妹の結婚を嫌がらせで破談にした「ニートの息子」を追い出したい…絶縁できるのか?

写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

「ニートの息子」についての悩みが、弁護士ドットコムに寄せられています。相談者には、もう成人した息子がいますが、「ニートで、人に迷惑をかけるのが生きがいという人格」だそうです。

そのせいか、息子は妹である娘がお見合いしたことが気に入らず、デートしているところに押しかけ、破談させたことも。息子は「自分にもお見合いをあっせんしろ」と主張していたそうです。

相談者と娘は怒り心頭で、「合法的に家から息子を退去させたい」といいます。また、息子によって破談になったことについて、損害賠償請求もしたいそうです。

「現実的には払えないでしょうが、将来、自分たちの遺産を相続させる際に遺産とその慰謝料と相殺させたい」と考えています。

実質的な息子との「絶縁」。法的にはどこまで実現できるのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。

●息子に「退去請求」、あるいは家屋明け渡しの調停申し立て

相談者であるご両親はご心痛のことと思います。あまりないケースですが、私見を述べさせてもらいます。

まず、娘さんの結婚を破談にした行為について、娘さんは息子に対して損害賠償請求(慰謝料請求)は可能と思います。ただ、損害額はそれほど多額にはならないでしょう。そして、息子がニートであることからすると現実的には回収は難しいと思います。

そうすると、困難は伴いますが、家からの退去請求の方が現実的だと思います。

前提として、家の所有者である相談者と息子との間には、使用貸借契約や賃貸借契約はなく、相談者が事実上使用を黙認しているだけと思います。

その場合、どうしたらよいかといいますと、方法としては、まず話し合いですが、困難な場合は弁護士に委任して退去請求をしてもらうか、裁判所に家屋明け渡しの調停の申し立てや訴訟を提起することになると思います。

●「ニート」では相続人廃除にはできない

ところで、実質的な息子との「絶縁」は、法的にはどこまで実現できるのでしょうか。まずは、現行法のもとでは「勘当」といった制度はありません。

次に相続人に遺産を相続させたくない時のために、「相続人廃除」という制度はありますが、「ニートで、人に迷惑をかけるのが生きがいという人格」などの理由での相続人廃除は難しいと思います。

そうすると、遺言を作成し、遺言内容として「全遺産を娘に相続させる」といった方法が現実的だと思います。その中で、とりあえず、「息子を相続人から廃除する」といった内容も盛り込んでよいと思いますが、息子側から遺留分侵害額請求をされるなどして、実際上は難しいと思います。

また、妹の結婚話を破談させたことについての慰謝料と将来の遺産を相殺することも法的に可能でしょう。

しかしながら、慰謝料額は少額でしょうし、消滅時効の可能性もあるので、現実的な方法とは言えないと思います。できれば、前述した内容を、「公正証書遺言」にしておいた方が最善でしょう。

現在はニートで人に迷惑をかけるのが生きがいという息子さんですが、早く立ち直って 家族と仲良く生活できることを期待しています。

【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/

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