あなたはどこでコミュニケーションを「学び」ましたか?

【人との関係性を変えるコミュニケーションとは?・1】4月の新年度に、新たにリーダーやマネージャーになった人、新しい部署に異動した人、上司が変わった人など、自分を取り巻く人間関係が変わった人も多いのではないでしょうか。こんな風に組織が変わるタイミングでよく耳にするのが、「コミュニケーション能力って大事だよね」とか「あの人はコミュニケーション能力が高い」などというフレーズです。

コミュニケーション能力って何?

改めて、「コミュニケーション能力とは、一体何だろうか?」という疑問が湧いてきます。普段のビジネスシーンでもメディアの記事でも、よく見聞きするのですが、いまいちつかみどころのない言葉です。「コミュニケーション能力が高い人」と聞いて、どのような人を思い浮かべるでしょうか。

「社交的で誰とでも仲良くなれる人」「周囲をうまく巻き込んでしまう人」「受け答えが的確で、相手に自分の考えを分かりやすく伝えられる人」「人の話をじっくり聞いてくれる人」「あいづちや表情などで、相手に適切に反応をしてくれる人」「相手との間で話のキャッチボールができる人」「建設的なやり取りが相手とできる人」など、思い浮かべるのはさまざまだといえます。コミュニケーション能力とは、どうやら人と関わっていく能力だといえそうです。

コミュニケーションを「学んだ」ことがない

人は日々の社会生活の多くの場面で人と関わっていて、周囲とコミュニケーションしています。それはもちろん組織においても同じで、コミュニケーションで意思疎通を図り、関係性を築き、意思決定をしながら仕事を進めています。

それを踏まえると、どんなに知識があって能力が高い人でも、組織の中で人とうまく関わることができなければ、本来の力を発揮することはできないといえます。知識もスキルも能力も、人と人との関わりの中で発揮されなければ意味がないのです。

ここで、ご自身のコミュニケーションを振り返ってみてください。どのように身につけたものですか。

コミュニケーション、つまり人との関わり方については周囲の人たちから学んできたのです。親や先生、友人、先輩、後輩、上司や同僚など身近にいる人たち、関わりの多い人たちから、最も大きな影響を受けています。成長過程を振り返ると、関わる人が増えたり、変わったりする度に、人との関わり方やコミュニケーションの仕方も変わってきたことに気づくのではないでしょうか。

同時に、それ以外にコミュニケーションを「学ぶ」機会がなかったことにも気づきます。コミュニケーションは、知らず知らずのうちに、自身が接してきた世界のみで形作られているということです。さらには、その閉ざされた世界で形作られてきたコミュニケーションが他者にどのように映っているのかも、実は、私たちの多くは分かっていません。

コミュニケーション能力を上げるというと、話し方、話の聞き方、プレゼンテーションの仕方、質問の仕方、などの個別スキルに注目しがちです。でも、「コミュニケーション能力を上げたい」と思うならば、まずは自身の現状を知ることが大切です。そうでなければ、人との関わり方を変化させたり磨いたりはできないのです。(コーチ・エィ・片桐多佳子)

■Profile

片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。

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