92歳画家 燃える情熱 亡き妻への愛情にじむ 渡辺さん(福島県二本松市)個展 あだたら高原美術館

印象的な色彩の情感豊かな作品を出展した渡辺さん

 福島県二本松市西勝田の画家渡辺和郎さん(92)の絵画展は10日、同市馬場平のあだたら高原美術館 青―ao―で始まった。情感豊かな風景や花などの作品に新境地や妻への思いがにじみ、ますます盛んな創作への情熱が来館者を勇気づけている。

 渡辺さんは福島大を卒業して教員となり、美術を教えた。白沢中や小浜中の校長、旧白沢村教育長などを歴任。旧岩代町の「いわしろ自然美術館のまちづくりプロジェクト」の助言者も務めた。教育長退任後、本格的に創作活動を始めた。

 2020(令和2)年に米寿の絵画展を催し、今回は以降の近作を中心に水彩画、アクリル画など33点を出展した。裏磐梯や奥会津の景色が好きで、赤や青の色彩が印象的な作品が並ぶ。

 渡辺さんは昔、妻の米子さんと桧原湖を訪れ、「ボートに乗りたい」とせがまれたが、かなわなかった。3年前に亡くなった米子さんのため、渡辺さんは絵の中に実際にはない小舟を描き入れ、愛妻への思いを込めた。桜を描いた作品では鮮烈な色彩が渦を巻く斬新な表現で、写実と抽象を融合させた。

 会場には交流を続けている小浜中時代の教え子らが大勢訪れ、作品を鑑賞しながら恩師の挑戦を楽しみに見守っている。渡辺さんは「毎日少しずつ絵を描き、いろいろな人たちとのコミュニケーションを大切にしながら創作活動を続けていきたい」と語る。

 絵画展は10~12日、17~19日、24~26日に開催する。時間は午前10時~午後6時(最終日は午後3時)。問い合わせは同美術館へ。

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