生き生きと快活に年を重ねるためには、心身ともに健康であることが大切です。なるべくストレスを溜めずに、のびのびと過ごすために必要な心がけとはどのようなものなのでしょうか。心理学者である内藤誼人氏の著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より、詳しく見ていきましょう。
悩みやストレスをすぐに手放すコツ
「私は、〇〇すると気分がよくなる」というものを見つけましょう。折り紙でも、落書きでも、友人とのおしゃべりでも、シャワーを浴びることでも、映画を観ることでも何でもかまいません。
気持ちが落ち込んだときに、同じ方法で発散していると、そのうちに「条件づけ」と呼ばれる現象が起き、自分が決めた「〇〇をする」と一瞬で気分がよくなるようになります。ネガティブな感情があるたび、私たちは「老けて」しまうこともわかっていますので、「条件づけ」を上手に利用して、悩み事でストレスを感じるたびにリセットしましょう。
米国デューク大学のダナ・コッター=グルーンは、60〜96歳(平均74.65歳)の43名に、9日間、どれくらいネガティブ感情(怒りなど)を感じるのか、どれくらいストレス(口論など)を感じるのか、またどれくらい身体の痛みを感じるのかの記録をとってもらいました。また、夜には「今日、私は何歳くらいだと感じたか」という記録もとってもらいました。その結果、ネガティブ感情がない日には、14.93歳も実年齢よりも若く感じ、ストレス(口論)のない日には15.17歳も若く感じ、ヒザや腰の痛みがない日には14.70歳も若く感じられることがわかったのです。
どうも私たちの主観的な年齢は、ストレスや身体の痛みとも連動しているようなのです。
ストレスを完全にゼロにするのは無理ですが、さっさと解消することはできます。
私は、何となく気分がのらないときや、ムシャクシャすると、「手と顔を洗う」ことにしています。何十年もこのストレス発散法を取り入れているので、すっかり「条件づけ」が起き、今では冷たい水で手と顔を洗うたびに、すぐに気分が上向きになります。
「コーヒーを飲む」「歯みがきをする」「ガムを噛む」など、何でもよいので、自分なりのストレス発散法をいくつか持っておくとよいでしょう。
ストレスをため込まないようにすると、気分も若々しくいられますよ。
何事も完璧にやろうとしない
掃除でも、仕事でも、何でもそうだと思うのですが、すべてを完璧にやろうとするとものすごく疲れます。何事も「ほどほどでいいや」の精神を持ちましょう。
掃除なら、天井から床までピカピカに磨き上げようとするのではなく、見える場所だけササっと拭いておくくらいにするのです。庭の草むしりをするときには、一本一本の雑草の根っこまで抜こうとするのではなく、目に余るような部分だけ、適当に草むしりをしておくだけでよいのです。
どれくらいいいかげんにやるかは自分の判断でよいのですが、とにかく疲れないように気をつけましょう。
スイスにあるチューリッヒ大学のペトラ・ワーツは、50名の健康な中年男性に、完璧主義を測定する心理テストを受けてもらってから、だ液を採取させてもらい、コルチゾールの値を調べてストレスレベルを測定してみました。その結果、完璧主義であればあるほど、ストレスを感じやすいことがわかったのです。
完璧にやろうとすると、ストレスがたまるのです。
当たり前のお話ですが、完璧にやろうとすると、手抜きができません。全神経を集中させてピリピリしていなければなりません。これは、ものすごく疲れます。したがって、何事も半分くらいできれば、「それでよし」という自分なりのルールを決めておくのです。自分に厳しいルールを課すのをやめましょう。たまには、ちょっとくらい手抜きをしたってよいではありませんか。そのほうが人間らしいともいえます。
料理を作るときにも、すべてをレシピ通りにやろうとするのではなく、少しくらい雑でいいのです。お風呂掃除も、浴槽をピカピカにする必要はありません。表面を軽く拭いておくだけでも、やらないよりはずっとマシです。
洗濯物を畳むときにも、適当に畳むようにするのです。読書をするときには、きちんと最初から最後まで精読するのではなく、適当に流し読みでもOKです。
いいかげんにやるのは、まことに気分がいいものですよ。おかしなプレッシャーも感じませんし、神経がピリピリすることもなく、のびのびと暮らすのがポイントです。
内藤 誼人
心理学者