ぶざまな落書き、消しても消しても後絶たず…それでもボランティアはあきらめない。誇れる天文館を取り戻すため、粛々と壁を塗る

落書きを消すボランティア団体や鹿児島中央警察署員=鹿児島市千日町

 鹿児島市の中心街・天文館地区の落書きが再び増加している。新型コロナウイルス下に急増したが、人通りの回復などで一時減少。昨年秋ごろから増加に転じ、ボランティア団体が毎朝消しても、残っている落書きが150件弱ある状況だ。消しても書かれるいたちごっこが続く。

 2日、「天文館安心・安全ラクガキ消し隊」や同地区をパトロールする「天ちゃん会」、鹿児島中央警察署員ら約30人が千日町の飲食店の裏壁面に書かれた落書き(縦約1.8メートル、横約4メートル)を消した。はしごに登り絵の上から壁の色に調合したペンキを塗る地道な作業。約30分かけて完了したが、数日後には同じ壁に同様の落書きが書かれ、7日、ラクガキ消し隊らが消した。

 県警によると、2022年の県内の塗料による汚損認知件数は過去10年で最多の94件だった。天文館地区では20~22年に被害が急増。しかし、昨年2~3月に落書きをした疑いで20代男2人が摘発され、抑止効果もあったとみられ、被害は一時減少していた。

 ラクガキ消し隊の牧迫愼一隊長(74)は「昨秋ごろから増え、コロナ下くらいに戻った印象」と話す。天文館の建物は所有者が県内に不在の場合も多く、消す許可を得る困難さも伴う。

 落書き被害を点検する天ちゃん会の高田秋穂会長は「人目につかない裏路地に大胆な絵を描くケースが多い」。落書きは器物損壊罪や建造物損壊罪にあたる可能性のある犯罪だとして、同署の松下幸雄天文館・地域安全対策官は「放置するほど落書きは増える。この連鎖を断ち切りたい」と話した。

落書きを消すボランティア団体や鹿児島中央警察署員=2日、鹿児島市千日町

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