対面イベントに1800人が殺到! 超特急・草川拓弥の1stフォトブック『辻褄』の独自性

2024年4月8日に発売された『辻褄』は、メインダンサー&バックボーカルグループ・超特急のメンバーであり俳優としても躍進中の、草川拓弥の1stフォトブックだ。29歳の誕生日を迎えた11月24日から、東京、山梨、静岡などで撮影を行った。4月29日にHMV&BOOKS SHIBUYAで行われたイベント「しおりはさみ会」記者会見での発言を引用しながら、草川の「らしさ」やこだわりが高い純度で込められたこの本の独自性に迫ってみたい(※筆者は本書に収録されているインタビューの聞き手と構成を担当)。

まず目を惹くのはサイズ感(B6判変形)だ。文庫本や新書判に近いサイズで、212ページあるがとにかく軽く、カバーがないのでカジュアルに持ち歩ける。「携帯やタブレットではなくなるべく単行本を買って、紙で読むようにしています」と言うように本が好きな草川は、本作のフォトグラファー·前康輔氏の写真集『NEW過去』を手に取り、そのサイズ感や質感に魅了されたという。「“ザ・写真集”みたいなものではなく、日常に溶け込むような“作品”にしたいと思い」、前氏に撮影を、『NEW過去』の吉田昌平氏(白い立体)にブックデザインを依頼し、この仕様となった。

前氏が捉えた草川の写真はどれも自然体で、その最たるものが、草川本人が選んだお気に入りの1枚だ。ふだんメディアに出るときは当然ヘアメイクやスタイリングをばっちり決めているが、本作ではすっぴんや髭面、私服のカットも多数収録。なかでももっとも無精髭が目立つこのカットについて、「この『辻褄』では、作り込むことを一切せず、リアルな僕を出したかったんです。みなさんが想像される、アイドル・超特急のタクヤとしての姿とこのカットにはギャップがあるので、みなさん驚かれると思います」と満足そうだ。

『辻褄』のインタビューは、草川があらかじめ書いたロジックツリーを手がかりに、草川拓弥のパーソナリティーを深く紐解くという試みだった。マップについてあらかた聞き終わったところでファンに伝えたいことを尋ねると、「矛盾があるし、つじつまが合ってないなと自分でも思ってます。みなさんそれぞれが思う『僕』を教えてほしい」という返答があり、そこから『辻褄』というタイトルと「#つじつまが合わない草川拓弥」というハッシュタグが誕生した。「マネージャーさんは『ひらがなやカタカナの方がいいんじゃない?』という意見でしたが、僕は漢字がいいなと思ったのでこうなりました」という経緯があったという。漢字2文字の題名が付けられたことで、この単行本サイズのフォトブックが一気に文学性を帯びたことは間違いない。

自身の「つじつまが合っていない」部分については、「このお仕事をさせていただく上で、いろんな人とのコミュニケーションを大事にしたいと思っています。それなのに人見知りなので自分から話しかけられず、コミュニケーションが取れないところがあります」という説明があった。この理想と現実の相容れなさは本人ははがゆいかもしれないが、親近感のある人間味として多くのファンから歓迎されているようだ。草川がお気に入りとして挙げた写真も、パブリックイメージと素の自分のつじつまの合わなさを象徴しているといえる。その多面性こそが彼の大きな魅力だろう。

「しおりはさみ会」は、『辻褄』に関連して行われた唯一の対面イベントだ。そもそもこのフォトブックには通常特典としてしおり(6種類からランダムで1枚)が付いてくる。草川は「僕がひねくれているというか、みなさんがやっていることをやりたくないというか(笑)。単行本サイズなので、『本に必要なものはなんだろう?』という発想から、しおりをつけました」と説明する。しおりはさみ会については、「握手会や、ポストカードにサインを書いて渡すイベントなどいろいろやらせていただきましたが、しおりを渡したことはないし、周囲でやられた方もいないだろうなと思ったので」と語る。

しおりはさみ会では、参加者が『辻褄』で好きなページを開くと、草川が用意した3種の特別しおりの中から1枚を選んではさむ。イベントを控えた草川は、「たくさんあるカットの中でみなさんはどれが好きなのか? インタビューのページを希望する人もいるかも? と楽しみです。そんな余裕はないと思いますが、1番人気のカットを頭の中でカウントしたいです」と、ファンからのフィードバックを心から楽しみにしているようだった。

インタビュアーとしてこのフォトブックに関わった立場であるにも関わらず、「インタビューのページにしおりをはさむ人がいるかもしれない」という発想が一切なかったため、草川のその視点に驚かされた。しおりはさみ会ではインタビューページを開く方が何人か現れ、草川は「インタビュー来た! どこにはさむ?」と質問し、自分の発言のどこがそのファンに刺さったのかをきちんと確認しながらコミュニケーションを取っていた。ちなみに筆者が『辻褄』で一番好きなページは、湖でスワンボートを漕いでいる草川のカットが左右に1点ずつレイアウトされた見開きだ。2人の草川拓弥が笑顔で対話しているように見えるユーモラスな構図が、このフォトブックを通して自問自答する29歳の彼を凝縮しているように読み取れた。気になる方はぜひお手にとってご覧いただきたい。

© 株式会社blueprint