『アンメット』原作漫画家・大槻閑人、若葉竜也のギャップにやられる 「すっかりファンに」

毎週月曜22時よりカンテレ・フジテレビ系で放送中の月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。元脳外科医の子鹿ゆずるとともに原作を手がけた漫画家・大槻閑人からコメントが到着した。

講談社『モーニング』で連載中の人気コミック『アンメット -ある脳外科医の日記-』を連続ドラマ化する本作は、事故による後遺症で過去2年間の記憶がない脳外科医のミヤビ(杉咲花)が、同じ脳外科医でアメリカ帰りの三瓶(若葉竜也)と出会い、医師としての自分を少しずつ取り戻していく、新たな医療ヒューマンドラマ。

ここまでの放送を観た感想を聞かれた大槻は、「『すごく上質なドラマ』、その一言に尽きると思います。昨今の日本のドラマは、もっと分かりやすくライトなものが受け入れられやすいのかなと思っていましたが、SNSに寄せられたコメントを読むと、後遺症の恐さや登場人物たちの複雑な心情など、原作で大切にしてきたことは視聴者の方たちにきちんと伝わっていて、『アンメット』の世界が受け入れられたことがとてもうれしかったです。そこには、医療のリアリティーを追求する制作スタッフの本気とキャストの皆さんの素晴らしいお芝居があり、なかでも、杉咲花さんと若葉竜也さんのお芝居からは、僕も毎回目が離せないです」とコメント。

続けて、「第1話は、出版社の担当編集さんをはじめ8~9人で見たのですが、屋上でミヤビが『今日が明日につながらない』と三瓶に苦しい胸の内を吐露する場面では、作者として2人の過去を知っているからこそ、そこに言葉以上のものを感じて、人目もはばからずボロボロ泣いてしまいました。そのあと、残されたミヤビが1人で泣くシーンも、医者でいたいけれどいられないミヤビの気持ちがひしひしと伝わってきて、杉咲さんが神々しく見えるほど素晴らしいシーンでした」と杉咲を絶賛。

また、「正直にいうと、ドラマ化のお話をいただいた当初は、実写化することで原作をもっと多くの人に知ってもらえたら…というくらいの気持ちでした。僕としては、ドラマと漫画は完全に別もので、スタッフの方たちが真摯に向き合ってドラマを作った結果、それが世間からの評価を得られなくても、僕が心血注いで描いた漫画が傷つくわけではないと思っているんです。それでもやはり、自分が描いた漫画をこれだけ上質なドラマにしてもらえたことは素直にうれしいですし、反響も大きくて驚いています」と期待以上の結果になったことを喜んだ。

ドラマの撮影現場も見学したという大槻。「偶然にも、僕がここ1~2年の間に観た映画は若葉さんが出演されている作品が多かったので、現場ではドキドキしながら若葉さんに声をかけました。クールな方だと思っていたのですが、とてもフランクに話してくださり、そのギャップにやられてすっかりファンになってしまいました(笑)」と若葉のギャップに魅了されたと明かす。「若葉さんは、原作の三瓶の表情をとても熱心に研究してくださっているようでした。たとえば、患者さんにとってすごくつらい宣告をしなければならないとき、三瓶は冷たい顔をするのですが、それはあえて、きついときほど機械的に、ロボットのように振る舞うという感覚で描いているのですが、若葉さんはそういった細かい描写にも理解が及んでいるようで、『たまに三瓶がすごく恐い顔をするんですが、あれはどういう気持ちなんですかね』と質問してくれました。とっさのことで、どの場面のことを指しているのか聞き返す余裕がなく、すごく曖昧な返事をしてしまったことが心残りなのですが、その質問を聞いて、一見、表情が乏しいようで実は多彩な表情を持つ三瓶をすごく研究されているんだなと感じました」と、若葉の演技を絶賛しつつ、彼とのやりとりを振り返った。

さらに、それぞれのキャラクターの容姿については、「原作の主人公である三瓶は、いくつもの案を出しました。まず内面を決めようということになり、ワーカホリックでコミュニケーション能力が低め…じゃあ、髪型はあまり気にしないだろうということでボサボサ頭になって、仕事以外のことでは楽でいたいんじゃないかと、ズボンの裾を少しまくってサンダルに。仕事ざんまいなので目元は疲れた感じで猫背…。そういった理屈的なところから固めていきました。対する星前は、髪をしっかりセットして、エリート意識を持っている男。言ってみれば、2人を雑草とエリートのような対比にしました」と明かした大槻。「連載開始当初、僕は原作の子鹿(ゆずる)先生の思いや書きたいものが、そこまで明確に理解できていなかったんです。それが、作品が進むにつれて、僕自身も患者さんに感情移入するようになって、表情や心の痛みの解像度が徐々に高まってきたなと感じています。とにかくリアリティーを大事に、漫画なので何でもできてしまうのですが、決してリアリティーラインを壊さないように、『これじゃ漫画だよ』と言われないようにしようと思って描いています」とリアリティーラインの重要性に言及した。

大槻は最後に視聴者へ向けて、「今まで、あまり原作ファンの方の声を聞く機会がなかったのですが、ドラマの放送後、『ドラマもおもしろいけど、漫画もおもしろいよ』とSNSに投稿してくださっている読者が想像以上にたくさんいて驚きました。そういった生の声を聞いたのが初めてだったので、こんなにたくさんの人たちが原作を読んで支持してくれていたんだと、感動で胸が震えました。僕は長いこと『コウノドリ』の鈴ノ木ユウ先生のアシスタントをしていて、そのときに、自分には医療ものは描けない、プレッシャーが恐くて無理だと思っていたんです。それが、ご縁あって医療もののお話をいただき、僕には無理だなと思っていたら『原作者は元脳外科医の先生ですよ』と言われて、それならできるかも!と。以来、子鹿先生に甘えっぱなしで描いています。担当編集者さんと狭い部屋で煙草を吸いながら、『いつかドラマになるといいね』なんて夢を語ったこともありますし、それが今現実になって、本当に幸せです。ドラマを100%楽しんだあと、気が向いたら原作の漫画もぜひ読んでみてください(笑)」とメッセージを寄せた。
(文=リアルサウンド編集部)

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