WEC第3戦スパ6時間決勝直前、小林可夢偉チーム代表・平川亮選手・中嶋一貴TGR-E副会長がリモート会見

by 編集部:谷川 潔

小林可夢偉TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表兼7号車ドライバー

日本時間5月11日20時にWECスパ6時間耐久スタート

日本時間5月11日20時(現地時間13時)、WEC(世界耐久選手権)第3戦スパ6時間の決勝レースがスタートする。そのスタート前、WECに参戦する小林可夢偉チーム代表(7号車ドライバー)、平川亮選手(8号車ドライバー)、中嶋一貴 TOYOTA GAZOO Racing Europe 副会長のリモート会見が行なわれた。

予選はポールを獲得した車両の失格もあって、7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース)が14番手、ハイパーポールに進出した8号車(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)が6番手と、ディフェンディングチャンピオンとして苦戦を強いられる状況に。そのような状況の中での会見となった。

平川亮選手(7号車ドライバー)

小林可夢偉チーム代表は、「ここまでの流れでいくと、前回の2戦同様、正直スピードの点では、フェラーリ、ポルシェに劣っているなという状況で、ブレンダンが昨日(予選)7位で今日のスタート6番手、僕の方の7号車は昨日ちょっと僕がうまく予選に合わせきれず、15番手で14番手スタートになります。クルマのスピードとしてはおそらくポルシェとフェラーリが前にいるんじゃないかなと思っているんですけども、このスパ、非常にタイヤのデグラデーションなどもあってなかなかレースはどうなるかって読みづらいんですけどもしっかりタイヤをうまく使い切って戦略などで前に出るチャンスをうかがいながら戦うしかないかなというふうには思ってます。とはいえ、このレースここ数年のレースを見てると、セーフティカーだったりいろいろ荒れたレースの展開もあるんですけど、今日は天気がいいのでそういうことも若干少ないのかなと思います。ただ晴れでも、オールージュの辺りでは、クラッシュがあると必ずSCが出たり、コースの修復とかで流れが変わるような展開もあるので、そこら辺りも含めてチーム力でしっかり前に行けるようにがんばりたいと思います。応援よろしくお願いします」と、ここまでのレースの流れを説明。

今シーズン、TOYOTA GAZOO Racingチームは絶対的なスピードでは他メーカーのほうが早いタイムを記録する中、チーム力で勝利するなど逆転勝利をものにしており、今回も6時間という戦いの中で、逆転勝利を狙っていく。

6番手からスタートする8号車の平川選手は、「今日のレースに向けてはタイヤの落ちがかなり大きいので、その辺りがその戦略を含めて、ドライバーとしてはいかにタイヤマネジメントできるかっていうのがレースのキーになってくると思う。その辺り自分自分FP1(練習走行1)からいろいろと準備してきていますけど、戦略を含めてうまくはまるといいなと予想しています」と語り、レース中に進行するタイヤの能力低下をどうコントロールするかなど、ドライバーの戦い、ピット戦略の戦いになってくるという。

小林可夢偉代表は予選アタック時にミスがあったといい、「5コーナーでリアロックさせてまた飛び出して、クールダウン入れてもう1周次にやったら今度は13コーナーで飛び出しそうになって、ドリフトキングして結果あのベストタイムにはなっちゃった」と説明。スパではあまりレースが行なわれていない雰囲気があり、この5コーナーや13コーナーの凸凹などがミスにつながったとのこと。

この点を、日本モータースポーツ記者会の高橋二朗会長が深掘りして質問。「よく言うサーキットが年を取ってきたって感じなのかな?」と質問すると、小林代表、平川選手、中嶋副会長も「サーキットが年を取る」という言葉に反応。「サーキットが年を取るという表現は聞いたことがない」と、リモート会見は大きく盛り上がった。もちろん記者も「サーキットが年を取る」という表現は初めて聞いた言葉で、高橋二朗会長によると「セパンテストのときに、タイヤメーカーの人が使っていた」とのことで、高橋会長の表現の豊かさに感動した。

ともあれ、5コーナー、13コーナーには、凸凹といっても高橋会長の質問に対する小林代表の表現によれば、洗濯板のような凸凹(いわゆるウオッシュボード路面)ではなく、大きく凹むHump(ハンプ)のような状況とのこと。高橋仁郎会長は、スパ8時間を生中継するJsportsの解説を担うとのことで、そこでの解説に入れると約束していた。

JALがTOYOTA GAZOO Racing WECチームをサポート

中嶋一貴TGR-E副会長

前戦である第2戦イモラからの違いとしては、新たにJAL(日本航空)がTOYOTA GAZOO Racing WECチームのサポート企業となった。JALは、すでにフィンランドを本拠地とするラリーチームであるTOYOTA GAZOO Racing WRTのスポンサー企業となっているが、同じく世界を転戦する耐久チームのスポンサーにもなったわけだ。

主に輸送などロジスティクス面のサポートと思われるが、JALがスポンサードすることによるメリットを中嶋一貴TGR-E副会長に確認してみた。

中嶋副会長によると、「今回、日本航空さんにパートナーとして加わっていただけたことは本当にありがたいですし、元々WRCの方でずっとパートナーとしてご一緒させていただく中で、ラリーだけではなくて、TOYOTA GAZOO Racingのモータースポーツ活動であるWECも含めて応援していただけるということに、いろんな会話がある中でそういう経緯がありました。本当にありがたいことだと思いますし、日本航空のみなさんとお話している中で、すごくモリゾウさん(豊田章男会長)の思いとか、TOYOTA GAZOO Racingの活動の思いというところに共感をしていただいています。人を育てる部分であるとか、いろいろなところで同じ価値観を持っているみなさんだと思います。WECの方はまだまだ始まったばかりですけれども、これからのレースを通じていろいろなことを一緒に訴求していければなと思ってますし、どういった活動ができるのかはこれからです。そのあたりも注目していただけるとありがたいなと思っております」と説明。輸送面以外では、すでにラリーチームの方では始まっているパイロットとドライバーの育成システム知見共有のような、人づくりの面での取り組みを考えているようだ。

今回のスパ6時間では、宮田莉朋選手も78号車レクサスRC F GT3で参戦しており、中嶋副会長は宮田選手の活躍にも注目してほしいと語った。

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