日向坂46・河田陽菜、山下葉留花が明かす“選抜制”への思い「私たちは絶対にバラバラになりません」

(左から)河田陽菜、山下葉留花 クランクイン! 写真:上野留加

全員選抜を貫いてきた日向坂46が、大きく変わった。グループの11thシングル「君はハニーデュー」から、シングルごとに選抜メンバーと、アンダーメンバーで構成する“ひなた坂46”の2チームで活動する新体制に移行。二期生の河田陽菜、初の表題曲参加となった四期生の山下葉留花は「選抜制を導入」と聞いた当時の心境を、つぶさに振り返る。選抜メンバーの2人には当初、動揺もあったが、“ひなた坂46”のメンバーとの絆を新たに感じる瞬間も生まれたという。

■表題曲のMVではけやき坂46時代の楽曲「期待していない自分」の屋上に

――表題曲「君はハニーデュー」は、神奈川県・横浜スタジアムで開催したデビュー5周年記念公演「5回目のひな誕祭」でステージ初披露しました。

河田:おひさま(ファンの愛称)の皆さんも「ハニーデューをやるかな」と期待されていたと思うんです。本番当日は、どんな反応をされるのかとワクワク感があって。初披露にもかかわらず客席のコールが完璧で、緊張もなく楽しかったです。

山下:私は河田さんと逆で、緊張しました。フルサイズの初披露が「ひな誕祭」だったので、期待してくださる以上のものをお届けできるのか不安だったんです。でも、本番では声援に背中を押されて、楽しくパフォーマンスできました。センターを務める同期、(正源司)陽子のサイリウムカラー“オレンジ×レッド”に客席一面が染まったのを見て「元気が出る色だなぁ」と思っていました。

――表題曲のMVでは、けやき坂46時代の楽曲「期待していない自分」のMV撮影で使ったビルの屋上に、約6年ぶりに立っています。河田さんにとっては、二期生として初のMV撮影地でした。

河田:当時とは、環境も気持ちも違います。経験がなかったので「とにかく先輩についていかなければ」と必死でしたし、パフォーマンスの緊張感もありました。「期待していない自分」では夕方に、今回の「ハニーデュー」ではお昼ごろに撮影したので、違う場所に見えるほど景色が違ったんです。三期生や四期生も加わって、歴史を感じながらもすべてが新鮮でしたし「日向坂がいい方向に進化している」と、うれしくなりました。

――ブログでは片手で「ヒ」を形作る、グループの過去と現在で共通したポーズの比較画像をアップしていました。

河田:撮影現場で「あ、ここ見覚えがある!」と思った場所があり、カメラロールをさかのぼったら「やっぱり」となったんです。過去の写真が5枚ほど残っていたので、そのうちの1枚をマネしました。心も容姿も…まあ、容姿が変わったかは分からないけど(笑)。ちょっとは成長できたかなって、思います。

――山下さんにとっては、加入前に見ていたMVの撮影地です。

山下:過去のMVで見た先輩方が周りにいて「え、タイムスリップしたの!?」と思うほど、異世界に迷い込んだ感覚でした。昨年のツアー「Happy Train Tour 2023」で、四期生は1人ずつ「期待していない自分」のセンターを任されて、何度もMVを見返したし、先輩方の思いを「引き継ぐぞ!」とステージで意気込んでいたんです。今回「君はハニーデュー」の撮影では「この屋上で先輩方が最高すぎるパフォーマンスをしていたんだ!」とうれしくなって、地面をさわりました(笑)。

――(笑)。MVでは学校を舞台にした、四期生の躍動感溢れるシーンもあります。

山下:1番のBメロ、四期生の5人(正源司・平尾帆夏・藤嶌果歩・宮地すみれ・山下)で踊るシーンでは、同期だけのパートを作っていただいて、キャッチーな振り付けもありがたかったです。実は、私たちで決めたポーズも一瞬だけ映っているんです。5人で「私たちらしさは何だろう」と考えて「ポップさ、キュートさ」だとなり、“ハートポーズ”に決まりました。

――5人のうち、発案者は誰だったんですか?

山下:私と平尾で、最初は「イェーイ!」とピースのポーズをする予定だったんです。同期で唯一の同級生なので“相棒コンビ”と呼ばれるほど仲が良くて、「何か、一緒のポーズしたいよね」となって「愛が深いのでハートにしよう」みたいなノリで決めました(笑)。

――(笑)。河田さんは、撮影を振り返っていかがでした?

