津波警報で見えた観光立県の課題「外国人観光客への情報伝達」

1年を通して多くの観光客が訪れる沖縄では、災害時、住民だけでなく観光客のケアも重要となる。とりわけ言葉の壁がある外国人観光客に対する情報発信について現状を取材した。

津波警報で見えてきた課題「外国人観光客への情報伝達」

4月3日に沖縄地方に発表された津波警報。車での避難にともなう渋滞が県内各地で発生し、課題として挙げられた一方で、こんな課題もあったー

■那覇空港 外国人観光客
Q. アナウンスは日本語のみですが理解できましたか?
「NO!何も。何か情報がないか、聞いてまわるしかないんだ」

4月、今回の津波警報発表を機に発足した勉強会が那覇市で開かれた。参加したのは、メインストリートである国際通り周辺の事業者などで構成された「なはまちなか災害情報支援チーム」のメンバー。かねてからの課題だった、観光地での災害情報発信について話し合った。

発起人のひとり、第一牧志公設市場の粟國智光組合長は、特に外国人観光客への情報発信に危機感を覚えていた。

■第一牧志公設市場 粟國智光組合長
(津波警報当時)「市場事業者のほうから、外国人観光客が数多く市場の周辺にいます。外国人観光客に伝わってませんよ、と話があった。早く外国人観光客に対応しないといけないのではないかと」

公設市場からの放送は周辺地域に配されたスピーカーで聞くことができ、情報発信の役割が期待されていた。しかし市場には、災害情報を英語で伝える原稿やマニュアルはなく、市の防災無線も日本語のみで呼び掛けた。そんなとき、とっさの判断で、英語で情報を発信した人がいた。

■奥間トリーシャさん
「Attention.TSUNAMI warning has been issued・・・」

市場近くの飲食店で働く、奥間トリーシャさん。ハワイ出身の日系人で、災害情報を発信するラジオパーソナリティーとして国内外で活動した経験があった。津波警報が発表された当時、気象庁から出されている情報を集め、2時間以上呼びかけを続けた。

■奥間トリーシャさん
「必ずしもみんながwifiを、ポータブルなものをもっていて常にネットにアクセスできるわけではないので、まずはこういった警報や注意報が発表されていることを知ってもらうことが、一番最初に大切なんじゃないかな」
「海外からの方だと、場所、どこどこの公園と言われても、土地勘がない」

粟國組合長さんとトリーシャさんは今、外国人観光客へ伝わる英語の災害原稿を製作している。

■奥間トリーシャさん
「これをさらにシンプルイングリッシュっていう、英語がネイティブじゃないけど日本語も話せない、外国語圏の方が分かるようにする」

いかに「伝えるか」 やさしい”日本語”での発信も大切

多くの人へ情報を伝えるためにはどうすればいいか。勉強会では、外国人観光客だけでなく、沖縄に住む外国人にも届くようにと、”やさしい日本語”での情報発信を、という提言も出てきた。

■沖縄ネパール友好協会 オジャ・ラックスマン幹事長
「ゆっくり話す、ある漢字に振り仮名を書く、それがやさしい日本語だと思っている方々がおられますが、実際にはそうではありません。例えば、「高台に逃げてください」という。高台とは高いところですよね。「高いところに逃げてください」「避難してください」というのも「逃げてください」がわかりやすい」

議論は2時間にわたって交わされ、これまで見過ごされてきた課題を共有し、多角的に考える機会となった。

■第一牧志公設市場 粟國智光組合長
「今回の津波警報というのが、本当に実践型の訓練だった」「今日でおしまいじゃなくて、今後どうしていくのか、ということを続けていければ」

言語の壁を越えて、命を守るための情報を発信するためには、どうすればいいのか。市場周辺の事業者が協力し合いながら話し合いが進められている。
(取材:仲村美涼)

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