バルサしか達成していない偉業…浦和がアベック王者に輝けた訳「クラブの力としても大きい」

浦和レディースが優勝【写真:徳原隆元】

浦和レディースが韓国の仁川を撃破してアジア女王に立った

三菱重工浦和レッズレディースは5月10日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレ大会「AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament(AWCC)」の決勝で仁川現代製鉄レッドエンジェルズ(韓国)と対戦。先制を許したものの2-1の逆転勝ちを収めた。下部組織出身選手の多いチームだけに、クラブが伝統として作り上げてきたアジアを制覇への思いを感じさせるものになった。

立ち上がりからボールを保持した浦和だが選手たちに少し緊張の色がみられる中で前半13分にミス絡みで失点してしまう。それでも前半22分、右サイドからMF栗島朱里が中央のMF伊藤美紀につなぐと、伊藤が最終ライン背後に浮き球パスを供給。抜け出した清家がワンバウンドのボールを右足ボレーで叩き込んだ。今季のWEリーグで10試合連続ゴールを含む17得点でランキング首位を独走しているエースがチームに漂う嫌なムードを払しょくした。その4分後にFW島田芽依のゴールで勝ち越した浦和は、そのまま1点差で勝利した。

このゲームに向け、浦和の選手たちからはアジア制覇への思いが多く聞かれた。その理由は男子チームがACLを3回優勝していることで、GK池田咲紀子は試合前日に「ずっといつか男女でACL優勝したいという思いは自分の中であった」として、「夢を叶えたい」という言葉を残していた。

そうした思い入れがチームに共有された理由の1つは、下部組織出身選手が多いことだろう。この決勝戦の登録23選手のうち、大学を経由して加入した選手なども含めれば実に16選手が下部組織で育ってきた。その1人であるMF塩越柚歩は島田の決勝ゴールをアシストしたが、「小さいころから浦和で育ってきて、男子がACLを戦っているのを見てきているので、浦和にいる限りはアジアを取らなきゃいけないというのは浦和レッズの一員として感じること」と話した。

また、同点ゴールの清家は「浦和レッズというクラブにとってのアジアナンバーワンというタイトルの大切さ、重要さは浦和育ちなので知っていたし、そういう決勝の舞台に立てる機会があったことが幸せ。そういう舞台で勝ったことは、自分の人生の宝物になった」と喜びを噛みしめた。

浦和の試合では、下部組織の選手たちがボールパーソンや運営の補助で関わることも多い。そうしたことも踏まえた団結力について、池田は「私たちが下部組織の時にトップの選手は憧れだった。それを運営などで間近で見られるのはいい場だと思うし、今の子たちにも何かを感じてもらいたいし、若手もそういう思いを持って入ってきてくれたと思う。身近で感じながら、いざ自分がという時もイメージもしやすいと思う。それが絆と言っていいのかは分からないけど、クラブの力としても大きいと思う」と話した。

そして、浦和駒場スタジアムに駆け付けたサポーターはアジア制覇の”経験”を持っていた。試合前からの声援の大きさに塩越は「アジアを戦うというのはこういうことなんだなと。今までは男子のACLしか見たことなかったので、サポーターの方々のアジアを取らせたいという気持ちもすごく伝わってきたし、一緒に戦うという気持ちを感じた」と話した。

これで浦和は女子もアジアの頂点に立ち、欧州でもFCバルセロナ(スペイン)しか達成していない男女大陸王者という快挙を成し遂げた。開幕して3シーズン目のWEリーグには様々な形のクラブもあるが、浦和の優勝には男女でチームを持つことと下部組織を充実させてきたクラブの強み、アジア制覇からの世界進出をサポーターと共に見据えてきたことの力が発揮されていた。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

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