打者では「高め速球を克服」、投手では「魔球を習得」…際限なく進化し続けられるワケ【大谷翔平「二刀流の血脈」父の教えと投打のスケールアップ編】#4

ホワイトソックス戦の4回、13号ソロを放つ大谷=昨2023年5月30日(C)共同通信社

【大谷翔平「二刀流の血脈」父の教えと投打のスケールアップ編】#4

メジャーでは7年くらい前からゴロよりフライを打ち上げる「フライボール革命」が席巻している。

打球速度158キロ以上、打球角度26~30度で上がった打球が安打や本塁打の確率が上がるといわれ、打者は競うようにしてアッパースイングに取り組んだ。大谷のバットスイングもどちらかといえばアッパー気味だ。

打者が新たなステージに突入すれば、投手は対策を講じる。これはもうイタチゴッコのようなもので、フライボール革命に有効とされたのが高めの速球と、タテに大きく割れるカーブだった。

大谷はこれまで、他のパワーヒッター同様、高めの速い球に手を焼いていた。本塁打を量産する打者の泣きどころなのだが、昨季のある時期を境に高め速球を克服した。

昨年末のNHKのインタビューによれば、技術的なきっかけをつかんだのは5月30日のホワイトソックス戦。その試合で1本、翌日の試合は2本、高めの球を本塁打にした。大谷はインタビューでこう言っている。

「ひらめきというか、何個も何個も試していって“これだ”となることがたまにあるので」

「こうやってやれば打てるんだなという感覚みたいなものをつかむ作業は、野球を始めてから2、3年くらいの間が一番多いと思う」

「うまくなればなるほど、そういう感覚に出会えるチャンスは少なくなってくるんですけど、いまでも年に何回かあるんじゃないかなと思う」

内角は右方向、外角は左方向に打つこと、打つときに体が開かないようにすること。この2つを小学生でマスターしたのも「感覚」をつかんだからこそ。感覚をつかむチャンスは野球がうまくなるにしたがって減っていくのに、それでも高めの球への対応も含めて「年に何回かある」のは大谷が自分なりに考え、それだけ多くのことを試している証しではある。

投手として昨年、スイーパーという新たな武器を手に入れ、強打者を牛耳ったのもその一環だろう。大谷はNHKのインタビューでこうも話している。

「浮力をもうちょっとこのくらい上げてとか、その代わり横幅がちょっと狭くなったりとか、浮力を落とすから横幅をもっと広くしようとか」

「ピッチングはデザインみたいな感じと言われているので」(つづく)

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大谷にとって野手専念の今季が「三冠王」の最初で最後のチャンスだ。

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