THE YELLOW MONKEY、アルバム作りは「宿命」 根底にあるライブへの情熱「そこは老化したくない」

『Sparkle X』試聴会&合同取材に登壇したTHE YELLOW MONKEY【写真:横山マサト】

THE YELLOW MONKEY『Sparkle X』マスコミ向け合同取材に登壇

結成35周年を迎えた4人組ロックバンド・THE YELLOW MONKEYが10日、都内でニューアルバム『Sparkle X』(5月29日発売)のマスコミ向け試聴会と合同取材に臨んだ。壇上には吉井和哉(ボーカル・ギター)、菊地英昭(ギター)、廣瀬洋一(ベース)、菊地英二(ドラムス)のメンバー4人が登場し、10枚目となるオリジナルアルバムの手応えを語った。

アルバムの質問に先立ち、今年4月27日に開催し、バンド史上最多動員数となった3年ぶりの東京ドーム公演について振り返った。

ライブ前日は興奮して眠れなかったという廣瀬(以下、HEESEY)は「メディアでもたくさんネタになってしまいました」と苦笑すると吉井が「ライブが終わってからもしばらく寝られなかったんでしょ? 3人の演奏がキレッキレでHEESEYはこれからも寝ないのが良いんじゃない?」と場内を笑わせた。

吉井は続けて「やっぱり(のどの)病気後、初のフルステージがいきなり東京ドームで正直プレッシャーもすごく不安もあったんですけど、ステージ袖にスタンバった時、逆にスイッチが入っちゃって、どこまで声が持つか分からなかったのですが、何とか完走できまして。課題はたくさん残りましたが、『ロックには切羽詰まった状態が、必要なんだな』って。いい勉強になりました」と感想を述べた。

菊地英二(以下、ANNIE)は「これまで5回やってきて初めて東京ドームを俺たち色に染められて、2階席の奥までちゃんとTHE YELLOW MONKEYのエネルギーで満たすことができました」と充実した表情を見せた。

菊地英昭(以下、EMMA)は、「僕は過去一番にお客さんと一体になれたドームだったと思います。僕たちがお客さんに守られている感じもあったし、一緒に楽しもうというオーディエンスの気持ちがすごく伝わってきました」と語った。

記念すべき10作目のアルバムタイトルは『Sparkle X』。その意味について吉井は次のように説明した。

「今回のアルバムは、先日の東京ドーム公演と連動していて、公演タイトルが『SHINE ON』だったので『もう1回輝こう』みたいなのがキーワードから『Sparkle』につながりました。あんまりひねりはないんです(笑)。Xというのは10枚目という意味と、『未知』という意味もあって、『これから未知のものに向かって進んでいく』という意味もあります」

バンドの真骨頂とも言える骨太なロックナンバーが全11曲収められている。

吉井「今回はベタな今までやっていそうでやってないロックンロールを、あえてやってみようかなというのもありました。あとやっぱり僕が声を出せない状態が長く続いて、それでも曲を作らなくちゃいけない中で実験作とか作っている場合じゃなかったんです。だから得意なロックンロールにすがったというか。あとはメンバーの演奏で華やかにしてもらえればいいかなっていう10枚目になりました」

HEESEYは、「原点回帰しつつも、ありそうでなかった曲もあるし、完全に新しい曲もあるし、ちゃんと今のTHE YELLOW MONKEYっぽさを持った、作品に仕上がったんじゃないかと思います」と話し、吉井も「2000年代は新しい音楽もいろいろ出てきて、僕たちも挑戦してきましたけど、ロックのフォーマットをもう1回見つめ直して、ロックの原点に戻った作品」と付け加えた。

司会者が「音が跳ねているような楽しさが伝わる演奏」と感想を述べると、ANNIEが「分かります?」と返し、「メンバー同士で話したことはないんだけど、やっぱTHE YELLOW MONKEYって『跳ね』だなと最近すごく思っていて、自分たちのグルーヴってやっぱ『跳ね』なんだと確認できたし、バンドも一周して、『自分たちの最強の武器はこれだ』って再確認できました」と今のバンドについて語った。

アルバム3曲目に収録されている先行配信されたシングル『ホテルニュートリノ』(2023年、WOWOWドラマ『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-』主題歌)には「人生の7割は予告編で、残りの命数えた時に本編が始まる」という意味深い歌詞がある。これについて吉井は次のように答えた。

「個人的な話ですけど、一般的に生きるか死ぬかみたいなのどの病気になって、あらためて『いつまでも命ってあるもんじゃない』と痛感しました。それと同時に病気になったことで、真正面から生きるということと向き合って、『今できるロックってなんだろう?』とか考えたことで、必然的にそういう要素が歌詞に入ってきたので、逆に歌詞は今回あまり悩まなかった」と明かした。

吉井は続けて「僕はデヴィッド・ボウイが大好きで、彼ががんになってからの作品ってすごくクリエイティブで、人ってそういう風に命のこと考えた時、新しいアートができるような気がして。今回の作品は意味があったと思います」と話した。

吉井の言葉を受けてANNIEは「今までオブラートに包んだような歌詞だったんだけど、今回は『こんなにストレートにくるんだ』って思いました」と吉井の変化について語った。

EMMAも「やっぱり『時間って大切だな』って。『再集結したけど時間は限られているんだな』と再認識しました。そこでも強くなった気はします」とバンドの結束力について話した。

