110番の家 3000カ所減少 茨城県内 23年度 個人や小規模店 高齢化の波直撃

「こどもを守る110番の家」の前を通る小学生=水戸市大町

茨城県内各地で子どもたちが緊急時に避難できる「こどもを守る110番の家」で、個人宅や小規模事業者の登録が減り始めている。チェーン店などの登録数は横ばいだが、個人宅などは今年3月末現在、前期比3000カ所超が減少。高齢化で更新を断られるケースも報告されており、取りまとめる市町村の教育委員会が対応に苦慮している。

こどもを守る110番の家は、1997年に兵庫県神戸市で起きた連続殺傷事件を契機に全国で運用が始まった。県内では99年7月に始まり、カンガルーの親子を描いた看板やステッカーなどが目印となっている。

登録を取りまとめるのは、企業が県警、個人宅などは各市町村の教育委員会やPTAで、学区内の通学路付近の家庭などにボランティアでの登録を呼びかけ、学校ホームページに登録場所を掲載したり、地図を配布したりして児童らに周知している。

県警によると、県内の登録は今年3月末現在、チェーン店などの企業が約1万1500カ所、個人宅や小規模事業者が約6万7500カ所の約7万9000カ所。前期比で約3400カ所減少しており、多くは個人宅・小規模事業者だった。

個人宅などが減少した理由について、県教委は学校の統廃合に伴う通学路変更による解除に加え、住民の高齢化による継続困難で登録を断られるケースが増えていることを挙げた。

同県水戸市内のクリーニング店の80代男性は、近くの小学校からの依頼で約20年にわたって登録。地域で子どもの見守り活動に取り組んできたが、「いつ店を閉めるか分からない状況。(110番の家も)やめなければならないだろう」と肩を落とす。

同市は個人宅などの登録減少を補うため、病院やコンビニに協力を呼びかけ、「何とか数を維持している状態」(市生活安全課)だ。同県那珂市では更新時に登録者と連絡が取れなくなることもあったという。

県警は毎年、企業の登録者に犯罪事例や子どもが駆け込んできた際の対応法などを学ぶ研修を実施。しかし、教委が取りまとめる個人宅などへの講習などはほとんど実施されていないのが実情だ。

県警によると、2023年度にあった子どもに対する声かけや付きまといなどの不審者情報は427件に上り、4年連続で増加した。

県警生活安全総務課は「企業や個人に関係なく、地域で足並みをそろえて子どもの安全を守る防犯活動に取り組みたい」としている。

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