岸田政権が邁進「認知症いじめ」…超高齢化で患者激増予測なのにマイナ保険証ゴリ押し

将来的に3人に1人が認知症やMCIという、超高齢化社会の厳しい現実が待ち受ける(C)日刊ゲンダイ

衝撃的な数字だ。厚労省が8日、65歳以上に占める認知症関連の患者の将来推計を公表。2040年には、65歳以上のうち7人に1人が認知症になるという。団塊ジュニア世代が65歳以上になる40年は、全人口に占める65歳以上の割合が約35%に達すると予測されている。超高齢化に伴う患者激増をよそに、政府は「認知症いじめ」に邁進中だ。

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厚労省の推計によると、65歳以上のうち認知症患者は40年に584万人、60年に645万人を数える。今回初めて公表された軽度認知障害(MCI)の将来推計は40年に612万人、60年には632万人に上る。MCIを含めた認知症関連の患者は40年に計1196万人、60年には計1277万人に達する見込みだ。

前回09~12年の調査では、認知症患者は40年に802万人と推計されていた。今回調査は前回から約200万人減ったものの、将来的に65歳以上の3人に1人が認知症もしくはMCIになるとの推計は、超高齢化社会の厳しさを物語る。

政府の「認知症施策推進本部」の本部長を務める岸田首相は、今年1月施行の認知症基本法に基づく施策の基本計画を今秋をメドにまとめる予定だ。「認知症と向き合う『幸齢社会』の実現」を掲げているが、今年12月に予定される現行の健康保険証廃止は既定路線。見直すどころか、「マイナ保険証」の利用促進にシャカリキで、「紙の保険証」廃止に不安を抱える認知症患者や家族らを置き去りにしている。

役人ですら利用率は6%未満

政府は高齢者を対象に暗証番号なしで使えるマイナカードを交付してマイナ保険証の利用促進を図っているが、申請件数は3月末時点で約1万6000枚にとどまる。全体の保有枚数9215万枚のうち、わずか0.02%程度だ。認知症の啓発活動などを行う公益社団法人「認知症の人と家族の会」の鎌田松代代表理事がこう言う。

「そもそも、認知症の方のマイナ保険証の登録・申請はハードルが高い。サポートできる家族や支援者が近くにいればまだしも、1人暮らしの方や遠距離に家族がいる方は、マイナ保険証の取得すら容易ではありません。家族にも負担がかかります。病歴や薬剤情報を十分に記憶できない認知症の方にとって、デジタル化は情報を共有できる点では有意義でしょう。しかし、暗証番号なしのマイナ保険証を発行するのに、なぜ紙の保険証を残さないのか納得がいきません」

こうした懸念や疑問をよそに、政府は今月から7月までの3カ月間をマイナ保険証の利用促進の強化期間に位置付け、利用率5.47%の惨状をどうにかしようと必死だ。マイナ保険証を所管する厚労省の武見大臣に至っては、「利用率に関係なく健康保険証を廃止する」と明言してはばからない。

ところが、マイナ保険証の旗振り役である政府ですら、国会公務員の利用率は5.73%。全国の利用率より0.26ポイントだけ上回っているに過ぎない。

「紙の保険証の廃止は、『認知症の方が尊厳と希望を持って暮らすことができる共生社会』を目指すという基本法の理念と乖離しています。それこそ認知症の方の能力に配慮しながらデジタル化を進めつつ、紙の保険証を残していただきたい」(鎌田代表理事)

「幸齢社会」なんてしょーもないダジャレを掲げる前に、高齢者や認知症患者の不安に寄り添って欲しいものだ。

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