父が死亡し、実家は70代で「年金生活」の母だけです。私は「年収300万円」ほどで援助が難しいのですが、仕送りなどすべきですか? 父の「遺族年金」もあれば大丈夫でしょうか…?

65歳以上単身世帯の平均支出額は?

仕送りは生活費の不足分を補う目的として行うケースが多いでしょう。そのため、まずは1人で年金生活を送る上で、毎月どの程度の不足が生じるかを把握することが大事です。

2023年に総務省統計局が公表した家計調査報告によると、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月に14万5430円です。詳しい内訳は図表1でみていきましょう。

図表1

総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2023年(令和5年)平均結果の概要より筆者作成

ただし、住居費が1万2564円と低く設定されている点に注意が必要です。賃貸住まいの場合、家賃分としてさらに多くの支出となるでしょう。またこのほかにかかる税金や社会保険料などの非消費支出は、平均で月1万2243円となっています。

なお、今回のケースでは、母は持ち家で住宅ローンが完済していると設定し、毎月の支出額は図表1どおりの金額とします。

父の死亡後に母が受け取れる年金額は?

では、以下のモデルケースで母が受け取れる年金をみていきましょう。

__●老齢基礎年金:6万円
●老齢厚生年金:15万円__

●老齢基礎年金:6万円

母は父の死亡後に次の年金を受け取れます。

__●老齢基礎年金
●遺族厚生年金__

母が受け取れる年金は「老齢基礎年金」と「遺族厚生年金」となりますが、遺族基礎年金は18歳未満の子どもがいる遺族が対象となるため、本事例ではゼロです。

次項で、母が受け取れる年金額についてみていきます。

老齢基礎年金

老齢基礎年金は、国民年金や厚生年金に加入している人が受け取れる年金です。加入期間40年(480ヵ月)で満額を受け取ることが可能であり、満額は81万6000円(2024年度)、月換算すると6万8000円となります。

なお、今回のケースでは母の老齢基礎年金は6万円で設定します。

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金に加入中の人や、老齢厚生年金を受給中の人などが亡くなった際に、亡くなった人に生計を維持されていた遺族に支給される年金です。

老齢厚生年金を受給中の人が亡くなった場合、次のうちどちらか高いほうの金額が支給されます。

__●亡くなった方の老齢厚生年金の3/4分の金額
●「亡くなった方の老齢厚生年金額の1/2分の金額」と「配偶者の老齢厚生年金額の1/2分の金額」を合算した金額__

今回のケースでは、母は老齢厚生年金を受給していないため、父が受給していた老齢厚生年金の3/4分の金額になります。

よって、遺族厚生年金の金額は11万2500円です。

合計すると、
6万円(老齢基礎年金)+11万2500円(老齢厚生年金)=17万2500円となります。

父の死亡後に生じる生活費の不足額は?

母が1人で生活する際にかかる消費支出額は約14万5000円、非消費支出は1万2000円で、受け取れる年金は17万2500円となり、差し引くと1万5500円の黒字です。今回のケースでは遺族厚生年金を含む母自身の年金収入で今後の生活は成り立つ計算となります。

以上から、自身の収入が少なく、仕送りする余裕がないのであれば、無理をしてまで実施する必要はないといえるでしょう。仕送り以外にこまめに連絡をとったり、母が買い物を不自由に感じているのであればお米などを送ったりするなど、他の形での支援を検討するのも選択肢の1つです。

介護費用などに備えて貯蓄を忘れずに!

父が死亡し母が1人で年金生活を送る場合、今回のモデルケースでは、17万2500円の年金収入が入ります。また、65歳以上単身世帯の消費支出と非消費支出の平均額は約15万7000円であることから、母自身の年金収入でやりくりできる計算です。

ただし、老後は健康面に問題が生じやすく、医療費や介護費用も考慮する必要があります。その際は、まとまった資金が必要になる可能性もあるため、家族で支援できるよう貯蓄などを行い、事前に準備しておきたいところです。

出典

総務省統計局 家計調査報告家計収支編2023年(令和5年)平均結果の概要
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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