翻弄される壱岐島民 昨年は対馬で論争 佐賀県玄海町の核ごみ文献調査

 九州電力玄海原発から北方の玄界灘に浮かぶ壱岐島。長崎県壱岐市南部は原発から半径30キロ圏内に入る。昨年は隣島の対馬市で、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査を巡る論争が巻き起こった。同市は調査を拒否したが、1年足らずで今度は佐賀県玄海町が受け入れを表明。1次産業への風評被害などを懸念する壱岐島民は安堵(あんど)から一転、再び翻弄(ほんろう)されている。
 昨年9月、対馬市議会が文献調査受け入れの請願を採択。比田勝尚喜市長はこれを拒否した。当時は対馬海峡側の壱岐市北部の漁師らが反対した。
 今回は本土側に位置する市南部の郷ノ浦町を中心に不安の声が上がる。ブリ漁やイカ釣りをする漁師の有浦徳実さん(62)は「核のごみを処理する施設ができるという悪いイメージが広がれば、この海域の魚の売れ行きに影響が出るかもしれない」と不安視する。
 島内には透明度が高い海水浴場が点在。同市は自然を生かした観光振興に力を入れる。県壱岐民宿協同組合の堺常道理事長(45)は「放射能漏れなどの事故が絶対ないとは言い切れない。何かがあれば観光にも少なからず影響が出る。周辺自治体のことも考えてほしい」と求める。
 篠原一生市長は文献調査について、「市民の安全安心、市の将来にとってさまざまな影響を考慮しなければならない」と指摘。最終処分場が隣接自治体に選定されることは「到底容認できない」とした。

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