F15戦闘機に恋した女性パイロット 過酷世界で存在感 グッドミッションに「うまい酒が飲めそうです」

航空自衛隊の主力戦闘機F15から降りてきたのは、立和田あかり2等空尉。沖縄県にある航空自衛隊・那覇基地に所属する女性の戦闘機パイロットだ。なぜ、戦闘機パイロットを目指したのか。密着取材した。

モンスターマシンは20万馬力「9G」の過酷な世界

立和田2等空尉が操るF15戦闘機は20万馬力(新幹線の約10倍)、スピードはマッハ2.5を誇る。そんなモンスターマシンであるがゆえ、9Gもの重力加速度がかかる。これは体重の9倍の力で押しつけられる過酷な世界だ。

先輩隊員:
「身体にGが強くかかると血液が下に押し下げられ、脳に血が回らなくなります。そうなると最終的にはブラックアウト、何も見えなくなって失神してしまいます」

それを防ぐため立和田たち戦闘機パイロットの装備はものものしい。

立和田あかり2等空尉:
「これはGスーツです。空気の力で下半身を圧迫し、血流が下肢に集中しないようにするんです」

戦闘機に恋した乙女 狭き門を突破

これまで肉体的負担が大きいことを理由に女性は戦闘機パイロットに採用されなかった。だが、2015年に門戸が開く。立和田はその狭き門を突破したスーパーエリートの1人だ。なぜ、戦闘機パイロットを目指したのか。

立和田あかり2等空尉:
「航空学生だった2年間にいろんな基地に行って、戦闘機を目の前で見たり、コックピットに座らせてもらいました。その時、『戦闘機はな、ゴォわ~って、ウォわ~ってやるんだぞ』って言われたり、ヴォ~って飛んでいくのを見て心臓が高鳴ったんです」

独特の口ぶりで語る立和田。それはまさに戦闘機に恋した乙女だ。

現在、鹿児島の親元を離れ1人暮らし。冷蔵庫を開けると…ほとんどお酒、焼酎も並ぶ。さすが薩摩おごじょ。ベランダのプランターではナスやトマトなどを育てていた。料理好きでインスタには連日、自作の料理を投稿している。

かつては男性との体力差に涙したこともあったが、戦闘機パイロットになって2年、今や所属部隊に欠かせない存在となっている。

実戦想定の戦闘訓練へ まずはお腹を満たしてから?

この日は、対戦闘機の戦闘訓練、通称、ドッグファイト。映画トップガンなどでもお馴染みの実戦を想定した訓練だ。

パイロットはTACネームと呼ばれる愛称で互いを呼び合う。通信する際の時間短縮や、聞き間違いを防ぐためだ。立和田の愛称は「ガッキー」。沖縄出身のあの人気女優が由来だ。

先輩隊員:
「ガッキーはウイングマンになるので、編隊長の指示に従って意図通りに戦闘する。そして自分が気づいた情報があれば提供してほしい」

ウイングマンは編隊長の機体とペアになり、戦術をアシストする重要な役割だ。立和田の表情はいつしかファイターに変わっていた。

いよいよ訓練が始まると思いきや、向かったのは滑走路ではなく食堂だ。「たこ空上げ(唐揚げ)」という那覇基地オリジナルの名物めしでお腹を満たす。飛行直前なのに満腹で大丈夫なのか。

立和田あかり2等空尉:
「食べないで飛ぶと、もし何かあって不時着とかした時に命を落とす。食べてからフライトするというのは基本なんです」

ドッグファイトを終え、無事に帰還した立和田。「グッドミッション」と先輩に声をかけられ、厳しかった表情が緩み、笑顔がこぼれる。

立和田あかり2等空尉:
「後輩たちにあこがれてもらえるような存在になりたいし、なるべきだと思っています。きょうは、うまい酒が飲めそうです」

立和田あかり、職業、戦闘機パイロット。きょうもモンスターマシンで大空を舞う。

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