育成3年目の25歳「もう最後」 森友哉の助言で“開眼”…狙う覚醒「当たれば飛びます」

オリックス・山中尭之【写真:北野正樹】

オリックス・山中尭之、森友哉のアドバイスで狙う2桁背番号

何気ない一言で気付かされることがある。オリックスの育成3年目・山中尭之外野手は、森友哉捕手からのアドバイスで打撃が“開眼”した。

「森さんから『どんな感覚なん?』と聞かれて。自分の考えを伝えたら、右足が折れるのを遅くするように言われて。それからボールを強くたたけるようになったんです」。自らのバッティングを見直すきっかけとなった出来事を、うれしそうに振り返った。

今春2月の宮崎キャンプ中盤だった。B組の室内練習場で打撃練習をしていた山中に、個別練習のためにやってきた森が突然、声を掛けてくれた。「右足が折れるのが早く、右肩が先に出ちゃっていたんです。体の回転の方が早くて肩が出ると、バットの出が遅くなって詰まるんです」。打撃練習の順番待ちだったのだろうか。パンチ力が持ち味でありながら、手打ちのような山中の打撃を見て、森は声を掛けずにいられなかった。

さらに「右足が早く折れるので、自分から崩されにいっているよ。上半身(の力)が強すぎるから、下半身をもっと鍛えた方がいい」とも助言をもらった。山中は、森からのアドバイスをきっかけに、タイミングの取り方を変えた。

「フォームは変わらないのですが、以前は上げていた足を『すり足』にするようになりました。足が弱いので、試合でグッと力が入った時にブレていたのですが、すり足なら右足が折れなくなりました。(バットに)当たれば飛びますから」

育成3年目のテーマは「粘り」

山中は、つくば秀英高から共栄大、独立リーグのルートインBCリーグ・茨城アストロプラネッツを経て2021年育成ドラフト1位でオリックスに入団。183センチ、96キロと恵まれた体で、長打力がセールスポイント。秋季キャンプなどでは、練習の“終わり”を合図する「締めの本塁打」を託されることが多く、今春のキャンプでは社会人との練習試合でチーム対外試合第1号を放つなど、長打力は折り紙付きだ。

プロ2年目の2023年は2軍で6本塁打を放ち、今季も4月中に2本塁打を描いた。4月は38打数11安打のうち本塁打が2本、二塁打3本と高い長打力を誇る。2軍公式戦では、1試合で5人しか出場できない育成契約の選手。出場の予定がなく球団施設の舞洲に残留する際は、波留敏夫育成チーフコーチ、由田慎太郎育成コーチから指導を受けてフォーム固めに励み、次のチャンスに備える日々を過ごす。

「闘争心を出すと冷静さに欠けるので、力が入らないように意識して力を抜いています。脱力感ですね。これも森さんのアドバイスから学んだことです」

今年のテーマは「粘り」。今季の2軍戦には、ここまで14試合に出場して打率.302、2本塁打、6打点を記録しており「すべてに対してです。結果はどうであれ、最後まで食らいつくという気持ちを持っています。外野(のポジション)も埋まっていますし、ポジションは少ないです。育成(選手)は3年で契約が終わるので、もう最後という気持ちで臨んでいます。7月までに結果を残すしかありません。これからが勝負です」。大砲候補が目覚める時が訪れそうだ。(北野正樹 / Masaki Kitano)

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