「別れるならネックレス捨てろ」娘が誤って投げた車の鍵「とにかく帰っておいで」父は釣り竿を手に川へ向かった

川底から拾い上げた車のキー(木船田ヒロマルさん提供)

「回収したぜ…。娘が彼氏と別れ話になり、『やったネックレス今この場で川に捨てろ』と(彼氏に)言われ、川に投げたらチェーンが絡んで、一緒に川の中に飛んでった貸してた僕の車の鍵を…」。娘が誤って川に投げ捨てた車の鍵を、回収した父親のX(旧Twitter)の投稿が話題です。

どうやって川の中から鍵を回収したのでしょう。投稿主の木船田ヒロマル(@hiromaru712)さんに聞きました。

娘さんが買ってくれた思い出のキーホルダーが付いた鍵(木船田ヒロマルさん提供)

ー車の鍵が川に投げた時の状況を教えてください。

「4月28日深夜に娘からLINE通話が来て、何事かと思ったら『車の鍵を川に落とした』『回収しようとしてるけど上手くいかない』みたいな話でした。『夜の川は危ないから、とにかく帰っておいで』とその時は家に帰らせたんです」

「後日娘に、どんな川のどの辺か、どんな事情でそんな事態になったのか聴いたら、彼氏と別れたら『ネックレスを捨てろ』と言われ、サイドスローで勢い付けて投げようとした所、反対の手に持っていた車の鍵に巻きついて、一緒に川へ飛んで行ったと」

車のキーを投げ込んでしまった川(木船田ヒロマルさん提供)

ー川ポチャから11日後の5月9日、娘さんと川へ捜索に向かいました。

「娘と休みが合ったので、100円ショップで買った突っ張り棒、たこ糸、マグネットフックを組み合わせて作った即席釣り竿で回収を試みようと、娘と共に娘運転の車で現地に向かいました」

川底の鍵を探したマグネット釣り竿(木船田ヒロマルさん提供)

川の水深は浅く、川底に車の鍵が沈んでいるのが見えました。木船田さんはマグネット釣り竿を振るって回収を試みましたが、強風の中、岩だらけの川底にピンポイントで投げ込むのは容易ではありませんでした。すると事情を知った近所のおじさんが「あと1時間もしたら潮が引いて、川底歩けるようになるで」と教えてくれました。

「一度自宅まで帰り、長靴とクロックス、タオル、マジックハンドを用意して取って返した所、その方のいう通り川底が見えるほど水が引いていて、長靴で川底を歩き、手で拾うことができました」

潮が引くと川底が露出します(木船田ヒロマルさん提供)

木船田さんには、鍵をどうしても回収したい理由がありました。

「家にスペアキーを保管していたので、実費をかけて作り直してもよかったのですが、川に沈んだキーホルダーが、娘が修学旅行で買って来てくれたお土産の品だったので、なんとか回収したかったんですよね」

娘さんが買ってくれた思い出のキーホルダー(木船田ヒロマルさん提供)

ZAKU(ザク)のイラストが描かれ、ジオン軍のエンブレムが刻印されたキーホルダーは、ガンダムを愛する木船田さんの好みに合わせて娘さんが買ってくれた思い出の品でした。

「買ってくれたのはもう6〜7年前になるでしょうか。正直そこかしこ壊れてはいるのですが、粗末にする気になれずに使い続けております」

「なので、キーホルダーを回収できた時はとても達成感がありました。諦めたら失われていた思い出の品を再びこの手にできたのですから」

ゼムクリップの針金で補修したキーホルダー(木船田ヒロマルさん提供)

木船田さんはガンプラをいじってきた工具を駆使し、キーホルダーを修理し、水没して錆(さ)びたO(オー)リングや金具を交換しました。

「破損箇所にヒモ状のものが絡みやすいことが今回の騒動でわかったので、ゼムクリップの針金で補修し、似たようなトラブルを防ぎたいと思います」

11日水に漬かっていたリモコンキーは、通電させないまま、乾燥剤を入れて密封して乾かしたところ、無事作動しました。

シリカゲルの粉を入れた袋に入れて乾燥させます(木船田ヒロマルさん提供)

「娘が川に落ちるようなこともなく、鍵も思い出のキーホルダーも結果的に回収できて満足しています」

◇ ◇

思い出のキーホルダーが見つかり、鍵は復活。「問題はこの特級呪物だよな…」と木船田さんが処遇を決めあぐねていたのは娘と元彼のペアネックレス。結局「パパに一任する」となり、木船田さんは消毒の上、ガラス瓶に封印しました。

回収したネックレス(木船田ヒロマルさん提供)
回収したネックレス(木船田ヒロマルさん提供)

木船田ヒロマルさんはカクヨムxBOOK☆WALKERインディーズ小説コンテスト受賞作「トリロバイタル・ライターズ」でデビューし、受賞作は電子小説サイトBOOK☆WALKERで販売しています。

(まいどなニュース・伊藤 大介)

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