B2プレーオフ 滋賀レイクス対山形ワイヴァンズの見どころ――走る展開なら滋賀、走らせない展開なら山形

5月11日(土)に滋賀ダイハツアリーナで開幕する「日本生命 B2 PLAYOFFS 2023-24」のセミファイナル、滋賀レイクス対山形ワイヴァンズの見どころをまとめる。滋賀はB1から降格してきた直後の今レギュラーシーズンを西地区チャンピオンとして終え、このシリーズを勝ち抜いて1シーズンでB1返り咲きを目指す。クォーターファイナルでライジングゼファー福岡を破った山形は、来シーズンのB1ライセンス交付を受けていないため、勝っても昇格はない。よってこのシリーズは単純な「B1昇格決定戦」とは異なる。滋賀は仮にこのシリーズを落とした場合にも、3位決定戦でもう一方のセミファイナルの敗者と3位決定シリーズを戦って、そこで勝ち抜けばB1昇格を決められる。

ティップオフはGAME1と翌12日(日)のGAME2が14:00、1勝1敗のタイになった場合に開催されるGAME3は、13日(月)の19:00だ。

44勝16敗、勝率.733の成績で西地区を制した滋賀は、31勝29敗、勝率.517で東地区3位だった山形を今シーズン4度倒しており、一度も敗れていない。4試合とも滋賀が85得点以上を挙げ、山形は3度80点未満に抑えられた。普通に考えれば、滋賀にとって山形は組みしやすい相手とも見えるかもしれない。ただし山形は、B1昇格を目指していた福岡に対しアップセットを現実のものとしてここにいる。やはりプレーオフは何が起こるかわからないということを、両チームとも強く認識して臨まなければならないだろう。

山形は持ち味の3Pショットを打った後が勝負
両者の対戦での注目ポイントは、滋賀のスピーディーなプレーメイクを山形がどのようにしてスローダウンさせるかという点に見つけることができる。以下、直接対決での試合結果と両チームのアシスト数を並べてみよう(カッコ内が両チームのアシスト数)。

12月2日 滋賀85-75山形(22-17)
12月3日 滋賀88-74山形(23-16)
2月17日 滋賀92-76山形(26-15)
2月18日 滋賀107-92山形(29-17)

滋賀はレギュラーシーズンでアシスト数がリーグ2位の平均21.8本だったが、山形に対しては平均25.0とアベレージを大幅に上回っていた。山形は、持ち味としている3Pシューティングでは最初の対戦から35.0%(7/20)、32.3%(10/31)、35.3%(12/34)、50.0%(12/24)とそこそこ以上の結果を得られている。ターンオーバー数もリーグ最少の10.3という数字とほぼ同レベルで、4試合の平均は10.5にとどまっているので、オフェンス面では自分たちらしさを一定以上表現していた。しかし、滋賀のオフェンスに対するディフェンス面の準備ができていなかった、あるいは準備したことが遂行できなかったために敗れたと分析ができそうだ。

こうした傾向を変えるために何がカギとなるかを挙げるのは難しいが、オフェンス・リバウンドはその一つになるだろう。山形がたとえターンオーバーを抑えてしっかりしたショットを放ったとしても、半分以上はミスになる。滋賀はそのこぼれ球を拾って速攻で得点というトランジションの部分で、4試合とも山形を上回っているのだ。アウトナンバーの状態でフィニッシュに行く回数が増えるので、アシストが増えていると分析できる。

直接対決における滋賀のディフェンス・リバウンドと速攻での得点(FBP)

第1戦 31→FBP24
第2戦 31→FBP17
第3戦 39→FBP15
第4戦 19→FBP16

カギはガード陣の奮闘
滋賀はFBPがリーグ1位の平均16.3だが、ここでも山形戦はそのデータと同等以上だ。3Pショットが多い山形のオフェンスはロングリバウンドも増えるので、自らがオフェンス・リバウンドを奪うのが難しいことはイメージしやすいが、そこを踏ん張って滋賀の速攻を止めなければ、山形の勝利は見えてこないのではないだろうか。山形は滋賀との4試合で平均6.5本のオフェンス・リバウンドしかつかめていない。上記の滋賀のディフェンス・リバウンドと併せて考えると、山形のミスショットの82.2%を滋賀が拾っていることになり、山形はトランジションからハーフコートでのディフェンスを確立できないうちに滋賀に攻め込まれてしまっているのだ。

ここはチームのスタイルなので、強みと弱みをいかにして打ち消し合うかということになる。山形はより高い高確率の3Pショットを作る必要があり、それは4度目の直接対決で50%の確率を残せたことを見ても、短期決戦では特に可能性がある。それと並行して、ハーフコートゲームに持ち込むためのトランジション・ディフェンスをどのようにして遂行できるか。

逆に滋賀が早い展開に持ち込むことができれば、このシリーズでB1昇格を決めるチャンスは膨らむ。走り合いになったら、山形の3Pショットがよほどの確率で決まらない限り、滋賀の優位は動かない。両者の対決はそんなシリーズになるのではないだろうか。

キープレーヤーとしては、滋賀では得点力のある2人のガード、キーファー・ラベナと湧川勇人を挙げたい。リバウンドに絡むことも含め、2人が縦横無尽に走る展開は滋賀のゲームに違いない。闘魂が必要な山形では、村上慎也のリーダーシップがどんな形で見られるか。マイケル・フィンケのショットメイクも、福岡とのシリーズでは本領発揮とまではいかなかったので、奮起に期待だ。

滋賀レイクスのキーファー・ラベナ(上)、山形ワイヴァンズの村上慎也(下)をはじめ、両チームのガード陣はシリーズの行方のカギを握る存在だ(写真/©B.LEAGUE)

冒頭で触れたように、単純なB1昇格決定戦ではないこのシリーズが、両チームの心理に微妙な変化を及ぼす可能性も、完全に否定することはできない。何が起こるかわからないプレーオフ。大詰めの展開は目が離せない。

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