HIDE、naviの本音に迫った「前編」
4人組ボーカルグループのGReeeeNが、3月19日にYouTubeでGRe4N BOYZ（グリーン・ボーイズ）に改名したことを発表した。彼らは世代を超えて親しまれる存在でありながら、顔を一切見せないスタイルを貫くなど、多くがベールに包まれたままだ。その状況下、ENCOUNTはメンバーのHIDEとnaviへの独占インタビューに成功。改名の理由をはじめ、これまで語ることのなかった彼らの本音に迫った。記事は2回に分けており、前編では「改名と素顔を見せない理由」を語っている。（取材・文＝福嶋剛）
――GRe4N BOYZへの改名理由からお聞きします。
HIDE「僕たちは『常に未完成なルーキーであり続けたい』という思いを込めて、GReeeeNという名前で活動してきました。その気持ちは、今も変わらず僕たちの根底にあります。そして、続ける上で大切にしてきたことは『創造と破壊』です。これからも4人が過去に縛られず、出会った頃と同じような新鮮な気持ちで未来を創造するためにグループ名をGRe4N BOYZに改名しました。もちろん、決断に至るまでに葛藤はありましたけど、ファンのみなさんや僕たちのこれからが、さらに良いものになると信じて新しい一歩を踏み出すことに決めました」
navi「僕たちは音楽も個々の人生も、『少年時代のような素直に感動できる喜びをいつまでも持ち続けたい』という思いがあり、そのためには常に新鮮な気持ちで居続けるための挑戦が根底にあるんです。GRe4N BOYZという名前には、4人が未来に進んでいく決意が込められていて、改名後は曲作りにおいてもとてもフレッシュな気持ちで臨んでいます」
――それでは、「未完成なルーキー」の原点であるグループ結成時のことを教えてください。
HIDE「僕とnaviは、歯科医師を目指すために都内の同じ予備校に通っていました。最初はすれ違いざまに『やあ』ってあいさつする程度の関係でしたが、ある日、福島にある医学系の大学の試験を受けるために新幹線のホームで待っていたら、naviとばったり会いました」
navi「それで『同じ大学なんだね。一緒に行こうよ』と言って、2人で自由席に座り、初めてちゃんと話をしました」
HIDE「好きな音楽の趣味も一緒でお互いに曲を作っていたり、いくつもの共通点がありました」
navi「ところが、受験した大学は筆記と面接が2日間に分かれていたのにHIDEは当日1日だけと勘違いしていました」
HIDE「『明日の試験がさあ』と言われてハッとして（笑）。試験日当日の宿なんてどこも埋まっていて、naviが一緒になって探してくれたおかげで見つかりました。そして、ホテルのエレベーターに乗ろうとしたら僕の知り合いのROTTENGRAFFTYというバンドと鉢合わせになり、『今日は偶然が続くな』と思いました」
――お互いの第一印象は。
HIDE「naviはすごく真面目な人だと思いました。実際に会ってみたら違いましたけど（笑）」
navi「HIDEも根っこはとても真面目なんだけど、地方から東京に出てきた“垢抜けた若者”って感じでしたね。原宿のど真ん中に立っても違和感のない学生でした」
――2人で受験した福島の大学に通うことになったそうですね。
HIDE「同じ学科に通っていました。東京みたいに遊ぶところも少ないので授業が終わると、naviの家によく遊びに行きました。彼はギターも鍵盤も弾けるし、録音機材もあったので互いに今まで作ってきた曲を聴かせて遊んでいました」
navi「時代的にはミクスチャーと呼ばれるラップも混ざった音楽がはやっていて、『何かとってみようよ』と言って2人で曲を作り始めました。曲ができると『どう？』って大学の友人に聴かせていました」
HIDE「ある時、試験の日にばったり会ったROTTENGRAFFTYから『そっち（福島）でライブをやるから』と連絡をもらいました。『最近、naviと曲を作っているんだ』と伝えたら、『じゃあ、2人で出なよ』と言われ、兄（JIN）のサポートを受けて初めてnaviと一緒のステージに立ちました。そのライブを前列で見ていたのが同級生で、今のメンバーの92とSOHです」
navi「その後、学校で実習を受けていたら、突然、HIDEが『メンバーを2人入れたから』って報告がありました。『いきなり、どういうことよ！』って言ったら、後ろにSOHがいて（笑）」
HIDE「実はnaviに報告する前に92とSOHでカラオケに行って、2人の声を聴いた時、『4人で歌ったら、間違いなく面白い曲が作れる』と思いました」
navi「当時92とSOHは楽器もやったことがない初心者だったので、今度は2人を家に呼んで曲作りや音楽ソフトのレクチャーを始めました。そして、4人で初めて録音したものを聴いたら、SOHの太い声と92のラップが入ったことで楽曲の世界観が一気に広がりました」
HIDE「スタジオではなく、それぞれの家で音をとって、それをミックスするだけのグループなんですが、曲が完成するたびに『これだ！』っていう感覚が面白くて完成度もどんどん上がっていきました。4人で最初に作った曲は『声』という曲でした」
