ぶらり散歩がおすすめ! 「上高地」 登らなくても極上の山気分が味わえる非日常リゾート

火山によってできあがった大正池。鏡のように水面に映る北アルプスが美しい(撮影:栗山ちほ)

日本有数の山岳リゾートであり北アルプスの登山口としても知られている長野県の上高地。2023年の来場者の数はコロナ禍前を上回る130万人超となり、今後はますますこの地の自然を求めてたくさんの観光客と登山客の来訪が期待されている。

そんな上高地には梓川に沿って複数のウォーキングコースが整備され、いずれも歩きやすくのんびり散策するのにぴったりだ。なかでも、河童橋周辺や大正池までを結ぶコースは、上高地らしさを味わいつつ手軽に“ぶらり散歩”が楽しめるエリアとなっている。

■まずは「上高地インフォメーションセンター」で情報収集

天気や安全に関する注意などさまざまな情報をここで入手

上高地の玄関口となるのが、上高地バスターミナル。ここからリゾートの散策に出かけるわけだが、まずはバスターミナルのすぐ隣にある「上高地インフォメーションセンター」に立ち寄ってみよう。この施設では、上高地の自然や散策コース、登山情報、宿泊施設など多岐にわたる情報を提供しており、北アルプスや上高地のマップやジオラマなども展示され、地形や位置関係も把握できる。

散策マップも100円で入手でき、雨具や緊急の登山用の小物なども販売している。散策前の情報収集や足りない装備を揃えるのに最適な施設だ。

また、館内には休憩スペースがあり、2階のギャラリーでは写真展なども開催している。帰りのバスを待つ間に立ち寄るのもおすすめだ。

展示されているジオラマは上高地の地形や山の分布が一目でわかる

■本格的なアウトドアグッズが手に入る

幅広いアウトドア商品が手に入り、朝6時から営業というのがありがたい

「上高地インフォメーションセンター」の向かい側、上高地観光センター2階の「上高地食堂」内には、アウトドアブランドのコロンビアのショップ「Columbia FIELD STORE 上高地」が営業している。レインウェアや防寒着、バックパック、トレッキングシューズ、帽子やグローブにいたるまで、トレッキング用具がひと通り揃い、忘れ物をしたときや買い足したいものがあるときに便利だ。

また、上高地をイメージしたデザインのTシャツなど、このショップでしか手に入らない限定アイテムも販売。2024年のシーズンから、高機能アウトドアブランド「マウンテンハードウェア」の取り扱いもスタートし、品揃えがますます充実している。

カジュアルなトレッキングシューズや雨具など、上高地散策がより快適になるアイテムが揃う

■地元グルメも味わえる

上高地は散策途中の休憩にぴったりなレストランやカフェが充実。「Columbia FIELD STORE 上高地」を併設している「上高地食堂」もそのひとつだ。ボリューム満点の山賊焼(さんぞくやき)をはじめ、信州サーモン、信州産豚肉のとんかつなどの地元名物を取り入れた料理が多く、地ビールや地酒のメニューも豊富。また、早朝から営業しており和食と洋食の朝定食も食べられる。

このほか、優雅なリゾートホテルで味わう洋食や、囲炉裏でじっくり焼きあげた岩魚、信州の果実を使ったスイーツなど、上高地に点在するさまざまなレストランやカフェごとに自慢のメニューが揃っている。

複数の売店や手荷物預かり所が入った複合施設「上高地観光センター」。「上高地食堂」があるのはその2階

■「河童橋」は必須の立ち寄りスポット

梓川の清流に架かる「河童橋」は上高地のシンボル。上高地で最も活気あるエリアだ

上高地は、北アルプスから流れ出る梓川に沿って広がる山岳リゾート。標高1,500mに位置し、連なる3,000m級の山々、清らかな川の流れ、透明度の高い池や湿原などが点在する山岳景勝地だ。

最も有名なスポットは梓川に架かる「河童橋」だろう。上高地バスターミナルから歩いて3分ほどの距離にあるこの橋は、梓川に架かる木製の吊り橋。背景に穂高連峰が広がる絶好のビュースポットであり、川の下流を向くと焼岳の姿も見える。周囲には山小屋やレストラン、売店などが集まり、リゾートの中心となる場所だ。ここを拠点にさまざまな散策ルートに出かけよう。

上高地では野生のニホンザルとよく遭遇する。適切な距離を保って観察しよう

■上高地をより深く知れる「上高地ビジターセンター」

上高地全域がわかるイラストが飾られた「上高地ビジターセンター」のインフォメーション

河童橋のたもとから梓川の左岸を少し進むと「上高地ビジターセンター」がある。この施設では上高地の自然に関する展示や映像を上映し、植物や、動物・鳥・昆虫などの生き物、地形や地質といった幅広い分野について情報発信している。展示にはかみ砕いた説明文が添えられているため理解を深めやすく、あれこれ見て回るのが楽しい。

施設内のミュージアムショップには、花や野鳥の本、オリジナルのバンダナや手ぬぐい、野鳥のぬいぐるみなど、上高地にまつわるグッズが揃ううえにデザインもいい。また、建物の入り口には2代前の河童橋の欄干の一部が保存されており、これも見逃せない。

自然観察のガイドウォーク(有料)も開催してるので、案内とともに上高地の自然を体験するのもおすすめだ。

岩石の展示コーナー。難しい説明とともに「簡単に言うと……」とかみ砕いた説明が添えられている

■梓川の両岸の散策コースをめぐる

河童橋周辺の梓川右岸コースは山小屋やレストランなどが点在していて活気がある

上高地の散策コースは梓川の左岸と右岸の両方にあり、どちらのコースも歩きやすく整備されている。河童橋から上流の横尾まで向かうルートはトレッキングシューズ推奨だが、下流の大正池に至るコースはスニーカーでもOKとされるエリア。本格的な登山ではなく、「上高地をちょっと散策したい」というなら河童橋から大正池を結ぶルートがおすすめだ。

河童橋から梓川右岸・左岸どちらのコースを下っても田代橋で合流し、右岸は山小屋やレストランが点在し、途中で有名スポットのウェストン碑も通る。これに対して、左岸コースは焼岳を正面に眺めながらカラマツ林を下っていく景観美を楽しみながら歩けるルートだ。

カラマツ林の静かな道が延びる梓川左岸コース

■大正池の絶景も必見

大正池から眺める雄々しい焼岳。上流側を向くと穂高連峰が見える

河童橋から田代橋までの所要時間は、左岸も右岸も歩いて30分ほどの距離。田代橋で折り返して河童橋に戻ってもいいが、もう少し足を延ばして大正池まで歩くと絶景と出合える。大正池は大正4(1915)年に焼岳の噴火によって梓川がせきとめられ一夜にしてできあがったもの。水没した原生林が立ち枯れの木々として今でも残っている。そして、水鏡のような水面に穂高連峰と焼岳が逆さに移る景観が神秘的だ。

河童橋から大正池までの距離は約4km。片道約80分。往復3時間ほどなので朝から歩きだせばちょうどお昼どきに河童橋まで戻って来られる。上高地を散策しながら、景観、グルメ、ショッピングと自然あふれる山岳リゾートをたっぷり満喫していこう。

© 株式会社双葉社