佐賀県玄海町 核ごみ文献調査 「目に見えない恐怖」原発から8.3キロの鷹島 長崎・松浦

海の向こうに九州電力玄海原発が見える。「鷹島から、こんなにも目と鼻の先なんですよ」と吉澤さん=松浦市、鷹島モンゴル村

 佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査の受け入れを表明した10日、県内では九州電力玄海原発に最も近い松浦市鷹島町をはじめ、近隣自治体の住民らから不安や戸惑いの声が上がった。

 玄海原発から半径30キロ圏内は万一の事故時に緊急防護措置を準備する必要があり、県内では松浦、平戸、佐世保、壱岐各市が入る。このうち鷹島町は玄海原発から最短で8.3キロしか離れていない。
 鷹島の地区町会で会長を務める吉澤謙三さん(69)は「(処分場誘致は)誰に聞いても反対と言うのではないか」と語る。同町北部の鷹島モンゴル村から見える玄海原発を横目に「福島原発の事故で安全神話が崩れた。目に見えない恐怖が増えるだけ」と不安を口にする。
 同町阿翁浦港から父とごち網漁に出ていた漁師の岩添祐也さん(30)は、船上で昼休憩中に文献調査受け入れのニュースを確認。「なるようにしかならない」とそれほど関心は寄せなかった。ただ「将来、何かあった時が怖い。風評被害があれば魚の値段にもろに影響する」。原発への懸念はどうしても消えない。
 島の南部で弁当屋を営む里森美紀さん(50)は文献調査の話を「きょう、買い物の途中で初めて知った」。「これだけ距離が近いのだから、島で事前の説明があってもよかったのでは」と話した。
 松浦市の友田吉泰市長は「これまで再三にわたって避難に必要な道路や岸壁の整備等を国に求めてきたにもかかわらず、それらが実現されていない中で市民に新たな負担を課せられることになりかねず、強い憤りを覚える」とコメントした。

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