――GReeeeNというグループ名にした理由は。
HIDE「これは、naviと2人でやっている時にgreenという名前を考えました。ただ、そのままのスペルでは面白くないので、『eを3つにしよう』と言ってgreeenで始まりました。そして、92とSOHが入ったので『4人だからeをもう1つ増やそう』と言ってGReeeeNに決まりました。そう考えたら結構、名前を変えてきたんですね（笑）」
顔を見せない本当の理由
――GReeeeNは「顔を見せないアーティスト」として注目されました。
HIDE「もともと僕たち4人は全員歯科医師を目指していたので、あくまで趣味の域を超えない活動を楽しんでいました。ある日、僕たちの曲を聴いた事務所の方が、『CDを出しませんか』と声を掛けてくれました。『僕たちは音楽を目指してないので』とお断りすると、『みなさんのCDがお店に並んでいる光景を見たくないですか』と言われ、『CDは作ってみたい気持ちもありますけど……』と答えると、『じゃあ、インディーズでCDを出してみましょうよ』と提案され、『それくらいなら学生時代の思い出になるから』と言って返事をしました」
navi「しばらくたって『事務所で重大発表があります』と呼ばれ、集合しました。すると、スタッフが勝ち誇った顔で『発表します！ みなさんのデビューを待っているレコード会社がこんなにあります』と言って10社以上のメジャーレーベルからオファーがあったと報告がありました」
HIDE「そしたら、『それは困ります』と言って全員が下を向き、表情がどんどん曇っていきました（笑）」
navi「普通は大喜びする場面なのに困惑する僕たちを見て、スタッフの顔もどんどん曇り始めて『こんなに喜ばれないサプライズは初めてだ』って（笑）」
HIDE「親にもたくさん迷惑を掛けて、やっと歯医者になるところまで来たのに、『メジャーデビューするから諦めます』なんて絶対できませんから。それでも、スタッフは諦めないので、『じゃあ、一切表に顔を出さないという条件で僕たちのペースで好きな音楽を作らせてくれるレコード会社があるなら考えてもいいです』と言いました。『さすがにこの条件は無理だろう』と内心思っていたんですが、『それでもやると手を挙げていただいた会社があります』と連絡があり、『そこまで僕たちの音楽を受け入れてくれるのなら、たった一度の人生だし、4人でやってみるか』ということで決断しました」
navi「当時は医大の5年生で、実際に患者さんと接し始めた時期でした」
HIDE「患者さんにとって治療してくれる医者がエンタメ業界で有名かどうかなんて関係ないことです。僕たちは歯科医師として患者と向き合い、信頼される医者を目指すためにやってきたので、顔出しだけはこれからも絶対にできません。これまでにいろんなうわさを目にしましたけど、これが本当の理由です」
――3枚目のシングル『愛唄』（2007年）がオリコン2位のヒットを記録。続けてファーストアルバム『あっ、ども。はじめまして。』もチャート2位を記録するなど、GReeeeNの名前が一気に広まりました。
HIDE「最初、大学のコンビニで自分たちの曲が流れてきた時は『わざと友人が流してくれた』と勘違いしましたけど、テレビで見た時は『こんなことが自分の人生で起きるんだ』って驚きました。近所のCDショップに行って、さり気なく目立つ場所にCDを移動したりしましたよ（笑）」
navi「日中は医者として働いていて、仕事を終えてから音楽と向き合っているので、僕たちの日常は今も大きな変化はありません。仕事終わりにスポーツや趣味を楽しむ社会人のみなさんと一緒です」
――メンバー4人の関係は。
HIDE「学生の頃から何も変わりません。普段は歯科医師としてそれぞれの場所で患者さんと向き合っていて、仕事が終わると学生時代に戻ったように曲を作ったり、今はこれから始まる全国ツアーについてアイデアを出し合っています。みんな優しい人たちで、『僕たちの曲が誰かの心に届いたら、それで十分』という4人だから続いているんです」
（後編に続く）
□GRe4N BOYZ（グリーン・ボーイズ） GReeeeNとして福島県で結成されたボーカルグループ。メンバーはHIDE、navi、92、SOHの男性4人。全員が歯科医師免許を持ち、医療との両立のため顔を伏せて活動中。『愛唄』『キセキ』など数々のヒット曲を生み出し、『キセキ』（TBS系連続ドラマ『ROOKIES』主題歌）は、国内で最も多くダウンロード販売されたシングルとしてギネス記録を持つ。2009年、3枚目のアルバム『塩、コショウ』で第51回日本レコード大賞最優秀アルバム賞を受賞。20年、NHK連続テレビ小説『エール』では主題歌（『星影のエール』）を担当。同年、第71回NHK紅白歌合戦に初出場。今年3月19日、グループ名をGRe4N BOYZに改名。6月22日から全国ツアー『GRe4N BOYZ LIVE TOUR 2024“The CUBE”～何処かに広がる大きな声が～』がスタート。福嶋剛
