川崎のバフェティンビ・ゴミスのJリーグ初ゴールの裏にあった感動シーン。涙は本人が否定も心を打った鬼木達監督らとの絆

[J1第13節]川崎 3-0 札幌/5月11日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

川崎がホームで札幌を3-0で下した一戦、待望の瞬間が訪れた。

昨年8月に加入し、なかなかゴールを奪えずにいた元フランス代表FWのバフェティンビ・ゴミスに初得点が生まれたのだ。しかも、38歳の経験豊富なストライカーは、前半だけでハットトリックも記録してみせた。

日本で初めてネットを揺らした瞬間、感動的な光景も広がっていた。

ペナルティエリア内で相手を背負いながら力強くターンし、右足を振り抜く。素晴らしい形でのゴールが決まると、ゴミスはこれでもかというガッツポーズを見せ、それに呼応したのが鬼木達監督だ。指揮官もピッチ脇でいつも以上に力強いガッツポーズを作ったのだ。

そしてベンチ前で熱い抱擁をかわすふたり。ゴールを奪えない日々が長かったからこそ、そこにはグッとくる空気感が漂っていた。

結果が残らないなか、監督としてここまで信じて起用し続けてきたのは、彼の長年ヨーロッパで培ってきた能力も然ることながら、その真摯な人間性もあったに違いない。指揮官は試合後にはこう振り返る。

「プレーは見てもらった通りの、自分の特長を出してくれました。またボールが入った時のクオリティは他の選手とは一味違うものがありますので、そこのところの安心感があるからこそ、いろんな選手が迷わず動き出せているところもあります。そういった相乗効果の部分が大きいかなと感じます。

また本人がなかなかゴールがなく苦しいシーズンと言いますか、心境でやってきたと思いますが、そのなかでも常に前抜きになんとかしなくてはいけない、という気持ちでやり続けたからこそ、こういう形でゴールと巡り会えたはずです。そういう意味で言うと彼もここからスタートなのかなと感じています。どれも彼らしい3点で非常に良かったです」

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そんな人柄を示すかのように、ゴミスが試合後に強調したのは、日本での学びだった。

「(自分はゴールを)決めるために来ましたが、学ばなくてはいけないこと常に意識してきました。これは心から言えます。日本の皆さんは礼儀正しく、相手をリスペクトして接してくれます。人間として学ぶべきところが多いです。そして辛抱強く応援し続けてくれました。本当に感謝したいです。日本は学ぶにあたって最高の地です」

ゴミスは常にチームのために戦い、その姿勢、指揮官との絆はその言葉にも表われていた。今季は下位に低迷する川崎にあって、成績がなかなか上がらないなかで、ゴミスは以前にこうも語っていた。

「自分はそれほど悲観をしていません。こういう状況でもハードワークを続けて自分の役割を果たすためにやっていくことだけだと思います。監督も非常に経験のある方なので、苦しい状況からも立ち直っていけるチームだと思います」

「監督も自分のストロングポイントを出せるようにチームメイトに働きかけてくれています。個人としては、試合勘をまだまだ上げなければいけないと思いますし、自分のような年齢になるとコンスタントにゲームに出てコンディションを保つことが必要ですが、我々はチーム。チームの戦い方をリスペクトしているし、自分は試合に向けた準備を続けるだけ。チームのためにどう貢献できるかを考えてやり続けたい」

そんなゴミスの振る舞いをチームメイト誰もが称賛してきた。本人は否定したが、ハーフタイムや試合後には、これまでの苦しさを思い出してか、目に涙を浮かべるようなシーンがあったのも印象的だ。

待ちに待った初ゴールの裏には、感動的な場面があった。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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