アルバムへの思いを語ったTHE YELLOW MONKEY【写真:横山マサト】

そして今作の中でもっとも歌詞に苦労した曲『ラプソディ』について吉井が制作秘話を明かした。

「サビで『オパ オパ』っていう歌詞が続くんですが、この曲は一番体調が悪い時に思いついた曲なんです。声が出なかったのでどんなメロディーにしたら良いか分からなくて、ある時、お茶してたら、小さい子がお母さんに『おっぱい、おっぱい』ってせがんでいて。それを見てから『おっぱい』という言葉から抜け出せなくなって、そしたら今まで自分になかったメロディーができたんですよ(笑)。でも、さすがに平均年齢58歳のバンドが“おっぱい、おっぱい”って歌うのはまずいじゃないですか。それでまた悩んでいたら、新幹線の中でクラリネットという言葉が浮かんできて、『ちょっと待ってよ。クラリネット…。“オーパッキャマラード”、おおっ!』って出てきたんですよ。それで『オパ オパ』という歌詞につながりました。ホント助かった。感動してメンバーに自慢げにグループLINEしちゃいました(笑)」

HEESEY「めちゃくちゃうれしそうだったもんね(笑)」

吉井「『これでアルバム完成した!』って(笑)」

EMMA「もう全員やったー! みたいな(笑)」

吉井「昔だったら『おっぱい? 関係ねえよって言ってたかもね(笑)」

代表質問が終わり、記者から「次世代の若者に対しての思い」について聞かれると吉井は、「結構、数年前までバンドにとっての深刻なテーマでもありました」と明かし、「やっぱり30代、40代、50代ってバンドが年を重ねていくと、ファンも同じように歳を重ねて生活も変化していくので、コンサートに行けないとかいろんなこともあるんですけど、だからと言って今度は若い人たちに向けて全力でやるというのも違うのかなと思いました」と話した。

「まさに今回のアルバムは、自分たちが目をつぶっていてもできるような楽曲、『本当にこれが大好き』みたいな感じでやることが、一番大切なのかなと思いました。あとはどんな若い方たちが世の中にいるかって正直、僕たちにとっては不透明なので、たとえばご両親が音楽好きで、こういうロックを車の中で聴かせてもらったとか。よく分からない音楽だったけど、ライブに連れて行ってもらって『カッコいいかもね』って思ってくれたら、それで良いのかなって思っています。

もちろん僕たちを知っている子どもたちや同じ音楽が好きな子たちが来てくれるとうれしいですし、知らないで感性でライブに来てくれる子たちもうれしいです。ただ、僕たちは(自分たちの信じる音楽を)選んでお届けしたいっていうのはありますね。数年前とか『イントロを長くすると飛ばされちゃう』とか言われて、気にしたこともあったけど、今はもう全然気にしないです。むしろ『イントロがあっての曲なんじゃ!』ってね(笑)」

THE YELLOW MONKEY

最後には4人がファンへメッセージを送った。

HEESEY「すごく期待してほしいなと思います。ライブに向けて、今回の曲がすごく力を発揮すると願っていますし、全曲聴いていただけたらと思います。ありがとうございました」

吉井「『Sparkle X』は新しいTHE YELLOW MONKEYの宝石だと思っています。すごく重要なアルバムの1つで今までのTHE YELLOW MONKEY節に変わる新しいものが生まれたので大事にしていきたいです。何より重要なのはライブで、そこは老化したくないし、そのためにアルバムを頑張って作ることが宿命だと思っています。それが『我々の新しい挑戦』だと思っているのでこれからも長い目で見ていただければと思います」

ANNIE「バンドもひと山越えてきたところで、もう1回バンドができる喜びっていうのが、このアルバムにはすごく詰め込まれていて、それを感じ取っていただけるとうれしいです。そして今回のアルバムはLOVIN(吉井)がすごくストレートに乗り越えてきたことが伝わる歌詞なので、そういう言葉の1つ1つの重みをも聴いていただけたたらと。LOVINが乗り越えてきた力強い言葉で歌うことで、今困っている人や悩んでいる人の希望の光になったら良いなと思っていて、そういうアルバムになったと思っています」

EMMA「やっぱり世の中的にもバンドもいろいろあったので、このアルバムを持ってTHE YELLOW MONKEYがまたやれるってことが、本当の復活の狼煙になっている気がします。ライブもしたいですし、ここからまた新しい世界を広げたいです。東京ドームでも思いましたけど、やっぱり素晴らしいオーディエンスがたくさんいるので、本当に彼らのところに音を届けたいですし。彼らと一緒に新しい世界を見たいので、歳を取って衰えつつも、一緒に転がっていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました」

35年目にドロップした『Sparkle X』は、まさに日本を代表するバンド『THE YELLOW MONKEY』の最高傑作のロックアルバムになると言っても過言ではないだろう。

なお、5月21日のデビュー記念日には、ファンに向けた試聴会を開催する。完全招待イベントとなり、応募は12日午後11時59分までとなっている。

○THE YELLOW MONKEY 10th Album『Sparkle X』先行試聴会

・東京:恵比寿ガーデンルーム/5月21日
第1部
開場/開演時間 15:45/16:30(予定)
第2部
開場/開演時間 18:15/19:00(予定)

・名古屋:名古屋デザインホール/5月21日
第1部
開場/開演時間 15:45/16:30(予定)
第2部
開場/開演時間 18:15/19:00(予定)

・大阪:フェニーチェ堺 小ホール/5月21日
第1部
開場/開演時間 15:45/16:30(予定)
第2部
開場/開演時間 18:15/19:00(予定)ENCOUNT編集部

© 株式会社Creative2