アジア女王決定戦、中止通達から一転…平日5000人超集客 宮本会長「AFCが見て感じて価値を見出して」

日本サッカー協会の宮本恒靖会長【写真:徳原隆元】

浦和レディースが韓国の仁川を下してアジア女王に輝いた

三菱重工浦和レッズレディースは5月10日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレ大会「AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament(AWCC)」の決勝で仁川現代製鉄レッドエンジェルズ(韓国)と対戦。先制を許したものの2-1の逆転勝ちを収めアジア女王に輝いた。日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖会長は、「成立させることが大事だったので、みんなが協力、連携できたことが大きかった」と、二転三転した大会の結末について話した。

今大会は昨年にタイとウズベキスタンでグループリーグが集中開催され、浦和と仁川が勝ち抜けた。開催予定だった決勝は、一度はアジアサッカー連盟(AFC)により実施しないことが発表されたが、WEリーグや浦和が開催の再考を依頼するレターを日本サッカー協会(JFA)経由でAFCに送り、韓国側とも協議し開催する運びとなった。決勝戦の開催が日程や会場も含めWEリーグや浦和から正式発表されたのは4月25日のことだった。チケットの発売も5月4日と、試合まで1週間を切っていた。

水面下での動きはあるにしても、発表から15日間でタイトルの懸かった試合を行うのは異例のこと。視察した宮本会長は「試合を成立させるにあたってたくさんの関係者が動いてくれた」として、「最初に中止という連絡があった中でも、色々なところでやろうという声が上がった。やるにあたって必要なこと、誰が運営するか、こちらでやるとか色々なオペレーションをしっかりやった中で成立したことをAFC(アジアサッカー連盟)が見て感じて、価値を見出してくれればいい。成立させることが大事だったので、みんなが協力、連携できたことが大きかった」と話した。

そして、この顛末については「AFCの人と会うこともある。今回の件についてや、思いを非公式の場で伝えることはあると思う」とも話した。

同じく試合を視察したWEリーグの髙田春奈チェアは「本当にこれを実現するためにいろいろな方が努力して、やると決まってからも各所で短い期間での調整と準備が必要だった。こういう形で5000人以上(観衆5271人)の方に集まってもらえて、無事に優勝できてほっとしている。短い期間で、チケット発売も直前になってしまった。日程も確保できたのが平日の18時で、頑張っていただいた結果だと思う」と話した。

1つの救いは、日本の出場チームでホームゲームのように試合を運営した浦和が男子のACLで3回優勝するなど国際大会の経験が豊富なクラブだったことだろう。髙田チェアもまた、「今回、プレ大会をやると決まったのもかなり急きょだった。浦和さんだったから準備がしっかりできた部分もあり、新しく発足したリーグとして1つ1つ学びながらやっているので、こういう経験をさせてもらってありがたかった。Jリーグにも裏では色々と教えていただいているので、本大会ではレベルアップした運営、サポートをしていけるようになりたいと思う」と、先を見据えた。

AFC内における女子サッカーの地位向上も、こうしたドタバタ劇を今後に引き起こさないための重要なテーマになるだろう。来季のスタートが予定されている女子ACLの本大会に向け不安を残す部分も多いが、決勝戦の開催までこぎつけたことが未来につながると期待される。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

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