河田:一期生さん、二期生、三期生だけで踊るパートでは、大変さはなく、和気あいあいとしていて楽しかったです。でも、センターの陽子は、ソロで撮影するシーンも多く「大変そう」と見守っていました。弱音を吐かない陽子の背中が大きく見えて、頼もしかったです。

■選抜制導入で心が揺れるも今ではポジティブに

――11thシングル「君はハニーデュー」から、全員選抜を貫いてきたグループは選抜制を導入。シングルごとに選抜メンバーと、アンダーメンバーで構成される“ひなた坂46”に分かれて活動する体制に移行しました。

河田:四期生が加入してくれた時点で「選抜制になるだろう」と思っていました。前作の10thシングル「Am I ready?」、2ndアルバム「脈打つ感情」でも、その思いでフォーメーション発表に臨んでいたんです。でも今回、実際に「選抜制を導入します」と聞いたときは、心では分かっていたはずなのに、1人1人発表されるのを見て「このときが来てしまったか」と、心苦しさもありました。選抜メンバーになったのは喜ばしくても、素直な気持ちを出していいのか、どんな感情でいたらよいのか分からなかったです。

――すでに選抜メンバーとしての音楽番組出演などを経験して、心境も変わってきたかと思います。

河田:この選択で日向坂46がいい方向に進むならと、ポジティブな気持ちです。選抜メンバー、ひなた坂46に分かれる活動はあっても、ライブやレギュラー番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京/毎週日曜25時20分)の収録ではみんなで集まりますし、日向坂46は「全員一緒のチーム」だと思っています。

――山下さんは加入後初の表題曲参加で、グループ初の選抜メンバーとなりました。

山下:加入前は全員選抜が魅力で、1人1人が輝ける場所のイメージだったんです。だから、今回から「選抜制を導入します」と聞いて、歴史が変わると思いました。フォーメーション発表では、ズシリとした空気を感じたんです。河田さんと同じく感情が分からなくて「なぜ、選抜制にするんだろう」と、疑問もありました。でも、スタッフさんから改めて説明を受ける機会があり、日向坂46が大きくなるためには必要だと腑(ふ)に落ちたし、今は「選抜制は大成功だった」と言っていただける、おひさまの皆さんが増えればという思いです。

――選抜制導入の象徴となった、山下さんと同期で四期生初の表題曲センターを務める正源司さんの頑張りはどう映りましたか?

河田:センターに選ばれるだけでもドキドキするはずで、しかも、新体制初のセンターに選ばれたのは、重圧がかかっていたと思うんです。でも、「ひなあい」のシングルヒット祈願企画として、選抜メンバーで滝行に挑戦したロケで、今回の活動期間を乗り越えてからの陽子が楽しみになりました。私たちは数名のチームで、陽子だけは1人で滝に打たれたんです。その様子をスタジオで見て、シングルに対する強い思いが伝わってきました。弱さを見せずにすべてを抱えているのは尊敬ですし、陽子に限らず、四期生を見ていると未来は明るいです。

山下:フォーメーション発表後は一緒に帰ったんですけど、心配するほど陽子が震えていたんです。弱音を吐くのも珍しかったけど、不安を口にしていた数分後には「やってやるしかない」と言っていました。それを聞いて、強い子だなと思って。ダンスレッスンに1人だけ早く来ていたのを何度も見たほどの努力家で、努力の積み重ねでセンターに立っている姿は、年下なのに年下に見えなくて、カッコよすぎます。

――さらなる変化として、新チーム“ひなた坂46”の楽曲「錆つかない剣を持て!」のMVも公開されました。

河田:三期生の(山口)陽世ちゃんから「(ひなた坂46のMVを)紹介してくださったらうれしいです」と全員に連絡が来て、絆を感じました。もっとみんなに魅力を知ってほしいと思っていた、三期生の(※高橋)未来虹ちゃんがセンターに選ばれたのもうれしかったです。過去の“ひらがなけやき(けやき坂46の愛称)”を連想させる名前のチームが新たにできて、グループがバラバラになってしまうのかと、不安な方もいると思うんです。でも、日向坂46は変わらないので。私たちは絶対にバラバラになりませんし、安心してほしいです。(※高の正式表記は「はしごだか」)

山下:河田さんが、私の思いもすべてまとめてくださって…。表題曲はめっちゃ笑顔で「青春!」の感じですけど、ひなた坂46の楽曲はキメキメで、クールな表情がカッコいいんです。日向坂46は「青春感だけじゃない」とひなた坂46のみんなが表現してくれているし、どちらも愛される楽曲になればうれしいです。

■共に活躍するラジオではお互いのトークに「通じるもの」

――2人は、ラジオパーソナリティの共通点もあります。河田さんは『ローソン presents 日向坂46のほっとひといき!』(TOKYO FM/毎週金曜11時30分)を、山下さんは『ベルク presents 日向坂46の余計な事までやりましょう』(TOKYO FM/毎週金曜20時)を担当。お互いの放送は聴いていますか?

