名門・横浜高を相手に好投した左腕 あれから1年、成長した今夏が楽しみ【トマスさんの特命リポート】

八女学院の石飛

九州の高校球児情報に精通したアマ野球ウオッチャー「トマスさん」が丹念な取材でリストアップした好選手を紹介する「特命リポート」―。今回は、八女学院高(福岡)の左腕・石飛太基投手(2年)だ。中学時代から好投手として注目してきた筆者が、成長した現在の姿をあらためて紹介する。

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記憶力のいい選手だ。右打者の内角に鋭いクロスファイヤーで切り込む好左腕だった中学2年時の石飛にほれ、チーム紹介インタビューを申し込んだ。「どのような投手か」の問いかけに「(所属チームのダイナマイトボーイズにちなんで)ダイナミックなフォームから『ダイナマイト』のような直球で抑える投手」と、サービス精神旺盛の回答をしてくれた。本人もそのことを覚えており「変なことを言っていましたね」と恥ずかしげに思い出してくれた。

野球に関する記憶力ならば、なおさらだ。

「石飛」が高校球界で知られるようになった八女学院高1年時の昨年6月に行われた招待試合・横浜戦での快投も鮮明に覚えていた。全校生徒や地元の少年チームが応援する中で「横浜」という名門と対戦したこともあり、登板予定の3回までは極度の緊張の中で何とか持ちこたえた。

末次敬典監督の続投判断後の4回以降、腕が振れ始め、球もいきだした。試合は3―4で敗れたが、最終的には168球を投じ、奪三振4、失点4ので完投。当時の投球を自身は鮮明に覚えており「全国レベルでも通じる」と自信も得た。

その後は体調不良などもあり、筆者も少ない登板時での観戦はかなわなかった。ようやく今年の春季福岡大会4回戦・春日戦でその姿を見られた。

春日はこの試合を制した後、白星を重ね、初優勝。そんな強豪を相手に、2点リードを許した3回から登板。乾燥肌が原因で指先の皮がむける中、制球が定まらない場面もあったが、肩甲骨がしなやかに稼働するフォームから、テンポよく投げ込んでいく。堂に入ったマウンドさばきは、周りへの気配りとコミュニケーションがとれている。チームは0―2で敗れたが、7回を無失点被安打4、奪三振5で、福岡大会の王者を抑えた。

自身が課題とする制球力に関しては「体の開きを抑え、力を抜いてスピンをあげることを心がけ、スナップをきかせて、一定的に前でリリースする」ことで対応していく。あらためて「どのような投手か」と聞いてみた。「三振を取ることで、球数が多くなっても投げ切れるスタミナのある投手」との答えがかえってきた。「ダイナマイト投手」あらため「タフネス左腕」は「大きく甲子園出場と言いたいですが、まずは県大会出場」と冷静に夏を見据える。まだ2年生。夏はあと2度訪れる。

石飛太基の球歴は次ページ

◆石飛太基(いしとび・たいき)2007年6月22日生まれ。北九州市戸畑区出身。一枝小1年から「一枝スポーツ少年団」でソフトボールを始め、全ポジションを守り、6年では投手。第21回西日本親善小学生ソフトボール選手権大会ベスト8。中原中1年から硬式野球の「ダイナマイトボーイズ(現九州福岡東ボーイズ)」に所属し、投手兼一塁手兼外野手。八女学院では、1年の筑後地区大会よりベンチ入りし、6月の創立100周年記念事業の招待試合・横浜戦にてエースナンバーを背負う。最速137キロ。持ち球はスライダー、カットボール、チェンジアップ、カーブ、スプリット、ツーシーム。175センチ、77キロ。左投げ左打ち。

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アマ野球観戦は年間約200試合

◆トマスさん 趣味のアマ野球観戦は通常の年は年間約200試合に上り、高校野球が8割を占める。取材範囲は福岡を中心に九州一円に及び、豊富な情報量にはプロのスカウトや新聞記者も一目置く。1992年夏の西日本短大付が最後となっている福岡勢の甲子園制覇を願ってやまない。ペンネームの「トマス」はスパニッシュネームだとか。

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