『街並み照らすヤツら』伊藤健太郎の登場で三つ巴の戦いに 森川葵を巡る三角関係が加速する

莉菜(月島琉衣)が思わず父・龍一(皆川猿時)に本当のことを話してしまったばかりに、正義(森本慎太郎)たちと計画した“偽装強盗”の話が酒屋の常連客へと伝わり、あっという間に虹色ロード商店街の店主たちにどんどんと広まってしまう。ちょっとした狡猾さに端を発し、いつしか主人公の予期せぬ方向へと進んでしまい取り返しのつかない事態へと発展する。それを喜劇性を貫きながら増幅させていく点は、まるでコーエン兄弟の作品のような感触である。

5月11日に放送された『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)の第3話は、冒頭のシーンから少々趣が異なる。それは前田弘二の演出回ではなく鯨岡弘識の演出回だからということも少なからずあるだろうが、鯨岡はこれまでも『それってパクリじゃないですか?』』(日本テレビ系)に『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)と、チーフ監督の作り出した特有のトンマナをしっかりと継承するだけでなく、後々に繋がる要素をしっかりと織り交ぜることができる作り手。現に前回のエピソードで異質なかたちで登場した縄梯子を再登場させ、今度は“上る”という動作を余すところなく見せることで、空気感の継承を成し遂げたと見える。

そうなると、やはり早くもドラマの流れが変わろうとしているということか。つまりは正義のケーキ屋、莉菜の家の酒屋に“偽装強盗”を行い、ついでに手伝いとして参加していたマサキ(萩原護)が突発的にドロップアウト。商店街全体が“偽装強盗”というとんでもない保険金詐欺計画に加担し、商店会長の大村(船越英一郎)を敵とみなすことで結託する。この一連が、本作の起承転結における“起”にあたる部分といえよう。

差し詰め今回のエピソードで描かれた向井(竹財輝之助)の時計店への偽装強盗は、そうした“偽装強盗の輪”を拡げるためのものではなく、強盗中に殴るというオプションを無理矢理つけたことから捜査にあたる日下部(宇野祥平)に違和感を覚えさせるということが一番のねらいとしてあるだろう。そしてまた、シュン(曽田陵介)が彩(森川葵)に時計をプレゼントすることで、正義を含めた三角関係を強化し、この先の物語が掻き回されていくことを示唆するものでもある。

日下部と澤本(吉川愛)の凸凹コンビ――澤本の的外れなボケを、日下部がツッコミを入れるのではなく放任することで成立している――のやり取りは相変わらずだが、今回はその澤本が非常に興味深い。書いた本人も解読できないメモを読みながら、聞き込みで集めた正義の過去について頭のなかのステージで思い浮かべていく一連。比較的登場人物の心情や場の状況をナレーションで説明しがちな本作だが、ここに関しては澤本の表情だけで表現していく。日下部が商店街で起きていることの違和感に気付く一方で、澤本は正義に同情する。これもこの先の展開を左右するポイントかもしれない。

さて、そうした既出の登場人物たちの動きが一通り固められたところで、新たに登場したのが光一(伊藤健太郎)という男。大村のことを“親父”と呼び、大村は光一のことを下の名前で呼んでいることから親子と推測するのが一般的であろう(単に“親父”と呼ぶだけかもしれないが、いずれにせよ親密な間柄には違いない)。結託した商店街の店主たち側、捜査を本格的に進めはじめる警察側、そしておそらく商店街を潰そうと画策しているのであろう大村側。この三つ巴の戦いが、本作の“承”となるわけだ。

(文=久保田和馬)

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