山下:私は聴いてます! 河田さんは…ないですよね?

河田:(うなずいて気まずそうにニコニコ)

山下:河田さんの癒やしボイスが大好きで、思考が似ていると言ったら申し訳ないんですけど、通じるものがあります(笑)。

河田:分かる(笑)。

山下:リスナーさんが河田さんのトークで「?」となっていても、スッと入ってきますから。

河田:担当してくださっている放送作家さんが一緒で、はるはる(山下)の話は聞くんです。自分でしゃべっていても似てるなと思います(笑)。

――(笑)。河田さんはほのぼのと、山下さんは勢いあるトークを展開。収録に備えての準備は?

河田:前日に「明日は何を話そうか」と考えて、スマホのメモや写真を見返します。ライブのように大きな出来事があればいいんですけど、何もないときはラジオ局へ向かいながら「どうしよう…」と思っていて(笑)。でも、リスナーさんが面白いメールを送ってくれるので、助かっています。

――ラジオのために、日頃からメモをしたりは?

河田:何か起きたらメモしようと思っているんですけど、なかなか身に付いていないんです。ラジオパーソナリティをやっている同期の松田好花が細かくメモしていて、見習わなければと思っています。収録では「今日は何を話したっけ。放送は大丈夫かな…」と思う日もあるし、テキトーではなく、しっかり準備したいです。

――松田さんは現在『日向坂46・松田好花のオールナイトニッポンX(クロス)』(ニッポン放送/毎週木曜24時)を担当し、過去のラジオパーソナリティ経験も豊富ですし。山下さんは?

山下:メモしているんですけど、ブースのイスに座った時点で「今日はこの話題の気分」と、直感で話題を選んでます。話の構成を固めて話そうとすると、緊張でしゃべれなくなっちゃうんです。その場で降り注いできた言葉を発信するのが自分らしさだと自己分析しているんですけど、「何を言ってるのか分からないカオス感」があると言われます(笑)。

――(笑)。自分の出演した放送は、聴き返すんですか?

山下:うまくいったときは、聴きます。でも、うまくいかなくて、世界が終わるほどの感情になるときは聴きません。収録当日は「前回は早口だったから、今回は落ち着いてしゃべろう」とか、メモした反省点を唱えながらスタジオに向かいます。

――番組でたびたび言葉を発する、放送作家さんからのアドバイスは?

山下:収録中、紙にツッコミの言葉を書いて見せてくださるんです。でも、自分では正統派のしゃべりだと思っているので「今、どこにツッコんでいるんだろう」と不思議で「?」が頭に浮かびます。(ふと、隣の河田を見て)そんなとき、ありません?

河田:ん〜…、ない(笑)。さっきはるはるが言っていたように、私も放送でうまくいかなかったときは、聴かないです。

――番組では、河田さんが「自分の放送を聴いたら、すごいキレイにやって(編集して)くださって、いつもありがとうございます」とスタッフへの感謝を述べて。山下さんは「私の編集、大変ですか?」と一言、スタッフへ冗談まじりに問う放送回がありました。

河田:言葉のつなぎを整理して、余計なことをしゃべっていたらキレイにカットしてくださるんです。言葉でうまく伝えられなかったときには「編集するとこうなるんだ」とビックリで、感謝しています。でも、オンエアで流す曲が1番だけではなく、1曲丸ごとのときは「撮れ高が足りなかったんだ」と落ち込みます(笑)。

山下:言い間違いが多くて、かんでしまっても勢いでそのまましゃべっちゃうんです。自分でも何を言っているのか分からないまましゃべっていたら、変な発言も使われるようになっちゃって(笑)。危ない場面もたくさんあるんですけど、それも「魅力」と言われますし、リラックスしてしゃべれていると、ポジティブに捉えています。

――個性も光るラジオのお仕事は、どのような意味を持っていますか?

河田:約1年前のレギュラー決定でファンの皆さんが喜んでくださったのが、うれしくて。それまで、1人でしゃべるのはSHOWROOM配信ぐらいでしたし、自分の気持ち、自分のことを発信できるありがたい場所です。4月改編で番組が続いたのはほっとして、長く続けられるように、頑張ります。

山下:ラジオのお仕事を通して、自分は「こんな人です」と、しっかり発信できるようになりました。メンバー全員で頑張っている「ひなあい」では、自分の魅力を発信する場面があまりなかったし、ラジオに備えた自己分析で強み、得意なことも分かってきたんです。新たな世界が見えたので、ありがたいです。

(取材:カネコシュウヘイ、堀タツヤ 文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

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