【漫画】寿司のくち、ハンバーグのくち……食事への衝動「○○のくち」をユーモラスに描いたSNS漫画に注目

日常にある“いかんともしがたい衝動”として、「○○の口(くち)」がある。4月上旬にXに投稿されたオリジナル漫画『のくち』は、そんな「無性に何かが食べたい」、あるいは「食べたくない」という気分をユーモラスに描いた作品だ。

本作を手掛けたのは、幼少期から漫画が好きで、中学生時代に『バイオメガ』(講談社)を読んだことをキッカケに、漫画に対する意識が明確に変わったと振り返る作者のはるろをさん(@SeifunNibizima)。日常の何気ない出来事を切り取った本作がどのようにして描かれたのかなど話を聞いた。(望月悠木)

■「予約数年待ちのお店」を特集した番組に着想

――なぜ『のくち』を制作したのですか?

はるろを:昨夏に学生時代のサークルのメンバーで合同誌を制作する機会があり、それに向けて制作しました。

――“○○のくち”というテーマを軸にした背景は?

はるろを:普段からスマホに何となく気になった事柄をメモしています。恐らく “予約数年待ちのお店”を特集しているテレビ番組を見た時、 「数年後に食べたい気分になっているかわからないかも」と感じ、そのことをメモしていました。そして、合同誌の締め切りまで余裕がない中、スマホに書かれているそのメモを見つけ、「描けそうだな」と思ってテーマに選びました。

――“○○のくち”というテーマでストーリーを膨らませることは大変そうですが。

はるろを:“○○のくち”“以外を埋めていく、今回の場合は“寿司のくち”“以外を埋めていく、といった場面を最初に描きたいとは考えていました。そこに“○○のくち”になりたい人、“○○のくち”にさせる人という構造を加え、その中で起こったら面白そうなやり取りを考えていきました。

――吉田と成美というキャラはどのようにして誕生したのですか?

はるろを:基本的には2人のやり取りで展開するため、できるだけ判別しやすいように髪型や衣服のシルエットが被らないように意識して作り上げました。

――ちなみに2人は苗字と名前で呼び合っていましたね。

はるろを:ラフな会話ができるような間柄ですので、“お互いに口にしやすい呼び方で呼んでいる”というイメージです。

――2人の会話劇が続くため、作中の雰囲気が単調になってしまうリスクがあります。会話を描くうえで注意したことは?

はるろを:できる限り同じ構図の絵が続かないように意識しており、いろいろな角度や距離からのカットを並べられるように工夫しました。

――顔出しパネルに顔を入れるカット、水滴を垂らされたストローの袋のカットなども目を引きますね。

はるろを:単調な会話劇の印象になってしまうことを避けるため、画面的な面白さや、登場人物の性格が垣間見えるような遊びの場面を挟みました。

――最後に今後の漫画制作における目標など教えてください。

はるろを:本作はWeb漫画サイト『MAGKAN』(マッグガーデン)の『MAGKAN漫画賞』にノミネートという形で賞をいただきました。現在は『MAGKAN』の担当編集さんと一緒に新しい作品を発表できるように制作準備しています。自分が描いていて楽しいと感じられるものを、より多くの読者さんにも楽しんでもらえるようになりたいです。

(望月悠木)

© 株式会社blueprint