工場で同僚倒れ、通報のスマホをスピーカーに 消防の指示共有、6人連携で救命リレー

大西孝男消防長(後列左端)から感謝状を受け取った「日立Astemo阪神」の社員=三田市消防本部

 職場で倒れた同僚男性の救命につなげたとして、自動車部品メーカー「日立Astemo(アステモ)阪神」(兵庫県三田市テクノパーク)の社員6人が7日、三田市消防本部から感謝状を贈られた。初動が遅れていれば命に関わっていたといい、冷静なチームワークで仲間を救った。(橋本 薫)

 6人は同社の三田第二工場(同)で働く村井靖之さん(47)、井上渉さん(38)、香西宏一さん(40)、大槻英樹さん(62)、森鼻誠さん(43)、藤村隆弘さん(50)。

 1月10日午後0時20分ごろ、職場の屋外喫煙所にいた村井さんらの前を、一足先にたばこを吸い終えた同僚の50代男性が横切り、数メートル先で前かがみに倒れた。男性はそのまま起き上がらず、異変を察知した村井さんらが駆け寄ると、目は濁り、口は開き、心肺停止状態だった。

 119番通報した井上さんはスマートフォンをスピーカー機能にし、「ズボンを緩めて」など通信指令室からの指示を周囲に聞こえるようにした。藤村さんは自動体外式除細動器(AED)がある100メートル先の工場入り口へ走った。かつて西脇市の消防団に所属していた村井さんをはじめ、井上さんと大槻さんが交代で胸骨圧迫した。

 香西さんは速やかに社内の関係部門に連絡。当時は雨が降っており、森鼻さんは男性や操作中のAEDがぬれないよう傘で守った。通報から10分ほどで救急隊が到着した時、男性の意識はなかったが、自己心拍は再開していた。

 男性は搬送先の三田市民病院で「たこつぼ型心筋症」と診断され、付き添った村井さんは医師から「厳しい状況だ」と伝えられたという。それでも一連の連携が実って持ち直し、男性は3月下旬に転院先の病院を退院。現在は自宅療養している。

 贈呈式では、大西孝男消防長から1人ずつ感謝状を受け取った。村井さんは「本能で動いた。1人でも欠けていたらあかんかったと思う。(同僚が)社会復帰して、また一緒に働きたい」と話した。

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