フォード Kugaの335万円からという価格設定に驚き、オンロードのドライビングダイナミクスに感心した【10年ひと昔の新車】

2010年10月、フォードのコンパクトSUV「Kuga(クーガ)」の日本導入が開始された。エクスプローラーなどタフな大型SUVで知られるフォードから登場したコンパクトSUVとして、また久々の欧州フォード製のモデルとして大きな注目を集めた。 SUVの概念を超えると言われたドライビングダイナミクスはどのようなものだったのか。今回は上陸後間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年12月号より)

ライバルと比較してみても戦略的な価格設定

欧州で、2008年5月からの半年で約3万台を生産する大ヒット作となったフォードKuga(クーガ)は、フォーカスC-MAXが使う「C-carプラットフォーム」をベースにして作られたコンパクトSUVモデルである。そしてフォードジャパンが導入する久々のフォードヨーロッパのモデルであり、エスケープとエクスプローラーの中間に位置し、フォードのSUVラインナップを補完し、さらに強固にする役割も担っている。

そのKuga。フォードのマーケティング部ディレクターの木下さんによれば、あえて欧文表記の「Kuga」を使用しているという。「まだ(マーキュリー)クーガーとクーガを混同されている方が多いので、Kugaを浸透させたい」のだという。本誌もそれにならって「Kuga」と表記したい。

日本に導入されたKugaに搭載されるパワーユニットは、2.5L 直5ガソリンターボエンジン搭載車のみだが、このエンジンはフォーカスSTにも搭載されているものをベースにチューニングされたもの。それに5速ATが組み合わされる。

グレード展開は、Titanium(タイタニウム)378万円とTrend(トレンド)335万円の2モデル。このトレンドの335万円は、驚くべき価格設定だと言っていい。このセグメントのライバルとなるBMW X1 sDrive18i(FR)が363万円。フォルクスワーゲン ティグアン ライストン(4WD)が385万円ということを考えても、4WDのKugaがいかに戦略的な価格なのかがわかる。

4WDシステムには、第四世代のハルデックスインテリジェントAWDが採用され、エンジントルクや回転数、速度、スロットルの位置、ステアリングホイールの角度、ヨーレイト、制動システム、全車輪の回転速度などを瞬時に判断し、後輪に最大50%のトルクを配分。加えて、ABSやESP、TCS、エンジンブレーキによるスリップや横滑りを防止するEDC(エンジン・ドラッグトルク・コントロール)も統合制御している。

また、発進時は最大10%のトルクを後輪に伝え、ロスなく最大グリップが得られるようになっている。

安全デバイスとしては、CBC(コーナー・ブレーキ・コントロール)やBLD(ブレーキ・ロック・デファレンシャル)が標準装備され、4WDシステムが前後を、BLDは左右のトルク配分をコントロールする。

試乗モデルのタイタニウムには、バイキセノンヘッドランプや本革シート、パノラミックルーフなどが標準装備される。そのパノラミックルーフのガラス面積は長さ1050mm×幅785mmでこのセグメントでは最大のもの。さらにアレルギー発症のリスクを最小限に抑えたインテリアを採用し、ドイツの独立検査機関からTOP PROOFの認証も受けているのも特筆すべきポイントだろう。

試乗モデルのタイタニウムには、バイキセノンヘッドランプや本革シート、パノラミックルーフなどが標準装備される。

アップダウンのあるコースが楽しいと思える内容

試乗に設定されていたのは主にアップダウンのあるワインディングを走るコース。これだけでも、フォードのKugaに対する自信が見てとれる。

実際に体感した走りも最高出力200ps/最大トルク320Nmのパワースペックにひ弱さを感じる場面はなく、2.5L直5ターボも高回転域までスムーズに回りとても軽快な走りだ。コーナリング時の姿勢変化は大きいが、しっかりと路面を掴んでいることがドライバーに伝わってくるので安心してアクセルペダルを踏み込んでいける。

アップダウンのあるコースが楽しいと思えるSUVは多くないが、Kugaはそう思える出来映えだ。ただ、セレクトモードを使っている時に、メーター内のシフトポジションが遅れて表示されるところは違和感を感じた。

不満はほとんどないと言っていいKugaだが、やはり純正でナビは欲しい。Kugaのオーディオは独特の形をしているため後付けのナビをインストールすることで室内の雰囲気は一変してしまうからだ。最初から用意されているナビを使ってみたいと思ったのは私だけだろうか。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:村西一海)

エンジンはスタートボタンで始動、左側Aピラーにはサイドビューカメラが用意される。

フォード Kuga タイタニウム 主要諸元

●全長×全幅×全高:4445×1850×1715mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1670kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●排気量:2521cc
●最高出力:147kW(200ps)/6000rpm
●最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1600 -4000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:378万円(2010年当時)

© 株式会社モーターマガジン社