ウクライナ、越境図るロシア軍を押し返したと アメリカは追加支援発表

ウクライナは10日、北東部ハルキウ州でロシア軍の装甲車部隊が越境して前線を突破しようとするのを、押し返したと明らかにした。

ハルキウ州のオレフ・シニエフボフ州知事は、ロシアの偵察部隊が国境を越えて侵入しようとしたものの、ウクライナ側は「1メートルたりとも失っていない」と述べた。

は、「ロシアはハルキウ州で新たな反撃作戦を開始した」と発表。これに対してウクライナ軍旅団が反撃しており、激戦が展開していると述べた。

ウクライナ国防省によると、ロシア軍は国境沿いにあるヴォヴチャンスクの街を「誘導型航空爆弾」と砲撃で激しく攻撃したのに続き、小規模な「偵察部隊」が複数個所で越境した。

ヴォヴチャンスクは、ウクライナ第二の都市ハルキウから約75キロ北東にある。

ヴォヴチャンスクの地元当局によると、10日早朝から激しい攻撃が始まり、民間人を避難させたという。ハルキウ州知事によると、ヴォヴチャンスクの人口は約3000人で、ロシアの攻撃で少なくとも1人が殺害され、5人が負傷した。

国防省は、「敵は午前5時ごろ、装甲車両に守られながら、こちらの防衛線を突破しようとした。現時点までに、すでに敵を押し戻したが、さまざまな程度の戦闘が続いている」と説明した。

民間人が避難したヴォヴチャンスクには、予備役が送り込まれているという。

ヴォヴチャンスクは2022年9月に解放されるまで、数カ月にわたりロシアに占領されていた。

ロシアの意図は緩衝地帯か

ウクライナ軍の司令官はかねて、ロシア軍が近く夏の大攻勢を開始すると予測しており、州都ハルキウの制圧さえ目指すかもしれないと警戒している。ただし、それに必要な人員・軍備はロシア側にないと、ウクライナ当局は力説する。

ウクライナ政府の偽情報対策を率いるアンドリー・コヴァレンコ氏は、ロシア軍は国境沿いで状況を悪化させることはできても、ウクライナ第二の都市を制圧するだけの能力はないと主張する。

ウクライナの軍事評論家、オレクサンドル・コヴァレンコ氏は、ロシア軍が今年2月に東部の小都市アウディイウカを制圧するには、数カ月にわたる砲撃に加え、約8万人の兵を必要としたと指摘。スーミやハルキウなどの大都市制圧に必要な人員・資材は、規模が全く異なるとコヴァレンコ氏は話した。

ウクライナ側がロシアのベルゴロド州に越境攻撃を繰り返していることから、ロシア側は同州防衛のため10キロの緩衝地帯を作ろうとしている可能性があると、ウクライナ側は見ている。

ウクライナ国防省情報総局のヴァディム・スキビツキー副局長は今月上旬、英誌エコノミストのインタビューで、ロシア軍がハルキウとスーミ攻略の準備をしていると話した。ウクライナ軍のオレクサンドル・パヴリュク陸軍司令官も、同様の警告をしている。

10日にはこのほか、ロシアに占領されている東部ルハンスク州のロヴェンキーで石油貯蔵施設で出火し、大規模な火事になった。ロシアが現地で任命した行政当局によると、ウクライナの攻撃によるもので、3人が殺害され、7人が負傷したという。

アメリカ、4億ドルの追加支援

ロシア政府は、アメリカからの軍事援助の到着が遅れているのを利用し、ウクライナ東部ドネツク州で軍を前進させようと攻撃を続けている。

こうした状況で10日にはアメリカ政府が、ウクライナに4億ドル(約620億円)の追加軍事支援を発表した。4月20日に成立した約608億ドルの追加予算に基づく、ウクライナ追加支援の第3弾となる。この追加予算に基づきアメリカは4月末に、計70億ドル相当の包括支援を送ったばかり。

アントニー・ブリンケン国務長官は声明で、「この4億ドルの包括支援には、緊急に必要とされている」防空システムのミサイルや砲弾、対戦車兵器や装甲車両などが含まれると述べた。

ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は記者団に対して、ロシアは「今から数週間のうちにさらに部隊を進め、ウクライナの国境沿いに緩衝地帯を設けようとするだろう」とアメリカとして見ていると話した。

ただし、ウクライナ軍はそうしたロシアからの攻撃に耐える能力があるとアメリカ政府は確信しており、ウクライナの防衛に必要な装備や兵器を届けるためアメリカは「昼夜を分かたず」作業しているのだとも、カービー氏は説明した。

(英語記事 Ukraine says it repelled Russian bid to cross border

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