「和歌山満喫わくわくパス」の価格と買い方、使い方。破格だけれど、しくみに注意

JR西日本が「和歌山満喫わくわくパス」を発売します。「聖地リゾート!和歌山キャンペーン」にあわせた商品です。とてもお得ですが、しくみはちょっと複雑です。

「KANSAI MaaS」専用商品

「和歌山満喫わくわくパス」は、大阪近郊から和歌山エリアのJR線乗り放題と、和歌山エリアの私鉄の鉄道・バスの企画乗車券、観光施設の入館券などがセットになった周遊パスです。正確には、「(ICOCAでGO)和歌山満喫わくわくパス」という名称です。

「KANSAI MaaS」専用商品で、購入するには、KANSAI MaaSアプリをインストールしたスマートフォンが必要です。

みどりの窓口や券売機、e5489では発売しません。購入はスマートフォンのみからで、JR線の利用にはKANSAI MaaSアプリにICOCA番号を登録した ICOCAが必要です。

画像:JR西日本プレスリリース## フリーエリア

「和歌山満喫わくわくパス」のフリーエリア(自由周遊区間)は下図の通りです。

和歌山県全域にくわえ、京阪神付近までがフリーエリアに含まれています。東は草津と柘植、西は明石、北は亀岡、新三田までがフリーエリアです。

JR線は普通・快速列車のみ乗車できます。特急列車は別途特急料金を支払えば乗車できます。新幹線は乗車できません(運賃も無効)。

画像:JR西日本プレスリリース## セット内容

JRのフリーエリアにくわえ、和歌山県内の私鉄の鉄道・バスの企画乗車券がセットになっています。

・南海電鉄 高野山・世界遺産きっぷ(南海電鉄橋本~高野山間と、南海りんかんバス、高野山内バスの2日乗車券。立里線、高野・竜神線・高野・丹生都比売線除く)
・和歌山電鐵 貴志川線1日乗車券
・紀州鉄道 3Day乗車券
・龍神バス 熊野本宮線3日間フリー乗車券(※系統番号80.81.84.85のみ利用可能)
・明光バス 白浜とくとく3日フリー乗車券
・熊野御坊南海 バス悠遊フリー2日乗車券

高野山へのアプローチと、和歌山エリアの主要観光地のバスが乗り放題になる形です。

観光施設としては、高野山デジタルミュージアム鑑賞券、白浜海中展望塔入場券、紀の松島めぐりAコース乗船券も含まれています。

「高野山・世界遺産きっぷ」「貴志川線1日乗車券」「悠遊フリー2日乗車券」の利用には窓口での引換が必要です。それ以外は、アプリ画面提示で利用できます。

価格は3日間で7,800円で、利用期間は2024年7月1日~2024年10月2日です。発売は6月1日から9月30日までで、利用当日にも購入できます。

画像:JR西日本プレスリリース## 「和歌山満喫わくわくパス」の概要

「(ICOCAでGO)和歌山満喫わくわくパス」の概要は以下の通りです。

■「(ICOCAでGO)和歌山満喫わくわくパス」

●発売期間
2024年6月1日~2024年9月30日
※利用日の1ヶ月前から当日まで発売。

●利用期間
2024年7月1日~2024年10月2日
※2024年10月1日、2日ご利用開始分の設定はありません。

●有効期間
3日間

●価格
7,800円(大人用のみ)

●発売箇所
「KANSAI MaaS」内

単純往復でもお得なきっぷ

内容をみてみると、高野山、白浜、熊野、那智勝浦といった和歌山県を代表する観光地を、公共交通機関を使って周遊することができるようになっています。ただし、高野山と熊野を結ぶ「聖地巡礼バス」は含まれていません。

JR線は大阪近郊が広く含まれているのが驚きです。和歌山観光の前後に、大阪近郊の乗り歩きもできるようになっています。

価格は3日間で7,800円。大阪~白浜の運賃が3,080円、大阪~串本が4,070円、大阪~新宮が4,840円なので、大阪起点で白浜単純往復では元が取れませんが、串本まで往復すればそれだけでお得。新宮往復ならお釣りが来るほどの格安きっぷです。

