家を建てたいのですが、3年前の病気が原因で団信に加入できませんでした。もう住宅ローンを組むのは不可能でしょうか?

住宅ローンにおける団信の役割とは?

住宅ローンは最長35年間にわたり返済を続けることになります。その間に契約者が死亡したり健康状態が悪化したりして返済を継続できなくなるおそれがあります。

世帯の大黒柱を失い、さらにマイホームまで手放さざるを得ないとなると、家族の生活への影響はとても大きなものとなってしまいます。そのため、住宅ローンを利用する際は金融機関を保険金の受取人とする生命保険契約を結ぶことが必須となっていることが多くなっています。

フラット35のように必須となっていない住宅ローンもありますが、万が一の際の影響が大きくなってしまうことに注意が必要です。団信の保障範囲は、死亡・高度障害が基本ですが、がん団信や〇〇疾病団信のように保障範囲を拡大したものを選択することもできます。

もっとも、保険料は金融機関が負担することになっていますが、実際は住宅ローンの金利に上乗せして支払う必要があり、保障範囲を広げるほど保険料負担も大きくなるほか健康状態に関する要件も厳しくなっていきます。

このため、健康状態に問題のある方は団信を利用できず、住宅ローンの選択肢が狭くなってしまったり、返済に関してリスクを抱えたりすることになります。

団信の告知義務とは?

団信は住宅ローンを利用する金融機関とではなく、保険会社との間で別に契約することになります。

団信の引き受け要件は保険会社によって異なりますが、一般的に下記の3要件に当てはまる場合は引き受けを拒否される可能性が高まります。

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・過去3年以内にがんや脳卒中、心筋梗塞などの病気で手術や医師の治療、投薬を受けたことがある
・過去3ヶ月以内に医師の治療・投薬を受けたことがある
・脊柱、手足、視力、聴力、言語の欠損や機能に障がいがある
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告知事項を誤ると万が一の際、保険金を受け取れないこともあるので注意しましょう。

団信に入れなかった場合の選択肢は?

団信に入れなかったとしても住宅ローンを諦める必要はありません。団信に入れなかった場合の選択肢として次の4つが考えられます。

(1)告知義務期間が過ぎるのを待つ

一般的に団信の告知義務期間は最長で3年程となっているので、これが過ぎるのを待つことで団信に加入できる確率が高まります。一方で告知期間が過ぎる前に再発や別の病気にかかってしまった場合は告知期間がリセットされてしまうリスクもあります。

(2)引き受け要件を緩和した『「ワイド団信」』を使う

団信には健康上の問題のある方でも加入できるよう引き受け要件を緩和したワイド団信を選べる金融機関もあります。

ワイド団信は加入できる年齢が通常の団信よりも低く設定され、金利も0.3%程度上乗せされますが、がんになっても3年間再発しなければ告知をする必要がなかったり、一般の団信では加入が難しい高血圧症、糖尿病、うつ病等の持病がある場合でも加入できたりすることもあります。

(3)住宅ローンの契約者を配偶者に変える

住宅ローンの契約者を配偶者に変更することで住宅ローンを組むことができますが、配偶者の収入によって借入条件が左右されてしまう点に注意が必要です。

(4)団信が任意のフラット35などを利用し、個別の生命保険で返済リスクに備える

団信加入が任意となっているフラット35などを利用することで住宅ローンを組むことができます。返済リスクについては告知期間が過ぎた後に生命保険を追加加入することでカバーするようにしましょう。

まとめ

団信に入れなかった場合でも住宅ローンを利用する選択肢はあります。契約者の負担が大きくなる場合もあるため、各世帯の状況に合った方法を選ぶようにしましょう。

執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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