三宮神社や市電…1960年代の神戸・元町をお菓子で再現 洋菓子「ツマガリ」のパティシエ

作品を仕上げる西村潤司さん(左)と岩佐康雄さん=西宮市甲陽園西山町

 緑とベージュに塗り分けられた市電が、ビルと個人商店が混在する街並みをゆっくりと走り抜けていく-。1960年代の神戸・元町の様子をリアルに再現した工芸菓子が、大丸神戸店(神戸市中央区)で展示されている。兵庫県西宮市の洋菓子店「ケーキハウスツマガリ」のパティシエが半年がかりで仕上げた作品で、「昔を思い出す」「洋菓子のまちらしい趣向」と評判を呼んでいる。(井原尚基)

「ツマガリ」パティシエが半年がかりで制作

 「オールディーズ元町KOBE」と題した作品は、幅90センチ、奥行き60センチ、高さ70センチ。大小30棟余りの建物をはじめ、市電4両、オート三輪車、ボンネットバスなどが配置されている。

 同店の運営会社の津曲孝社長(73)が「イギリスから中国まで、各国のお菓子文化が入り交じった神戸独特の製菓技術を、遊び心も忘れずに引き継ぐ機会になれば」と企画した。

 制作を担ったのは、同社パティシエの西村潤司さん(56)と岩佐康雄さん(50)。2008年の姫路菓子博で、姫路城の工芸菓子づくりに携わった経験もあるベテランだ。2人は図書館に通うなどして、当時の地図や写真を参考に再現した。

お勧めポイントは

 建物や車両には、主に砂糖とゼラチンを混ぜた「パスティヤージュ」を用いている。建物の外壁や屋根などのざらざらした質感は、石で型を取ったシリコンを使って表現。レトロな色あいを出すために、コーヒー粉や竹炭、食用色素を使った。

 神戸元町商店街のすずらん灯、三宮神社の境内でめんこ遊びに興じる子どもたちなど、細部にもアイデアや技術が光り、背景にある物語さえ感じさせる。

 お勧めポイントとして、西村さんは「子どもが手紙を投函(とうかん)しようとしている郵便ポスト」、岩佐さんは「大丸神戸店の屋上に掲げられた万国旗」を挙げる。

 作品の周囲には、懐かしいホーロー看板を模した工芸菓子を配した。しゃがんで眺めると、立体感が際立ち、ジオラマや映画のセットの中に入り込んだような気分になる。

大丸神戸店で展示、来年の菓子博出品へ

 作品は来年5月、北海道旭川市で開幕する全国菓子大博覧会・北海道(あさひかわ菓子博)にも出品する。全て食べられるが、乳製品などを含まないため、適切に保管すれば傷まないという。

 制作中、パスティヤージュが乾燥するまでのわずかな時間に素早く窓の穴を開けるなど、「菓子職人としての技量も試された」と西村さん。「デコレーションケーキの箱を開けた時のような驚きと喜びを、神戸でも北海道でも訪れた人に感じてほしい」と話している。

 ケーキハウスツマガリ大丸神戸店で展示している。期間は未定だが、少なくとも7月末までは見られる。午前10時~午後8時、無休。大丸神戸店TEL078.331.8121

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