JRを白浜までの利用でも、セットとなっているバスのフリーきっぷなどを使うのであれば、十分に元が取れます。

JR線はポイント還元

「和歌山満喫わくわくパス」の使い方ですが、JR線は「KANSAI MaaS」に登録した ICOCAを改札にタッチして利用します。セットのチケットは、スマホ画面提示で利用できるものと、チケットの引き替えが必要なものがあります。

注意点として、JR線に乗る際は、ICOCAから運賃が引かれてしまいます。JR線フリーエリア(自由周遊区間)の乗車分は、後日、WESTERポイント(チャージ専用)で還元するしくみです。

これのしくみは、2023年に発売された「神戸・姫路デジタルパス」で初めて導入されました。JR西日本エリアに住んでいて、日頃からICOCAを使っている人には問題ありませんが、エリア外からの旅行者で、ふだんICOCAを使っていない人は、ICOCAを用意することから始めなければなりません。

ICOCA自体は、関西以外(首都圏や東海地区など)でも使えますので、WESTERポイントをICOCAにチャージすることで、エリア外で使用することもできます。ただ、ふだんSuicaやTOICA、PiTaPaなどを使っている人には、煩わしいでしょう。

ということで、事実上、関西エリア在住のJR西日本利用者向けのチケットです。ありていにいえば、「関西人」がターゲットでしょう。

注意点がいっぱい

きっぷのしくみ上、「和歌山満喫わくわくパス」には、注意点がいっぱいあります。

まず、JR線フリーエリア(自由周遊区間)をまたいで利用した場合は、WESTERポイントが付与されません。

たとえば、姫路から利用する場合、明石駅で下車して改札口を入りなおさなければならない、ということです。それを忘れると、フリーエリア内でも運賃の実費がかかってしまいます。

ただ、大阪近郊のフリーエリアが広く取られているので、大阪近郊の主要エリアを発地とする場合は、とくに問題はありません。

というよりも、大阪近郊のフリーエリアが広いのは、京阪神エリアから和歌山エリアまで改札口を入りなおさずに行けるようにするためとみられます。

「神戸・姫路デジタルパス」はフリーエリアが兵庫県に限定されていて、県外からの利用がしにくかったのですが、「和歌山満喫わくわくパス」では、その問題を解決するために、大阪近郊のフリーエリアを広く取ったのでしょう。

200kmを超えて利用できない

ICOCAには、営業キロ200kmを超えて利用できないというルールがあります。このルールは、「和歌山満喫わくわくパス」にも適用されます。

ただし、大阪近郊区間内の駅と特急くろしお号の停車駅相互間を利用する場合、このルールは適用されません。したがって、201km以上連続して乗った場合は、くろしお号の停車駅で改札を出なければなりません。

残高不足に注意

ICOCAの残高不足にも注意が必要です。

降車時にICOCA内残額が不足している場合、のりこし精算機でチャージして、自動改札機を利用すればWESTERポイント付与の対象となります。

ただし、のりこし精算機を使わず、改札窓口などで現金で精算したり、ICOCA残高から駅係員の手作業による減額精算をすると、WESTERポイント付与対象外となります。つまり、運賃の実費を引かれておしまいです。

窓口で係員の手を煩わせてはいけない、というルールですが、問題は、和歌山エリアにはのりこし精算機が無い駅が多数ある、ということです。そして、どの駅に精算機があるかは、公式サイトを見ても確認できません。

精算機のない駅で降りて残高が不足すると、WESTERポイント還元を受ける術はなくなります。防御策は、あらかじめ十分な金額をチャージするほかありません。つまり、事前に多めにチャージして利用することをおすすめします。

なお、モバイルICOCAやApplePayのICOCAは、ICOCAアプリ上でチャージをすれば、ポイント付与対象となります。

JR以外でICOCAを使ってはいけない

WESTERポイント還元が受けられるのは、フリーエリアのJR線の乗車に対してのみです。JR以外の和歌山県内のバス・鉄道路線をICOCAで乗ってしまった場合は、還元の対象になりません。

つまり、セットに含まれている区間のバス路線にIC端末があっても、ICOCAでタッチしてしてはいけません。セットのチケットの券面(画面)提示で乗車しなければならないのです。お間違えなきよう。

ということで、破格なパスであることは確かですが、使いこなすには十分な注意が必要です。(鎌倉淳)

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