の100万円に落ち込む惨憺たる決算となった。「株式の非公開化で経営の自由度を高め、国内事業を立て直すとともに海外事業を強化する」(スノーピーク)と説明されるが、「MBOによる非上場化は外資ファンド頼みの苦肉の策。リストラは不可避でしょう。他のアウトドアブランドも苦戦しているので再編含みの展開が予想されます」(メガバンク幹部)という。

また、キャンプバブルが競合社を招き入れたことも誤算となった。「ワークマンがキャンプ初心者を狙った低価格帯のテントを投入したり、高価格帯の商品ではゼインアーツなどの小規模メーカーとの競合が激化している」(同)とされる。

実娘の山井梨沙氏の不倫騒動も…

スノーピークは1958年設立の「山井幸雄商店」という金物問屋がルーツ。急成長したのは山井幸雄の長男である山井太氏がキャンプ製品を開発し、オートキャンプシーンをつくり出してからだ。海外展開も積極的で、米国を皮切りに台湾、韓国にも進出。2018年には英国ロンドンにも子会社を設立した。しかし、借り入れ増が財務を悪化させた。有利子負債は20年12月期の23億8500万円から、21年12月期が27億1500万円、22年12月期には91億7400万円と急増している。

また、太氏は20年3月に会長に退き、実娘の山井梨沙氏に社長を譲ったが、22年に梨沙氏が既婚男性との不倫・妊娠を公表し、辞任したのに伴い、社長に復帰した経緯がある。

スノーピークは非上場化で経営の立て直しを図るが、「創業家が45%の株式を所有することで、再編がうまくいかない可能性も残る」(大手証券幹部)と危惧されている。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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