上司に転職をする可能性を伝えたら「降格」になりました。これって不当な評価ではないですか?

人事権行使による降格と懲戒処分による降格

降格とは、現状の職場での地位や役職を下位のものに下げることを意味し、人事権行使による降格(降格人事)と懲戒処分による降格の2種類があります。

人事権行使による降格とは、企業が労働契約に基づいて従業員を降格させることです。労働契約法第三条5項によって「労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。」とされているものの、降格人事が認められる理由はあります。

能力不足によって職責を全うしていなかったり、業務を滞らせて周囲に悪影響を与えたり、会社自体が取引先などから信用を失う恐れがある場合です。そのような場合に、会社側は役職者の適正を慎重に判断し、必要に応じて降格を実施します。

他にも会社組織側の都合により役職の廃止をせざるを得なかったり、本人の希望に添って異動させたりする場合も降格に分類されます。

懲戒処分による降格とは、企業が自社の秩序を守るために従業員を降格させることです。懲戒についても、労働契約法第十五条によって濫用した場合は無効とされています。懲戒処分には、戒告→譴責(けんせき)→減給→出勤停止→降格・降織→諭旨(ゆし)解雇・諭旨退職→懲戒解雇(処分が軽い順)があり、事由の程度によって処分内容が変わってきます。

降格は出勤停止よりも重い処分になります。従業員が職務規律に違反していたり、秩序を順守していなかったりした場合に懲戒処分による降格が実施されます。

降格が違法となるケース

降格人事は原則として企業の裁量で自由に降格を実施できるものですが、人事権の濫用に該当する場合は法律違反となります。

例えば、嫌がらせや退職に追い込むことを目的で降格をする場合、事実を捏造(ねつぞう)して降格する場合、大きな落ち度がなく本人のスキルに見合わない極端な降格をする場合、妊娠・出産・育児休暇をきっかけに降格する場合などは違法と判断されます。

懲戒処分による降格は厳格なルールが適用され、降格をした会社側に法律違反が発覚した場合には、降格自体が無効になることもあります。

不当な降格が疑われる場合どうしたらよいの?

今回の「転職する可能性があることを会社に伝えた後に降格させられた」場合では、不当ではないかと疑問に感じた時点で、人事や労働組合など、会社が設置している相談窓口に相談をしてみましょう。

嫌がらせ目的や降格する理由が明瞭でないという、会社側の処分に違法性があると感じているのであれば、労働基準監督署や総合労働相談コーナー、弁護士に相談してみるとよいでしょう。相談しても解決しない場合は不服申し立てを行うこともできますが、会社側の違法性を示す証拠が必要となります。

労働契約法によって、会社の就業規則の降格処分事由に該当しない場合には降格を実施できないため、会社側は慎重に検討する必要があります。訴えを起こされて会社のイメージを損なうリスクを考えれば、いい加減な判断で安易に降格処分にすることはできないということです。

まとめ

疑問に感じても不当に降格されたとは限りません。会社側の組織の都合によるものだとも考えられます。もし、自分に大きな落ち度がなく、嫌がらせだと感じるのであれば、労働基準監督署や総合労働相談コーナー、弁護士に相談してみましょう。

いずれにしても、降格によって仕事に対するモチベーションは低下しているはずです。なかなかつらい状況ですが、勤務態度を降格の理由にされないように、無理のない範囲で真面目に業務に取り組むことをおすすめします。

出典

e-Gov法令検索 労働契約法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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